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1年生
作戦失敗
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翌日。僕は朝食の後、段取り通り体育館倉庫へと向かった。
「あれ、エチカ……?」
体育館倉庫の前に来たが、そこには誰の姿もない。
「おーい」
呼びかけてみても返事が無いので、エチカを待ちがてら倉庫の扉の具合を確かめてみることにした。
扉を開けようとしたら、鍵がかかっていた。
(あれ、セオリアスから鍵はかかってないって聞いたんだけど……)
不審に思い、セオリアスからもらった鍵を使い扉を開ける。扉の先には、マットの上で寝転びくつろいでいるエチカの姿があった。
「あれえ、どうしたのマリス?」
「え、エチカこそなんでもういるの!? おかしいな、この倉庫って内鍵は無いはずなんだけど……」
「? マリスがさっきぼくを閉じ込めたんじゃん。演出凝っててビビった。マリスって意外と凝り性なんだね」
「え、なんのこ……うわっ!!」
不意に勢いよく背中を押され、僕は思い切り倉庫の中へ入り膝をついた。
「邪魔してんじゃねえよ、バーカ!!」
わけもわからないまま倉庫の扉を閉められ、鍵もかけられてしまう。僕とエチカは茫然と顔を見合わせた。
「え、誰……?」
エチカがぽつりとつぶやく。僕を押したのは見知らぬ生徒らしい。エチカはマットから体を起こすと、扉に手をかけた。鍵のかかった扉はびくともしない。
「マリス……今朝、僕にこの手紙をくれた……?」
エチカは扉から手を離し、ポケットから紙を取り出した。丁寧に二つ折りにされている。
エチカから手渡された手紙に見覚えはなかった。僕がセオリアスから渡された手紙と内容こそ似ていたが、細かい部分は全然違う。そもそも筆跡が全く似ていない。
「僕、エチカに手紙なんて渡してないよ」
「じゃあ、ぼくたちガチで閉じ込められたってこと……?」
エチカは再びマットに寝転んだ。僕もエチカの隣に腰を下ろす。
しばらく待ってみたが、人の来る気配すらない。もう何時間も経っているように感じるが、実際には1時間も経っていないだろう。
「まあまあマリス、元気出して。もうちょっと経ったらカミールが助けに来てくれるよ、多分」
「多分って……。あーあ、ほんとごめん。僕がもう少し早く来てれば……」
「気にしない気にしない! ほら、ここ空いてるからマリスも寝転びなよ」
エチカがバンバンとマットの上を叩き、埃が宙に舞う。促されて仰向けになったが、僕たちは二人とも小柄なので、そこまで窮屈にはならなかった。
「ふわあ……ぼくちょっと寝るね。カミールが来たら起こして~」
「うん」
一分も経たないうちにエチカは寝息をたて始めた。僕は、外から足音が聞こえないか耳を澄ましていたが、気が付いたら深い眠りに落ちていた。
「あれ、エチカ……?」
体育館倉庫の前に来たが、そこには誰の姿もない。
「おーい」
呼びかけてみても返事が無いので、エチカを待ちがてら倉庫の扉の具合を確かめてみることにした。
扉を開けようとしたら、鍵がかかっていた。
(あれ、セオリアスから鍵はかかってないって聞いたんだけど……)
不審に思い、セオリアスからもらった鍵を使い扉を開ける。扉の先には、マットの上で寝転びくつろいでいるエチカの姿があった。
「あれえ、どうしたのマリス?」
「え、エチカこそなんでもういるの!? おかしいな、この倉庫って内鍵は無いはずなんだけど……」
「? マリスがさっきぼくを閉じ込めたんじゃん。演出凝っててビビった。マリスって意外と凝り性なんだね」
「え、なんのこ……うわっ!!」
不意に勢いよく背中を押され、僕は思い切り倉庫の中へ入り膝をついた。
「邪魔してんじゃねえよ、バーカ!!」
わけもわからないまま倉庫の扉を閉められ、鍵もかけられてしまう。僕とエチカは茫然と顔を見合わせた。
「え、誰……?」
エチカがぽつりとつぶやく。僕を押したのは見知らぬ生徒らしい。エチカはマットから体を起こすと、扉に手をかけた。鍵のかかった扉はびくともしない。
「マリス……今朝、僕にこの手紙をくれた……?」
エチカは扉から手を離し、ポケットから紙を取り出した。丁寧に二つ折りにされている。
エチカから手渡された手紙に見覚えはなかった。僕がセオリアスから渡された手紙と内容こそ似ていたが、細かい部分は全然違う。そもそも筆跡が全く似ていない。
「僕、エチカに手紙なんて渡してないよ」
「じゃあ、ぼくたちガチで閉じ込められたってこと……?」
エチカは再びマットに寝転んだ。僕もエチカの隣に腰を下ろす。
しばらく待ってみたが、人の来る気配すらない。もう何時間も経っているように感じるが、実際には1時間も経っていないだろう。
「まあまあマリス、元気出して。もうちょっと経ったらカミールが助けに来てくれるよ、多分」
「多分って……。あーあ、ほんとごめん。僕がもう少し早く来てれば……」
「気にしない気にしない! ほら、ここ空いてるからマリスも寝転びなよ」
エチカがバンバンとマットの上を叩き、埃が宙に舞う。促されて仰向けになったが、僕たちは二人とも小柄なので、そこまで窮屈にはならなかった。
「ふわあ……ぼくちょっと寝るね。カミールが来たら起こして~」
「うん」
一分も経たないうちにエチカは寝息をたて始めた。僕は、外から足音が聞こえないか耳を澄ましていたが、気が付いたら深い眠りに落ちていた。
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