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1年生
会計委員のマリス
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体育祭が終わるとすぐに学園祭の準備が始まった。学園祭は10月にあるイベントで、学園が主催のダンスパーティーである。
運営はすべて学園の生徒が行う。体育祭に出場しなかった生徒は何かしらの委員会に所属しなければならなかった。
ゲームでは、エチカは保健委員会に所属していた。エチカには神子の聖なる力があり、体調が悪くなった生徒を癒すことができるのだ。
僕は会計委員会を押し付けられた。最近エチカたちと距離を置いていたせいか、僕はまた学年で浮いてしまっている。そのため、会計という面倒くさい係を押し付けられてしまった。
会計委員は僕の他に9人の1年生がいる。彼らとは一度も話したことがなかったが、なぜか僕のことを嫌っていた。
「……以上が、会計としての仕事です。それでは、今から第一回ミーティングをしたいと思います」
(はあ……疲れたあ……)
会計は頭も気も使うのでとても疲れる。金銭を扱うのでミスは許されないのだ。
1回目のミーティングから、委員長はとても気合が入っていた。週に一度、あと4回このミーティングをしてから学園祭を迎える。
食堂に向かう途中でリュゼと会ったので、一緒に夕食を取ることにした。食堂にはエチカの姿が見えたが、リュゼは話しかけないでくれた。
きっと、僕がエチカを避けていることに気づいて気を使ってくれているのだ。
「マリス、委員会お疲れ様だね」
「ありがとう。リュゼもお疲れ。僕、頭悪いから正直やっていける自信が無いや……」
リュゼは水を一口飲んで、微笑んだ。
「マリスは別に頭悪くないし、大丈夫だよ。まあでも会計は大変な仕事だよね……押し付けちゃってごめん」
「別にリュゼのせいじゃないし、気にしないでよ。それに、僕よりリュゼの方が大変な仕事じゃん」
リュゼは学年代表者として生徒会に所属した。この学園の生徒会は、日本の学校と違い学園祭限定の組織で、すべての委員会を統括する役割をしている。ちなみに、フィオーネも生徒会である。
「俺のは皆がヘマさえしなきゃ楽チンな仕事だよ。だからマリス、絶対に計算を間違えないでね。絶対に……!」
「う、うん……」
リュゼの勢いに圧倒され、やはり生徒会が一番大変な仕事なのだと確信した。
2回目のミーティングから、本格的に忙しくなった。各委員会に必要なものを聞いてまわり、足りないものがあれば購入をする。
支給された費用でやりくりしなければならないので、足りなくならないように計算をする。
使った金額は後からまとめて先生に報告しなければならない。そのため、何をどこで購入し、どういう用途で使われるのかを詳細に記録する必要がある。
ミーティングの時間はだんだんと伸びていき、4回目のミーティングは校舎が閉まるギリギリの時間に終了した。
(こんな時間まで残ったのはフィオーネ様との勉強会以来だな)
あれからフィオーネとはまともに会話を交わしていない。たまにすれ違った際に挨拶をする程度だ。
学園祭の準備期間、フィオーネとエチカが親しげに話しているところを何度か目撃し心を痛めた。勉強会で僕に「婚約者」と言ってくれたが、フィオーネの気持ちはいったい誰にあるのだろう。
(少なくとも、マリスは脈なしだな……まあいいじゃん。婚約破棄は婚約破棄でも円満なら結果オーライだよ)
心が痛くなったときは、こうして自分で自分を励ます。最近は、そうすることで少しだけ気持ちが軽くなったような気がするのだ。
マリスが僕に心を開いてくれたような気がして嬉しい。すべて自分ひとりの感情なので不思議ではあるのだが。
「おーいマリス」
食堂に向かう途中の廊下で嫌な声が聞こえたので振り向くと、いつもの意地悪な顔をしたセオリアスが居た。
運営はすべて学園の生徒が行う。体育祭に出場しなかった生徒は何かしらの委員会に所属しなければならなかった。
ゲームでは、エチカは保健委員会に所属していた。エチカには神子の聖なる力があり、体調が悪くなった生徒を癒すことができるのだ。
僕は会計委員会を押し付けられた。最近エチカたちと距離を置いていたせいか、僕はまた学年で浮いてしまっている。そのため、会計という面倒くさい係を押し付けられてしまった。
会計委員は僕の他に9人の1年生がいる。彼らとは一度も話したことがなかったが、なぜか僕のことを嫌っていた。
「……以上が、会計としての仕事です。それでは、今から第一回ミーティングをしたいと思います」
(はあ……疲れたあ……)
会計は頭も気も使うのでとても疲れる。金銭を扱うのでミスは許されないのだ。
1回目のミーティングから、委員長はとても気合が入っていた。週に一度、あと4回このミーティングをしてから学園祭を迎える。
食堂に向かう途中でリュゼと会ったので、一緒に夕食を取ることにした。食堂にはエチカの姿が見えたが、リュゼは話しかけないでくれた。
きっと、僕がエチカを避けていることに気づいて気を使ってくれているのだ。
「マリス、委員会お疲れ様だね」
「ありがとう。リュゼもお疲れ。僕、頭悪いから正直やっていける自信が無いや……」
リュゼは水を一口飲んで、微笑んだ。
「マリスは別に頭悪くないし、大丈夫だよ。まあでも会計は大変な仕事だよね……押し付けちゃってごめん」
「別にリュゼのせいじゃないし、気にしないでよ。それに、僕よりリュゼの方が大変な仕事じゃん」
リュゼは学年代表者として生徒会に所属した。この学園の生徒会は、日本の学校と違い学園祭限定の組織で、すべての委員会を統括する役割をしている。ちなみに、フィオーネも生徒会である。
「俺のは皆がヘマさえしなきゃ楽チンな仕事だよ。だからマリス、絶対に計算を間違えないでね。絶対に……!」
「う、うん……」
リュゼの勢いに圧倒され、やはり生徒会が一番大変な仕事なのだと確信した。
2回目のミーティングから、本格的に忙しくなった。各委員会に必要なものを聞いてまわり、足りないものがあれば購入をする。
支給された費用でやりくりしなければならないので、足りなくならないように計算をする。
使った金額は後からまとめて先生に報告しなければならない。そのため、何をどこで購入し、どういう用途で使われるのかを詳細に記録する必要がある。
ミーティングの時間はだんだんと伸びていき、4回目のミーティングは校舎が閉まるギリギリの時間に終了した。
(こんな時間まで残ったのはフィオーネ様との勉強会以来だな)
あれからフィオーネとはまともに会話を交わしていない。たまにすれ違った際に挨拶をする程度だ。
学園祭の準備期間、フィオーネとエチカが親しげに話しているところを何度か目撃し心を痛めた。勉強会で僕に「婚約者」と言ってくれたが、フィオーネの気持ちはいったい誰にあるのだろう。
(少なくとも、マリスは脈なしだな……まあいいじゃん。婚約破棄は婚約破棄でも円満なら結果オーライだよ)
心が痛くなったときは、こうして自分で自分を励ます。最近は、そうすることで少しだけ気持ちが軽くなったような気がするのだ。
マリスが僕に心を開いてくれたような気がして嬉しい。すべて自分ひとりの感情なので不思議ではあるのだが。
「おーいマリス」
食堂に向かう途中の廊下で嫌な声が聞こえたので振り向くと、いつもの意地悪な顔をしたセオリアスが居た。
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