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1年生
実質最後の休日
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あっという間に2月になり、期末テストが終われば春休みに入る。
僕への嫌がらせはあれからぴたりと止んだ。エチカへの嫌がらせについても、僕の仕業ではないとわかったエルヴィが嫌がらせの主犯を見つけ出してコテンパンにしたらしく、あれ以来見ていない。
リュゼやグランがいくら注意しても止まなかったエチカへの嫌がらせをどうやって止めたのか気になるが、聞かないでおく。僕は自分の辞書に「エルヴィは敵に回すと怖い」と追加しておいた。
僕とセオリアスの噂はフィオーネにも伝わっていると思うが、フィオーネからの接触はまだない。フィオーネが何を考えているのかイマイチよくわからないが、僕に対して、恋人がいることを咎める程度の興味は持っていないのだろう。
2月の期末テストの結果、僕は学年20位まで上がった。エチカたちには遠く及ばないが、この一年で学年最下位からここまで登り詰めたのだ。正直表彰されても良いと思う。
春休みは新入生と卒業生の入れ替えの準備があるので、学校に出入り禁止の期間がある。なので僕も例外なく実家に帰省している。
実家に帰省してからすぐに髪を切ってもらった。肩まで伸びた髪は、顎下までになった。ゲームでのマリスと同じ長さで、少しだけ懐かしい気持ちになる。
帰省して2日目の今日、朝食後に客間へ来るようにと父から言われたので、急いで向かった。
「マリス、こちらに来なさい」
父に促されて隣に座る。目の前にはいかにも家庭教師っぽい女性がいて、女性の両隣に王宮騎士の制服を着た男2人が座っていた。
「マリス。彼女は明日からお前の家庭教師をするマヤさんだ。王都から来てくださったんだよ」
「初めましてマリス様。王都から参りましたマヤ・スッテンと申します。貴方を立派な王太子妃にするよう仰せつかっておりますので、2年の間よろしくお願いします」
マヤさんは眼鏡をくいっと上げた。
「マヤさんは王宮に勤めている教師なんだ。マリス、しっかり学ぶようにね」
「はい……よろしくお願いします……」
(あーあ、やだなぁ……)
いよいよフィオーネとの結婚が現実味を帯びてくる。もしかしたら婚約破棄をされるかもしれないというのに、妃教育をする意味はあるのだろうか。
マヤさんと騎士の2人は王都へ帰っていった。王宮勤めのすごい人だから護衛がいたのか。そんなすごい人に教えてもらえるなんて光栄なことなのだろうが、ちっとも気が進まない。マヤさんは明日から泊まり込みで教えてくれると父に言われた。
明日から僕は、長期休暇の間は妃教育を受けなければならない。正直逃げたい。学年最下位だったマリスが学校の勉強と並行して王妃の勉強をこなせるわけがない。
僕は、実質最後の休日を憂鬱な気持ちで過ごしたのだった。
僕への嫌がらせはあれからぴたりと止んだ。エチカへの嫌がらせについても、僕の仕業ではないとわかったエルヴィが嫌がらせの主犯を見つけ出してコテンパンにしたらしく、あれ以来見ていない。
リュゼやグランがいくら注意しても止まなかったエチカへの嫌がらせをどうやって止めたのか気になるが、聞かないでおく。僕は自分の辞書に「エルヴィは敵に回すと怖い」と追加しておいた。
僕とセオリアスの噂はフィオーネにも伝わっていると思うが、フィオーネからの接触はまだない。フィオーネが何を考えているのかイマイチよくわからないが、僕に対して、恋人がいることを咎める程度の興味は持っていないのだろう。
2月の期末テストの結果、僕は学年20位まで上がった。エチカたちには遠く及ばないが、この一年で学年最下位からここまで登り詰めたのだ。正直表彰されても良いと思う。
春休みは新入生と卒業生の入れ替えの準備があるので、学校に出入り禁止の期間がある。なので僕も例外なく実家に帰省している。
実家に帰省してからすぐに髪を切ってもらった。肩まで伸びた髪は、顎下までになった。ゲームでのマリスと同じ長さで、少しだけ懐かしい気持ちになる。
帰省して2日目の今日、朝食後に客間へ来るようにと父から言われたので、急いで向かった。
「マリス、こちらに来なさい」
父に促されて隣に座る。目の前にはいかにも家庭教師っぽい女性がいて、女性の両隣に王宮騎士の制服を着た男2人が座っていた。
「マリス。彼女は明日からお前の家庭教師をするマヤさんだ。王都から来てくださったんだよ」
「初めましてマリス様。王都から参りましたマヤ・スッテンと申します。貴方を立派な王太子妃にするよう仰せつかっておりますので、2年の間よろしくお願いします」
マヤさんは眼鏡をくいっと上げた。
「マヤさんは王宮に勤めている教師なんだ。マリス、しっかり学ぶようにね」
「はい……よろしくお願いします……」
(あーあ、やだなぁ……)
いよいよフィオーネとの結婚が現実味を帯びてくる。もしかしたら婚約破棄をされるかもしれないというのに、妃教育をする意味はあるのだろうか。
マヤさんと騎士の2人は王都へ帰っていった。王宮勤めのすごい人だから護衛がいたのか。そんなすごい人に教えてもらえるなんて光栄なことなのだろうが、ちっとも気が進まない。マヤさんは明日から泊まり込みで教えてくれると父に言われた。
明日から僕は、長期休暇の間は妃教育を受けなければならない。正直逃げたい。学年最下位だったマリスが学校の勉強と並行して王妃の勉強をこなせるわけがない。
僕は、実質最後の休日を憂鬱な気持ちで過ごしたのだった。
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