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再出発
さよなら
しおりを挟む三日三晩、激しい頭痛と吐き気を零は乗りきった。
零は晴れて、田宮零から津島零へと戻ったのだ。
「…じゃ、ね」
「……あぁ」
「うん、…さよなら」
数年、恙無くやってきた夫の見送りと共に、零は慎也を連れて家を出た。
「ねぇ、なんでこんなにいっぱい荷物あるの?どこに行くの?パパは?一緒に行かないの?」
慎也の声を聞いているとまるで責められているようで、そうではないと分かっていても涙が出てきた。
「…ごめん…」
あの日の駆け落ちごっこはまるで夢だったかのように、淡い記憶となっている。
今頃彼はどうしているだろう。家に、…妻の元に帰ったのだろうか。
「…ママ?」
「ごめん、慎也…!」
恭平も、ごめん。
俺のせいで振り回して、ごめん。勝手な俺の都合とワガママに振り回して、ごめん。
「…大丈夫」
「え…」
「俺はずっとそばにいるから!」
その言葉に、余計に涙が溢れた。
『大丈夫。俺はずっとそばにいるから』
ずっと前、本当に昔のこと。
修也と二人の世界にいた頃に、毎日のように呟いてくれた言葉。
「…うそつき…」
俺も、…修也も。
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