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1年生
王宮パーティー2
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曲が終わり、ポーズが決まる。僕は1曲だけ踊ると、リュゼと別れて2階へ行くことにした。人が多くて少し疲れる。前世ではもっとひどいアニメイベントの人込みでも耐えられたが、マリスの体では少々厳しいようだ。
僕は階段を上がり、そのままバルコニーへと足を運んだ。バルコニーは無人だった。窓を閉めて、手すりに寄りかかり空を見上げる。雲一つない夜空には星が綺麗に映っている。
(あー疲れた……パーティーとか無理無理。早く寝たいよ)
今日のパーティーは元々、国の繁栄をみんなで祝うという目的で行われる。本当は身分関係なく参加してほしいのだが、リスクが大きいので中々実現できない、とマリスの記憶にいる幼いフィオーネがぼやいていた。
しばらく窓から景色を眺めていると、下でこそこそしている人影が見えた。
(もしかして、エチカを襲おうとしている奴らか……?)
僕は彼らの会話を聞こうとしてその場にしゃがみ、なるべく音を拾おうと手すりの隙間に耳を近づけた。
「……、……んだ……」
「……ねえ……き……の……」
「……れ……」
複数人で何かを話しているのは聞こえたが、内容までは聞き取れない。バルコニーから出ようと扉を開けたとき、風船みたいな球体にぶつかった。
「おっと」
顔を上げると、でっぷり太った中年男性が僕を見下ろしていた。
「あ、申し訳ありません!」
僕は慌てて謝罪する。おじさんはにっこりと笑みを浮かべ、「気にしなくていい」と言ってくれた。
「君、アスムベルク伯爵ご子息の、マリスくんだよね?」
「あ、はい。あの……?」
男はじりじりと僕の方に寄ってきたので、僕も後ずさった。男がバルコニーに入ると、僕の方を向いたまま片手で扉を閉める。
「ああ、私はハルデマン子爵家当主のボン・ハルデマンといってね、アスムベルク伯爵にはお世話になっているんだ。君とこうして話すのは初めてだけど……君はお母さんに似てとても綺麗な顔をしているね」
そう言ってハルデマン卿は僕の髪をさらりと撫でた。
「ひっ」
ぞわっと全身に鳥肌が立つ。ハルデマン卿は僕のほうにゆっくりと近づいてきて、僕はそれに合わせて後ずさる。とん、と背中に手すりが当たった。
「アスムベルク伯爵も惜しい人を亡くしたな。彼女はとても可愛らしくて、貴族の中では1番の人気だったよ。君が生まれてまもなく亡くなってしまい、君も君のお兄様も寂しいをしただろう」
ハルデマン卿のごわごわした手が僕の頬をなぞる。そのままその手を僕の肩に置き、反対の手で僕の顎を掬い上げた。
「こんな可愛らしい顔をしていたら男たちが黙っていないだろう。フィオーネ殿下とはどこまでいった? そういえば今日はダンスをしていなかったね。喧嘩中かな?」
「あの、やめてください。父上に言いつけますよ」
僕は男の腕を引きはがそうと抵抗したが、男の力が強くて引きはがすことができない。
(クソ! この変態デブ!)
「それは困るな。それでは父上に言いつけられないように口止めをしなければ」
ハルデマン卿は肩に乗せていた手を腰までずらし、ぐいっと僕を引き寄せる。
「やめてください! 離して!」
「さあ、別室に行こうか」
男の声が耳元で聞こえ、再び鳥肌がぞわりと全身を駆ける。ハルデマン卿に手を引かれて連れていかれそうになった時、扉が勢いよく開いた。
キラキラと光る銀色の髪に、深い海のような青色の瞳の男。攻略対象の一人、セオリアス・カンテミールがそこに居た。セオリアスはじろりと僕たちを一瞥した。
「あ、貴方は……!」
「しゃべんな変態豚。おい、連れてけ」
セオリアスの呼びかけに、待機していた護衛がハルデマン卿を連れていく。変態男が去って僕はようやくほーっと息を吐けた。
「あの、ありがとう」
「は? てめーも襲われたくねえなら一人でこんなところにいるんじゃねえよ。アホなのか?」
「え!? ご、ごめん」
突然の罵倒に驚き、咄嗟に謝罪をする。セオリアスは「チッ」と舌打ちをしてその場を去っていった。入れ替わるように、大きな足音を立ててグランが来た。走って来てくれたようで、髪が乱れている。
「大丈夫か!?」
「うん、なんとか。セオリアスが助けてくれたんだ」
「へえ、あのセオが? 外からお前たちの声が聞こえて慌てて来たんだが……とりあえず無事でよかった」
グランはほっと息をつき、乱れていた呼吸を整えた。
「外から? グラン、もしかして下で誰かと話してた?」
「? いや、俺はずっと一人でいたぜ。どうかしたのか?」
グランの言葉を聞くまでイベントのことを忘れていた。バルコニーの下からは既に話し声は聞こえてこない。
(やばい、早くエチカと合流しよう)
「グラン、僕急用があったから行くね。ありがとう!」
「はぁ!? ちょっ、おい! ゲストがパーティーで急用ってなんだよ!?」
僕は階段を上がり、そのままバルコニーへと足を運んだ。バルコニーは無人だった。窓を閉めて、手すりに寄りかかり空を見上げる。雲一つない夜空には星が綺麗に映っている。
(あー疲れた……パーティーとか無理無理。早く寝たいよ)
今日のパーティーは元々、国の繁栄をみんなで祝うという目的で行われる。本当は身分関係なく参加してほしいのだが、リスクが大きいので中々実現できない、とマリスの記憶にいる幼いフィオーネがぼやいていた。
しばらく窓から景色を眺めていると、下でこそこそしている人影が見えた。
(もしかして、エチカを襲おうとしている奴らか……?)
僕は彼らの会話を聞こうとしてその場にしゃがみ、なるべく音を拾おうと手すりの隙間に耳を近づけた。
「……、……んだ……」
「……ねえ……き……の……」
「……れ……」
複数人で何かを話しているのは聞こえたが、内容までは聞き取れない。バルコニーから出ようと扉を開けたとき、風船みたいな球体にぶつかった。
「おっと」
顔を上げると、でっぷり太った中年男性が僕を見下ろしていた。
「あ、申し訳ありません!」
僕は慌てて謝罪する。おじさんはにっこりと笑みを浮かべ、「気にしなくていい」と言ってくれた。
「君、アスムベルク伯爵ご子息の、マリスくんだよね?」
「あ、はい。あの……?」
男はじりじりと僕の方に寄ってきたので、僕も後ずさった。男がバルコニーに入ると、僕の方を向いたまま片手で扉を閉める。
「ああ、私はハルデマン子爵家当主のボン・ハルデマンといってね、アスムベルク伯爵にはお世話になっているんだ。君とこうして話すのは初めてだけど……君はお母さんに似てとても綺麗な顔をしているね」
そう言ってハルデマン卿は僕の髪をさらりと撫でた。
「ひっ」
ぞわっと全身に鳥肌が立つ。ハルデマン卿は僕のほうにゆっくりと近づいてきて、僕はそれに合わせて後ずさる。とん、と背中に手すりが当たった。
「アスムベルク伯爵も惜しい人を亡くしたな。彼女はとても可愛らしくて、貴族の中では1番の人気だったよ。君が生まれてまもなく亡くなってしまい、君も君のお兄様も寂しいをしただろう」
ハルデマン卿のごわごわした手が僕の頬をなぞる。そのままその手を僕の肩に置き、反対の手で僕の顎を掬い上げた。
「こんな可愛らしい顔をしていたら男たちが黙っていないだろう。フィオーネ殿下とはどこまでいった? そういえば今日はダンスをしていなかったね。喧嘩中かな?」
「あの、やめてください。父上に言いつけますよ」
僕は男の腕を引きはがそうと抵抗したが、男の力が強くて引きはがすことができない。
(クソ! この変態デブ!)
「それは困るな。それでは父上に言いつけられないように口止めをしなければ」
ハルデマン卿は肩に乗せていた手を腰までずらし、ぐいっと僕を引き寄せる。
「やめてください! 離して!」
「さあ、別室に行こうか」
男の声が耳元で聞こえ、再び鳥肌がぞわりと全身を駆ける。ハルデマン卿に手を引かれて連れていかれそうになった時、扉が勢いよく開いた。
キラキラと光る銀色の髪に、深い海のような青色の瞳の男。攻略対象の一人、セオリアス・カンテミールがそこに居た。セオリアスはじろりと僕たちを一瞥した。
「あ、貴方は……!」
「しゃべんな変態豚。おい、連れてけ」
セオリアスの呼びかけに、待機していた護衛がハルデマン卿を連れていく。変態男が去って僕はようやくほーっと息を吐けた。
「あの、ありがとう」
「は? てめーも襲われたくねえなら一人でこんなところにいるんじゃねえよ。アホなのか?」
「え!? ご、ごめん」
突然の罵倒に驚き、咄嗟に謝罪をする。セオリアスは「チッ」と舌打ちをしてその場を去っていった。入れ替わるように、大きな足音を立ててグランが来た。走って来てくれたようで、髪が乱れている。
「大丈夫か!?」
「うん、なんとか。セオリアスが助けてくれたんだ」
「へえ、あのセオが? 外からお前たちの声が聞こえて慌てて来たんだが……とりあえず無事でよかった」
グランはほっと息をつき、乱れていた呼吸を整えた。
「外から? グラン、もしかして下で誰かと話してた?」
「? いや、俺はずっと一人でいたぜ。どうかしたのか?」
グランの言葉を聞くまでイベントのことを忘れていた。バルコニーの下からは既に話し声は聞こえてこない。
(やばい、早くエチカと合流しよう)
「グラン、僕急用があったから行くね。ありがとう!」
「はぁ!? ちょっ、おい! ゲストがパーティーで急用ってなんだよ!?」
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