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1年生
夜更かし
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学園祭が終わり、寝る支度を整えてベッドに寝転ぶ。
昼寝をしたせいか、目が冴えてしまいなかなか寝付けなかった。ごろんと右に寝返りをうつ。
今日のダンスパーティーは、外部から様々な貴族が参加した。父も兄も来ていたかもしれない。
サボっていることは絶対バレた。やばいかもしれない。
それに、僕は今、どのくらい『強制力』に抗えているのだろう。僕は破滅エンドを迎えず、無事に学園を卒業できるのだろうか。
ベッド上で考え事をしていると、不安な気持ちで押し潰されそうになった。
「……」
もう一度寝返りを打とうとしたとき、ノックの音が聞こえた。
「マリス、起きてる?」
「うん。起きてるよ」
「入っていい?」
「うん」
ガチャリとドアが開き、寝間着姿のリュゼが入ってきた。僕はベッドから上半身を起こす。
「リュゼ、どうしたの?」
「なんか寝付けなくてさ。マリスも?」
「うん……」
「そうだ。ちょっと待ってて」
リュゼはそう言うと部屋から出ていったので、待っている間に部屋の明かりをつける。
リュゼはマグカップを2つ持ってもう一度部屋に入ってきた。
マグカップの中から、ミルクの甘い香りが漂ってくる。僕はカップを受け取り、リュゼにベッドに座るよう促した。
一口飲むと、ホットミルクの甘い味が口に広がり、身体がほっと温まった。
「おいしい! ありがとう」
「ふふ、どういたしまして。眠れない夜はこれに限るね」
僕はもう一口ミルクを口に入れる。リュゼはさっきまで笑顔を浮かべていたけど、突然思いつめたような顔をしてカップを眺めていた。
「あの、マリス……今日の学園祭さ、いなかったよね。エチカも……」
「う、うん」
「ある生徒が、マリスがエチカを体育館倉庫に閉じ込めて、学園祭に参加させないようにしていたって生徒会に報告してきたんだ」
「え!?」
(あいつか……!)
僕の背中を押してなんか言ってたやつだ。残念なことに僕は顔を見ていない。
生徒会に報告に来たということは、この件はフィオーネにも知られてしまったのだろうか。胸がもやっとする。
「もちろんマリスがそんなことしてないってわかってる。カミール王子の話も報告されてるし。だからその……何かあったんじゃないかって気になっちゃって」
リュゼは力なく笑った。そんなリュゼを見て、僕は正直に話すことにした。
「実はね、学園祭をサボろうと思って、倉庫に閉じ込められたフリをしようって話をエチカとしたんだ。あ、もちろん言い出しっぺは僕で、僕がエチカを巻き込んだんだ」
「ふんふん、それで?」
「そうしたら、倉庫の扉が壊れてて本当に閉じ込められたんだ」
「サボろうとしたからバチが当たったんだ」
リュゼがじとっとした目で僕を見る。僕は、ばつが悪くなって視線をキョロキョロと動かした。
「そ、それにしても、その報告に来た生徒は学園祭の日に倉庫へ一体何の用だったんだろうなぁ~?」
「そうだよね! 俺もそれが気になってたんだ! しかも、結局カミール王子が倉庫を開けたってことは、その報告してきた生徒はエチカが閉じ込められているのを知ってて放置してたってことになるよな」
いつもの調子に戻ったようでほっとする。リュゼは残りのミルクをぐいっと一気に飲むと、僕のベッドに潜りこんできた。
「ね、ね、せっかくだから一緒に寝ようよ!」
「ええ!? まぁいいけどさ、明日起こしてね」
「はーい」
僕もミルクを飲み干し、カップを机に置いて布団に入る。入りやすいようにリュゼが布団を持ち上げてくれた。
ベッドは大きいサイズなので、男二人で寝てもそこまで窮屈では無かった。ホットミルクのおかげか、ベッドに入るとすぐにうとうとしてしまう。
微睡みの中、リュゼの声が聞こえたが、リュゼの声も眠たそうにとろんとしていた。
「……でもさ、今日、エチカが……パーティーに来てなくてよかった。マリス、ありがとう……」
「え……?」
リュゼの言葉に、少しだけ意識が覚醒する。
(来てなくてよかった……?)
「ど、どうして?」
「……だって……カンテミー……こうしゃくが、いらして……彼に……エチカを……会わせたく……」
そこまで言い、リュゼはすうすうと規則的な寝息を立てた。
(エチカとカンテミール公爵を会わせたらまずいってこと……? カンテミール公爵ってセオリアスの父親だよね? ってことはもしかして……だからセオリアスは、エチカを体育館倉庫に閉じ込めろって言ったのか? エチカを会わせないために……?)
少しだけ、セオリアスに対する見方が変わった気がする。でも、何の相談も無しに倉庫へ閉じ込めるのは強引ではないかと思う。
(ってか、そういえばあの時、僕……!)
不意に、倉庫の鍵を渡されたときの、セオリアスとのキスを思い出して顔が熱くなる。
(何であんなことしたんだろう……もしかして僕、弄ばれてる……?)
ぐるぐると考えているうちにまたもや眠気が覚めてしまった。
結局あんまり眠れなくて、次の日の朝は二人で寝坊した。
昼寝をしたせいか、目が冴えてしまいなかなか寝付けなかった。ごろんと右に寝返りをうつ。
今日のダンスパーティーは、外部から様々な貴族が参加した。父も兄も来ていたかもしれない。
サボっていることは絶対バレた。やばいかもしれない。
それに、僕は今、どのくらい『強制力』に抗えているのだろう。僕は破滅エンドを迎えず、無事に学園を卒業できるのだろうか。
ベッド上で考え事をしていると、不安な気持ちで押し潰されそうになった。
「……」
もう一度寝返りを打とうとしたとき、ノックの音が聞こえた。
「マリス、起きてる?」
「うん。起きてるよ」
「入っていい?」
「うん」
ガチャリとドアが開き、寝間着姿のリュゼが入ってきた。僕はベッドから上半身を起こす。
「リュゼ、どうしたの?」
「なんか寝付けなくてさ。マリスも?」
「うん……」
「そうだ。ちょっと待ってて」
リュゼはそう言うと部屋から出ていったので、待っている間に部屋の明かりをつける。
リュゼはマグカップを2つ持ってもう一度部屋に入ってきた。
マグカップの中から、ミルクの甘い香りが漂ってくる。僕はカップを受け取り、リュゼにベッドに座るよう促した。
一口飲むと、ホットミルクの甘い味が口に広がり、身体がほっと温まった。
「おいしい! ありがとう」
「ふふ、どういたしまして。眠れない夜はこれに限るね」
僕はもう一口ミルクを口に入れる。リュゼはさっきまで笑顔を浮かべていたけど、突然思いつめたような顔をしてカップを眺めていた。
「あの、マリス……今日の学園祭さ、いなかったよね。エチカも……」
「う、うん」
「ある生徒が、マリスがエチカを体育館倉庫に閉じ込めて、学園祭に参加させないようにしていたって生徒会に報告してきたんだ」
「え!?」
(あいつか……!)
僕の背中を押してなんか言ってたやつだ。残念なことに僕は顔を見ていない。
生徒会に報告に来たということは、この件はフィオーネにも知られてしまったのだろうか。胸がもやっとする。
「もちろんマリスがそんなことしてないってわかってる。カミール王子の話も報告されてるし。だからその……何かあったんじゃないかって気になっちゃって」
リュゼは力なく笑った。そんなリュゼを見て、僕は正直に話すことにした。
「実はね、学園祭をサボろうと思って、倉庫に閉じ込められたフリをしようって話をエチカとしたんだ。あ、もちろん言い出しっぺは僕で、僕がエチカを巻き込んだんだ」
「ふんふん、それで?」
「そうしたら、倉庫の扉が壊れてて本当に閉じ込められたんだ」
「サボろうとしたからバチが当たったんだ」
リュゼがじとっとした目で僕を見る。僕は、ばつが悪くなって視線をキョロキョロと動かした。
「そ、それにしても、その報告に来た生徒は学園祭の日に倉庫へ一体何の用だったんだろうなぁ~?」
「そうだよね! 俺もそれが気になってたんだ! しかも、結局カミール王子が倉庫を開けたってことは、その報告してきた生徒はエチカが閉じ込められているのを知ってて放置してたってことになるよな」
いつもの調子に戻ったようでほっとする。リュゼは残りのミルクをぐいっと一気に飲むと、僕のベッドに潜りこんできた。
「ね、ね、せっかくだから一緒に寝ようよ!」
「ええ!? まぁいいけどさ、明日起こしてね」
「はーい」
僕もミルクを飲み干し、カップを机に置いて布団に入る。入りやすいようにリュゼが布団を持ち上げてくれた。
ベッドは大きいサイズなので、男二人で寝てもそこまで窮屈では無かった。ホットミルクのおかげか、ベッドに入るとすぐにうとうとしてしまう。
微睡みの中、リュゼの声が聞こえたが、リュゼの声も眠たそうにとろんとしていた。
「……でもさ、今日、エチカが……パーティーに来てなくてよかった。マリス、ありがとう……」
「え……?」
リュゼの言葉に、少しだけ意識が覚醒する。
(来てなくてよかった……?)
「ど、どうして?」
「……だって……カンテミー……こうしゃくが、いらして……彼に……エチカを……会わせたく……」
そこまで言い、リュゼはすうすうと規則的な寝息を立てた。
(エチカとカンテミール公爵を会わせたらまずいってこと……? カンテミール公爵ってセオリアスの父親だよね? ってことはもしかして……だからセオリアスは、エチカを体育館倉庫に閉じ込めろって言ったのか? エチカを会わせないために……?)
少しだけ、セオリアスに対する見方が変わった気がする。でも、何の相談も無しに倉庫へ閉じ込めるのは強引ではないかと思う。
(ってか、そういえばあの時、僕……!)
不意に、倉庫の鍵を渡されたときの、セオリアスとのキスを思い出して顔が熱くなる。
(何であんなことしたんだろう……もしかして僕、弄ばれてる……?)
ぐるぐると考えているうちにまたもや眠気が覚めてしまった。
結局あんまり眠れなくて、次の日の朝は二人で寝坊した。
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