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1年生
意地悪でクソガキで不器用だけど根は優しいらしい
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エチカと雑談をしながらカミールを待つ。
このとき、僕はセオリアスに脅されていることをエチカに打ち明けた。
「セオリアスは悪い子じゃないんだ。ちょっと……いや、だいぶ意地悪でクソガキではあるんだけど……不器用なだけで根は優しいんだよ」
(いや、ボロクソに言うやん)
「それにしても、あの時聞いていたのがセオリアスでよかった。これからは、大事なことは気をつけて話さないとだね」
エチカはセオリアスに意地悪な事をたくさん言われているのに、信頼を寄せているような口ぶりだった。
「ほんとごめん……僕が迂闊だった。あの時は気が立っていて……」
「ふふ、仕方が無いよ。それにさ、セオの脅しって本当は意味ないよね? だってマリスが『結婚するつもりない』って言った証拠はないでしょ?」
「あ……」
言われてみればたしかにそうだ。そんな簡単なことにも気づかず、アホみたいに言う事を聞いていた自分が恥ずかしくなった。
セオリアスのことだから、証拠が無くて脅しとして成立しないことくらいわかっていたと思う。ということは、もしかしたら最初から本気で脅すつもりはなかったのかもしれない。
「それとね、あの後考えたんだけど……マリスの感情が暴走してしまうのって、マリスの身体と椿くんの魂が安定していないからだと思うんだ」
突然前世の名前を呼ばれ、心臓が跳ねた。
「ど、どうして、僕の名前……」
「それは……カマをかけたんだよ! なんか話し方の癖とか、サイン会に来てた椿くんっぽいなあって思って。当たっててよかった~」
エチカはあたふたと説明した。何かを誤魔化しているようにも見えた。
「実はね、前世では椿くんとは仲良くなりたいと思ってたんだ」
照れ臭そうにエチカが笑う。作者さんに仲良くなりたいと思われていたなんて、あの時勇気を出してサイン会に行ってよかったと思った。
殺されてしまったが、結果的にこうして仲良くなれているわけだし。
「えっと、それで、魂の安定っていうのは?」
「椿くんの意思とマリスの感情に齟齬があるってことだよ。心当たりあるでしょ?」
たしかに、僕はフィオーネのことを何とも思っていないが、マリスの感情に引っ張られてフィオーネの一挙一動に胸がざわついてしまうときがある。
「僕はフィオーネと結婚する気はないけど、マリスは結婚したい……的な?」
「そう、それそれ!」
「でも……僕はこれからどうすればいいんだろう」
「まずは魂を安定させることだね。そうすれば、フィオーネと結婚したいのかしたくないのか、自ずと答えが見えてくるよ」
「魂の安定ってどうすればできるの?」
「椿くんとマリスが互いのことを理解して受け入れればできると思うよ」
「うう、どうやったら互いに理解できるんだ……」
エチカは「はは……」と笑うだけでそれ以上は何も言わなかった。
「それにしても、魂のことまでわかるなんてすごいね。これもゲームの設定だったりするの?」
「違うけど……ほら、一応ぼくは神子だからさ、神とか魂とかそういう系のことは詳しいんだよ」
「へええ、すごい」
その後もエチカに魂のことについてレクチャーしてもらっていると、外から足音が聞こえた。ようやくカミールが来たのだ。
僕とエチカは立ち上がって扉の前まで行き、倉庫の扉をガンガンと叩いた。
「な、なんだ!?」
このとき、僕はセオリアスに脅されていることをエチカに打ち明けた。
「セオリアスは悪い子じゃないんだ。ちょっと……いや、だいぶ意地悪でクソガキではあるんだけど……不器用なだけで根は優しいんだよ」
(いや、ボロクソに言うやん)
「それにしても、あの時聞いていたのがセオリアスでよかった。これからは、大事なことは気をつけて話さないとだね」
エチカはセオリアスに意地悪な事をたくさん言われているのに、信頼を寄せているような口ぶりだった。
「ほんとごめん……僕が迂闊だった。あの時は気が立っていて……」
「ふふ、仕方が無いよ。それにさ、セオの脅しって本当は意味ないよね? だってマリスが『結婚するつもりない』って言った証拠はないでしょ?」
「あ……」
言われてみればたしかにそうだ。そんな簡単なことにも気づかず、アホみたいに言う事を聞いていた自分が恥ずかしくなった。
セオリアスのことだから、証拠が無くて脅しとして成立しないことくらいわかっていたと思う。ということは、もしかしたら最初から本気で脅すつもりはなかったのかもしれない。
「それとね、あの後考えたんだけど……マリスの感情が暴走してしまうのって、マリスの身体と椿くんの魂が安定していないからだと思うんだ」
突然前世の名前を呼ばれ、心臓が跳ねた。
「ど、どうして、僕の名前……」
「それは……カマをかけたんだよ! なんか話し方の癖とか、サイン会に来てた椿くんっぽいなあって思って。当たっててよかった~」
エチカはあたふたと説明した。何かを誤魔化しているようにも見えた。
「実はね、前世では椿くんとは仲良くなりたいと思ってたんだ」
照れ臭そうにエチカが笑う。作者さんに仲良くなりたいと思われていたなんて、あの時勇気を出してサイン会に行ってよかったと思った。
殺されてしまったが、結果的にこうして仲良くなれているわけだし。
「えっと、それで、魂の安定っていうのは?」
「椿くんの意思とマリスの感情に齟齬があるってことだよ。心当たりあるでしょ?」
たしかに、僕はフィオーネのことを何とも思っていないが、マリスの感情に引っ張られてフィオーネの一挙一動に胸がざわついてしまうときがある。
「僕はフィオーネと結婚する気はないけど、マリスは結婚したい……的な?」
「そう、それそれ!」
「でも……僕はこれからどうすればいいんだろう」
「まずは魂を安定させることだね。そうすれば、フィオーネと結婚したいのかしたくないのか、自ずと答えが見えてくるよ」
「魂の安定ってどうすればできるの?」
「椿くんとマリスが互いのことを理解して受け入れればできると思うよ」
「うう、どうやったら互いに理解できるんだ……」
エチカは「はは……」と笑うだけでそれ以上は何も言わなかった。
「それにしても、魂のことまでわかるなんてすごいね。これもゲームの設定だったりするの?」
「違うけど……ほら、一応ぼくは神子だからさ、神とか魂とかそういう系のことは詳しいんだよ」
「へええ、すごい」
その後もエチカに魂のことについてレクチャーしてもらっていると、外から足音が聞こえた。ようやくカミールが来たのだ。
僕とエチカは立ち上がって扉の前まで行き、倉庫の扉をガンガンと叩いた。
「な、なんだ!?」
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