転生した悪役令息は破滅エンドをなかなか回避できない

ハバーシャム

文字の大きさ
上 下
42 / 120
1年生

実質最後の休日

しおりを挟む
 あっという間に2月になり、期末テストが終われば春休みに入る。

 僕への嫌がらせはあれからぴたりと止んだ。エチカへの嫌がらせについても、僕の仕業ではないとわかったエルヴィが嫌がらせの主犯を見つけ出してコテンパンにしたらしく、あれ以来見ていない。

 リュゼやグランがいくら注意しても止まなかったエチカへの嫌がらせをどうやって止めたのか気になるが、聞かないでおく。僕は自分の辞書に「エルヴィは敵に回すと怖い」と追加しておいた。

 僕とセオリアスの噂はフィオーネにも伝わっていると思うが、フィオーネからの接触はまだない。フィオーネが何を考えているのかイマイチよくわからないが、僕に対して、恋人がいることを咎める程度の興味は持っていないのだろう。


 2月の期末テストの結果、僕は学年20位まで上がった。エチカたちには遠く及ばないが、この一年で学年最下位からここまで登り詰めたのだ。正直表彰されても良いと思う。

 春休みは新入生と卒業生の入れ替えの準備があるので、学校に出入り禁止の期間がある。なので僕も例外なく実家に帰省している。

 実家に帰省してからすぐに髪を切ってもらった。肩まで伸びた髪は、顎下までになった。ゲームでのマリスと同じ長さで、少しだけ懐かしい気持ちになる。

 帰省して2日目の今日、朝食後に客間へ来るようにと父から言われたので、急いで向かった。

「マリス、こちらに来なさい」

 父に促されて隣に座る。目の前にはいかにも家庭教師っぽい女性がいて、女性の両隣に王宮騎士の制服を着た男2人が座っていた。

「マリス。彼女は明日からお前の家庭教師をするマヤさんだ。王都から来てくださったんだよ」
「初めましてマリス様。王都から参りましたマヤ・スッテンと申します。貴方を立派な王太子妃にするよう仰せつかっておりますので、2年の間よろしくお願いします」

 マヤさんは眼鏡をくいっと上げた。

「マヤさんは王宮に勤めている教師なんだ。マリス、しっかり学ぶようにね」
「はい……よろしくお願いします……」

(あーあ、やだなぁ……)

 いよいよフィオーネとの結婚が現実味を帯びてくる。もしかしたら婚約破棄をされるかもしれないというのに、妃教育をする意味はあるのだろうか。

 マヤさんと騎士の2人は王都へ帰っていった。王宮勤めのすごい人だから護衛がいたのか。そんなすごい人に教えてもらえるなんて光栄なことなのだろうが、ちっとも気が進まない。マヤさんは明日から泊まり込みで教えてくれると父に言われた。

 明日から僕は、長期休暇の間は妃教育を受けなければならない。正直逃げたい。学年最下位だったマリスが学校の勉強と並行して王妃の勉強をこなせるわけがない。
 僕は、実質最後の休日を憂鬱な気持ちで過ごしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

パラレルワールドの世界で俺はあなたに嫌われている

いちみやりょう
BL
彼が負傷した隊員を庇って敵から剣で斬られそうになった時、自然と体が動いた。 「ジル!!!」 俺の体から血飛沫が出るのと、隊長が俺の名前を叫んだのは同時だった。 隊長はすぐさま敵をなぎ倒して、俺の体を抱き寄せてくれた。 「ジル!」 「……隊長……お怪我は……?」 「……ない。ジルが庇ってくれたからな」 隊長は俺の傷の具合でもう助からないのだと、悟ってしまったようだ。 目を細めて俺を見て、涙を耐えるように不器用に笑った。 ーーーー 『愛してる、ジル』 前の世界の隊長の声を思い出す。 この世界の貴方は俺にそんなことを言わない。 だけど俺は、前の世界にいた時の貴方の優しさが忘れられない。 俺のことを憎んで、俺に冷たく当たっても俺は貴方を信じたい。

未必の恋

ほそあき
BL
倉光修には、幼い頃に離別した腹違いの兄がいる。倉光は愛人の子だ。だから、兄に嫌われているに違いない。二度と会うこともないと思っていたのに、親の都合で編入した全寮制の高校で、生徒会長を務める兄と再会する。親の結婚で名前が変わり、変装もしたことで弟だと気づかれないように編入した、はずなのに、なぜか頻繁に兄に会う。さらに、ある事件をきっかけに兄に抱かれるようになって……。

侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。 仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。 成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。 何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。 汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

処理中です...