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3年生
突撃! セオリアスの部屋
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「アリバイか。それはいいかも! ……ただ、もしかしたらもう王宮騎士団の方で確認済みかもしれないな。調べてみようか」
そう言い、リュゼはソファから立ち上がった。
「調べるってどうやって?」
僕も慌てて立ち上がる。リュゼは、テーブルの上に置いていたメモ用紙を手に取った。
「もちろん。直接本人に聞きに行くのさ」
「本人? セオリアスに?」
「うん、そうだよ。セオはまだ疑いの段階だから、普通に学園寮にいるし」
「あ、そうだったの……なんだぁ、話はできるんだ」
僕は、てっきりどこかに閉じ込められているのかと想像していた。
「本当はね、疑いが晴れるまではマリスとエチカとは会わせちゃダメな決まりなんだけど……まあ、いいよね! じゃ、このメモを提出してこよう」
リュゼの後に続いて僕も客間に出る。リュゼは王宮の廊下をしばらく歩き、渡り廊下を抜けて、王宮騎士団のいる宿舎まで来た。
ロビーを抜けて、階段を上がる。副騎士団長の部屋は4階にあった。
「マリスは外で待っててね」
リュゼが副団長室に入っていくのを見届け、大人しく廊下で待つ。
ドアに耳を当ててみたが、物音ひとつ聞こえなかった。さすが王宮騎士団、警備は厳重だ。
「おまたせ」
数分してリュゼが部屋から出てきた。
「僕も勝手に帰っちゃっていいのかな」
「うん、ロセウムさんにも言っておいたよ」
リュゼは、バッチリ、というように軽くウインクした。
「ありがとう!」
「いえいえ~。それじゃ、セオの部屋に行こうか」
宿舎から王宮に戻り、外に出る。夕日が落ちて、空は赤紫色になっていた。
慣れ親しんだ学園に戻り、寮に入る。そういえば、誘拐事件はもう学園中に広まってしまっているのだろうか。
「ねえ、僕たちのことってもう噂になってる?」
セオリアスの部屋に向かう途中の廊下で、リュゼに話しかける。
「ううん。奴隷が関わってる事件だから、まだ表には出てないよ。マリスとエチカが休んだのもまだ2日だけだから、そこまで大事にはなってないよ」
「そっか。それならよかった」
セオリアスの部屋につき、リュゼがノックをする。
すぐにドアが開き、顔を出したセオリアスが僕を見て驚いた顔をした。
「何の用だ? 悪いが、俺はマリスとは……」
「事情は殿下から聞いてる。3人で話したい事があるんだ。部屋に入れてくれない?」
「駄目だ、俺はマリスとは……って、おい!」
リュゼは、僕の手を引っ張りセオリアスの返事も待たずに部屋に入った。
「おい!! コラッ!」
空いてる手をセオリアスに引っ張られ、体が後ろにつんのめる。
「いいからその手を離せリュゼ!」
「ちょ、痛いよ」
「あー、はいはい離す離す。ごめんねマリス」
リュゼがパッと僕の手を離した。セオリアスも僕の手を離し、ようやく体が解放される。
「あのねえセオリアス君。俺たちは大事な話をしに来たの。つまらない嫉妬をしてる場合じゃないの!」
「はあ? 何だよマジで……」
リュゼはずかずかと部屋の奥まで行き、セオリアスの個室に入った。
「おい、勝手に入るなよ!」
僕たちもリュゼの後に続く。個室のドアを閉めて、セオリアスと共にベッドに腰を下ろした。
リュゼは既に、1人用の椅子に座っていた。
「それで、何しに来たんだ? フィオーネ殿下から事情を聞いているのに何でマリスを連れてきた?」
セオリアスが低い声で唸るが、リュゼはけろりとしている。
「そんなに怒らなくても。いいかい、俺たちはセオの疑いを晴らしに来たんだよ」
「どういう事だ?」
「経緯を話そう」
そう言い、リュゼはソファから立ち上がった。
「調べるってどうやって?」
僕も慌てて立ち上がる。リュゼは、テーブルの上に置いていたメモ用紙を手に取った。
「もちろん。直接本人に聞きに行くのさ」
「本人? セオリアスに?」
「うん、そうだよ。セオはまだ疑いの段階だから、普通に学園寮にいるし」
「あ、そうだったの……なんだぁ、話はできるんだ」
僕は、てっきりどこかに閉じ込められているのかと想像していた。
「本当はね、疑いが晴れるまではマリスとエチカとは会わせちゃダメな決まりなんだけど……まあ、いいよね! じゃ、このメモを提出してこよう」
リュゼの後に続いて僕も客間に出る。リュゼは王宮の廊下をしばらく歩き、渡り廊下を抜けて、王宮騎士団のいる宿舎まで来た。
ロビーを抜けて、階段を上がる。副騎士団長の部屋は4階にあった。
「マリスは外で待っててね」
リュゼが副団長室に入っていくのを見届け、大人しく廊下で待つ。
ドアに耳を当ててみたが、物音ひとつ聞こえなかった。さすが王宮騎士団、警備は厳重だ。
「おまたせ」
数分してリュゼが部屋から出てきた。
「僕も勝手に帰っちゃっていいのかな」
「うん、ロセウムさんにも言っておいたよ」
リュゼは、バッチリ、というように軽くウインクした。
「ありがとう!」
「いえいえ~。それじゃ、セオの部屋に行こうか」
宿舎から王宮に戻り、外に出る。夕日が落ちて、空は赤紫色になっていた。
慣れ親しんだ学園に戻り、寮に入る。そういえば、誘拐事件はもう学園中に広まってしまっているのだろうか。
「ねえ、僕たちのことってもう噂になってる?」
セオリアスの部屋に向かう途中の廊下で、リュゼに話しかける。
「ううん。奴隷が関わってる事件だから、まだ表には出てないよ。マリスとエチカが休んだのもまだ2日だけだから、そこまで大事にはなってないよ」
「そっか。それならよかった」
セオリアスの部屋につき、リュゼがノックをする。
すぐにドアが開き、顔を出したセオリアスが僕を見て驚いた顔をした。
「何の用だ? 悪いが、俺はマリスとは……」
「事情は殿下から聞いてる。3人で話したい事があるんだ。部屋に入れてくれない?」
「駄目だ、俺はマリスとは……って、おい!」
リュゼは、僕の手を引っ張りセオリアスの返事も待たずに部屋に入った。
「おい!! コラッ!」
空いてる手をセオリアスに引っ張られ、体が後ろにつんのめる。
「いいからその手を離せリュゼ!」
「ちょ、痛いよ」
「あー、はいはい離す離す。ごめんねマリス」
リュゼがパッと僕の手を離した。セオリアスも僕の手を離し、ようやく体が解放される。
「あのねえセオリアス君。俺たちは大事な話をしに来たの。つまらない嫉妬をしてる場合じゃないの!」
「はあ? 何だよマジで……」
リュゼはずかずかと部屋の奥まで行き、セオリアスの個室に入った。
「おい、勝手に入るなよ!」
僕たちもリュゼの後に続く。個室のドアを閉めて、セオリアスと共にベッドに腰を下ろした。
リュゼは既に、1人用の椅子に座っていた。
「それで、何しに来たんだ? フィオーネ殿下から事情を聞いているのに何でマリスを連れてきた?」
セオリアスが低い声で唸るが、リュゼはけろりとしている。
「そんなに怒らなくても。いいかい、俺たちはセオの疑いを晴らしに来たんだよ」
「どういう事だ?」
「経緯を話そう」
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