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12,気付かないように
しおりを挟む「先に言いますが」
窶れた顔でレイに微笑みかけるリヴィウスに胸が締め付けられる。
今こんなことを言うべきではないかもしれない。けれど今でなくては言えないことだ。
「私には王妃など無理です。カルラ様はあのように遺されましたが、新たな王妃は他の側妃の中からお選びください」
「…それはできない」
カルラの国葬も終わった。もう次の王妃を据えないと、国の根幹が揺らいでしまう。
「陛下」
「王妃の遺言もあった。それ以前に、私がお前を側に置きたいのだ」
「陛下!」
考えれば分かることだ。
オメガの側妃は今までに何度かいた。けれど、その側妃が王の妃となることは一度たりとてない。それは決まっていることであり、男である以上、オメガが王妃となることはまずないのだ。
「…今はやめよう、この話をするのは」
リヴィウスも疲れていた。何故カルラを罰しなかったと責められることも、カルラの亡き後、カルラの実家に刑を与えよと言われることも。
けれどそこで折れてしまえば、国王としての威厳も損なわれる。それだけは出来なかった。
***
「おめでとうございます!」
明るい声で放たれた祝いの言葉に、レイは何とも言えない気持ちになった。
「…ありがとう…」
レイが妊娠していると分かったのは、次期王妃を誰にするかで国内が揉め合い、側妃逹が王子を産むのは自分だと競い合っている最中だった。
こんなときに妊娠などすれば、レイの王妃昇格は決まったようなものだ。けれど何分、前例がない。
それにレイはカルラが死んだ時に、城から出ようと決意していた。
それなのに、こんな最悪なタイミングで妊娠。
「レイ!!!」
嬉しそうな顔をするのは貴方くらいですよ、リヴィウスさん。
「…陛下、政務は」
「押し付けーー任せてきた。案ずるな」
今、押し付けてきたって言おうとしたよね?
国王がそんなんでどうする。
「…王子なら、王位継承権を授けよう。王女ならば好きなことを存分にやらせてあげよう、名前は何がいいだろうか…」
そんな先の話をされましても。ていうか最悪の事態を考えてくださいよ。この子供が、オメガだったら。
この国で初めて王族から汚らわしいオメガが出るかもしれない。それをとっくに大臣が申し立てたらしいけれど、申し立てた大臣はリヴィウスの怒りを買って辺境の地へと飛ばされたらしい。どうしたものか。
(…これで逃げられなくなったなぁ…)
それを少し嬉しいと思う自分には、気付かないようにしようと思う。
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