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40,子供は成長が早い
しおりを挟む初めてアルバートの前にウィリスを連れていったのは、ウィリスが健康体であることが確認されてからなので随分と遅くなってしまった。
もう自分の足で駆け回るアルバートはやはりリヴィウスに似たのか、知能も高いらしい。親としてこれほど嬉しいことはない。
「かあさま」
「アルバート、この子が弟だよ。仲良くしてね」
「僕の、おとうと…」
まだ小さい赤子を見てもイマイチピンと来ないのだろう。仕方ない。
「お菓子、食べる?」
ポケットから包みを出して並べる様子をのほほんと見ていたけれど、ハッとする。
「アルバート、お菓子は禁止されていたんじゃないの?」
「……なんのことで」
「お菓子ばっかり食べてご飯食べれなくなっているから、食べてはいけないって言われたよね?」
「ち、厨房に行ったら、侍女がくれたんです、だから僕は…」
「アルバートがねだったんでしょう」
臣下はとにかくアルバートに甘い。それは王位継承権を持つからとかそういう打算的な意味ではなく、単にアルバートという子供に弱いのだ。このかわいい顔で『おかしちょうだい?』と首を傾げられたら、レイでもぐらついてしまうのだ。普段からこの子を可愛がっている者たちからすれば、イチコロだろう。
けれど早めに直させなくてはならない。
「城には沢山の人がいるから、例えば……そのお菓子に悪いものが入っていても、誰から貰ったものか分からなくなるんだよ。だから、」
「僕、お菓子くれた人の名前とおうち全部言えます」
「全部って訳が…」
「料理人でガブリエル子爵家二男のミラン、その見習い弟子のオードル伯爵家四男のヒューマ、王城の薬園の総責任者でオードル伯爵家の三男でヒューマの兄のオルバス、それから…」
「分かったもういい、もういいから」
四歳の子ってこんなに話せるの?これが普通なの?それともアルバートの成長が早いだけ?
けれど聞く限り全員立場のある者ばかりだし、毒を盛られるようなことはないかもしれないが。
念には念を、とはよく言ったものだ。
「けれどアルバート、約束して。お菓子は誰かに先に食べてもらってからにしてね?」
「はい、かあさま」
「…アルバートは賢いね」
たまにどきりとすることがある。全てを見透かされているような気持ちになるのだ。
自分の心の奥底や、自分の隠していること全て。
考えすぎだと思おうと、その度に思うのだけれど。
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