71 / 120
2年生
パジャマパーティー
しおりを挟む
夜、寝る支度を終えた僕はエチカの部屋を訪れた。兄から解放された後、2人でパジャマパーティーをしようという話になったのだ。
エチカは風呂から上がったばかりだったようで、いつもふわふわしている髪が落ち着いていて新鮮だ。
エチカのパジャマは薄いピンク色で、少しぶかぶかしている姿がとてと可愛い。
「ラルフにフルーツを頼んだら、後で持ってきてくれるって言っていたよ」
「やったー! 嬉しい!」
本当はお菓子を食べたかったが、駄目だと言われてしまった。しかし、エチカが嬉しそうに笑うのでフルーツでも結果オーライだ。
数分して、ラルフがフルーツと紅茶を部屋まで届けに来てくれた。
備え付けのソファに肩を並べて座り、夜のお茶会を開始する。
「そういえば、最近セオリアスとは順調?」
エチカがフルーツを摘みながら言う。「セオリアス」という名前にドキリと心臓が跳ねる。
「じ、順調も何も……それどころじゃなかったんだ。奴隷のこととかいろいろあって」
「あー、なるほどね。学園祭のときは感情的になってごめん。でもこれからは安心して。このぼくが奴隷になるなんてあり得ないからさ!」
エチカは得意気に言い、紅茶を口に入れる。
「ふふ、心強いな。それで、エチカは? フィオーネとは順調なの?」
僕の問いかけに、エチカはフルーツを頬張る手を止めた。
「あー……んー、ぼくも別に順調ではないかな。フィオーネはマリスに固執しているみたいだし」
「ぼ、僕に固執……」
「マリスはさ、本当にフィオーネと結婚したくないの?」
エチカの質問に、カップを持つ僕の手に力が入る。
「僕は……結婚したくない。でも、時折り優しくなるフィオーネと話していると、胸が痛くなるときがあるんだ。
どんなに酷いことをされても、婚約破棄を願っていることがフィオーネに対する裏切りなんじゃないかって……」
「そっか……子どもの頃からずっと婚約者としてフィオーネと一緒にいたんだもんね。でも、大切なのは今のマリスの気持ちだよ。後悔だけはしてほしくないし」
エチカは僕を見つめて微笑んだ。その顔はとても穏やかで、エチカのブラウンの瞳に引き込まれそうになる。
「エチカは、どうしてそこまで僕を気にかけてくれるの?」
エチカは、最初に会ったときからずっと、僕の破滅エンド回避に協力すると言ってくれた。
でも僕は、そこまで協力してもらえるほどエチカに何も返せていない。
むしろ、エチカの好きな人と婚約状態ですらあるのに。
「友達だもん。当たり前だよ」
「ともだち……」
エチカの言葉に、僕の鼻がツンとして目尻がじんわりと湿ってきた。
「え、嘘、泣いてんの?」
「いや、なんか嬉しくて……僕前世も友達いなくてそんな事言われたことなかったから……」
「あはは、もー、よしよしマリス泣くな~」
エチカは僕の頭をポンと叩くと、口にフルーツを入れてきた。
桃に似た甘い味が口に広がる。シャクシャクした食感のフルーツを咀嚼しながら、目尻に溜まった涙を拭った。
それからエチカとの雑談が続いて、気がついたら空が明るくなり始めていた。
僕たちは慌ててベッドに入り、1分もしないうちに深い眠りへと落ちていった。
昼頃、僕たちはラルフによって起こされた。
ラルフが部屋に軽食を持ってきてくれたので、2人で頬張る。
部屋に戻り、カウントダウンパーティーの準備をする。
藍色の貴族服を身に纏い、アクセサリーを着けていく。
今年はヘアオイルだけではなく、髪飾りも着けてもらった。
(今日は久しぶりにセオに会えるんだ)
考えていたら胸がドキドキしてきて、気がつけば銀色の宝石がついているものを選んでいた。
支度を終えてホールに行くと、既にエチカと兄が居た。
エチカは真っ白なタキシードに着替えていた。教会特製の金の刺繍がなされており、荘厳な雰囲気を醸している。
エチカから放たれる不思議なオーラと相まって、さすがは神子だと圧倒された。
危うく僕も兄と同じくエチカ教に入信するところだった。
「マリス、すっごく綺麗だね」
「ありがとう。エチカもとっても綺麗だよ。神子のオーラが溢れ出てる」
「えー、何それ!」
エチカがクスッと笑う。
兄も、エチカが一緒にいることで気合が入っているのかいつもより髪がふわふわしていた。エチカリスペクトだろうか。
父がホールに現れたので、僕たちはアスムベルク邸を後にし、カンテミール邸へと馬を走らせた。
エチカは風呂から上がったばかりだったようで、いつもふわふわしている髪が落ち着いていて新鮮だ。
エチカのパジャマは薄いピンク色で、少しぶかぶかしている姿がとてと可愛い。
「ラルフにフルーツを頼んだら、後で持ってきてくれるって言っていたよ」
「やったー! 嬉しい!」
本当はお菓子を食べたかったが、駄目だと言われてしまった。しかし、エチカが嬉しそうに笑うのでフルーツでも結果オーライだ。
数分して、ラルフがフルーツと紅茶を部屋まで届けに来てくれた。
備え付けのソファに肩を並べて座り、夜のお茶会を開始する。
「そういえば、最近セオリアスとは順調?」
エチカがフルーツを摘みながら言う。「セオリアス」という名前にドキリと心臓が跳ねる。
「じ、順調も何も……それどころじゃなかったんだ。奴隷のこととかいろいろあって」
「あー、なるほどね。学園祭のときは感情的になってごめん。でもこれからは安心して。このぼくが奴隷になるなんてあり得ないからさ!」
エチカは得意気に言い、紅茶を口に入れる。
「ふふ、心強いな。それで、エチカは? フィオーネとは順調なの?」
僕の問いかけに、エチカはフルーツを頬張る手を止めた。
「あー……んー、ぼくも別に順調ではないかな。フィオーネはマリスに固執しているみたいだし」
「ぼ、僕に固執……」
「マリスはさ、本当にフィオーネと結婚したくないの?」
エチカの質問に、カップを持つ僕の手に力が入る。
「僕は……結婚したくない。でも、時折り優しくなるフィオーネと話していると、胸が痛くなるときがあるんだ。
どんなに酷いことをされても、婚約破棄を願っていることがフィオーネに対する裏切りなんじゃないかって……」
「そっか……子どもの頃からずっと婚約者としてフィオーネと一緒にいたんだもんね。でも、大切なのは今のマリスの気持ちだよ。後悔だけはしてほしくないし」
エチカは僕を見つめて微笑んだ。その顔はとても穏やかで、エチカのブラウンの瞳に引き込まれそうになる。
「エチカは、どうしてそこまで僕を気にかけてくれるの?」
エチカは、最初に会ったときからずっと、僕の破滅エンド回避に協力すると言ってくれた。
でも僕は、そこまで協力してもらえるほどエチカに何も返せていない。
むしろ、エチカの好きな人と婚約状態ですらあるのに。
「友達だもん。当たり前だよ」
「ともだち……」
エチカの言葉に、僕の鼻がツンとして目尻がじんわりと湿ってきた。
「え、嘘、泣いてんの?」
「いや、なんか嬉しくて……僕前世も友達いなくてそんな事言われたことなかったから……」
「あはは、もー、よしよしマリス泣くな~」
エチカは僕の頭をポンと叩くと、口にフルーツを入れてきた。
桃に似た甘い味が口に広がる。シャクシャクした食感のフルーツを咀嚼しながら、目尻に溜まった涙を拭った。
それからエチカとの雑談が続いて、気がついたら空が明るくなり始めていた。
僕たちは慌ててベッドに入り、1分もしないうちに深い眠りへと落ちていった。
昼頃、僕たちはラルフによって起こされた。
ラルフが部屋に軽食を持ってきてくれたので、2人で頬張る。
部屋に戻り、カウントダウンパーティーの準備をする。
藍色の貴族服を身に纏い、アクセサリーを着けていく。
今年はヘアオイルだけではなく、髪飾りも着けてもらった。
(今日は久しぶりにセオに会えるんだ)
考えていたら胸がドキドキしてきて、気がつけば銀色の宝石がついているものを選んでいた。
支度を終えてホールに行くと、既にエチカと兄が居た。
エチカは真っ白なタキシードに着替えていた。教会特製の金の刺繍がなされており、荘厳な雰囲気を醸している。
エチカから放たれる不思議なオーラと相まって、さすがは神子だと圧倒された。
危うく僕も兄と同じくエチカ教に入信するところだった。
「マリス、すっごく綺麗だね」
「ありがとう。エチカもとっても綺麗だよ。神子のオーラが溢れ出てる」
「えー、何それ!」
エチカがクスッと笑う。
兄も、エチカが一緒にいることで気合が入っているのかいつもより髪がふわふわしていた。エチカリスペクトだろうか。
父がホールに現れたので、僕たちはアスムベルク邸を後にし、カンテミール邸へと馬を走らせた。
11
お気に入りに追加
395
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果
はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
【完結】前世は魔王の妻でしたが転生したら人間の王子になったので元旦那と戦います
ほしふり
BL
ーーーーー魔王の妻、常闇の魔女リアーネは死んだ。
それから五百年の時を経てリアーネの魂は転生したものの、生まれた場所は人間の王国であり、第三王子リグレットは忌み子として恐れられていた。
王族とは思えない隠遁生活を送る中、前世の夫である魔王ベルグラに関して不穏な噂を耳にする。
いったいこの五百年の間、元夫に何があったのだろうか…?
【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される
秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】
哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年
\ファイ!/
■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ)
■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約
力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。
【詳しいあらすじ】
魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。
優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。
オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。
しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる