25 / 43
続・元カレに脅されています
楽しいけど
しおりを挟む「…はい、出来た」
「…どーも…」
浴衣の着付けも出来ないなんて、恥ずかしすぎる。
そう呟くと、悠が愛おしそうに頭を撫でた。
「お前に出来ないことがいっぱいある方が、俺は嬉しい」
「え?」
「だって、お前に出来ないことがあったら、俺が教えてあげられる。…たまには少しくらい、彼氏面させてくれ」
「っ…もう…」
なんなんですか、本当。これ以上俺の心臓を壊して、どうする気だ。
「…かわいい」
ゆっくりと瞼にキスを落とされ、鼓動が早くなる。
「カッコイイ、の方が嬉しい」
「ふくれっ面するなよ。…仕方ないだろ、かわいいんだから」
「真顔でそういうこと、言わないでください。本気にしますよ」
「俺はいつでも、本気だけど?」
やめて、と小突いて、部屋の鍵を手に取る。
「夕食までまだ時間ありますし、露天風呂行きませんか?」
「そうだな、することそんなにないし」
ふっと笑った悠の顔に、また鼓動が早くなる。
「…先…悠さん、和服似合いますよね、昔からずっと」
「ん…そうか?」
「うん、すっごい似合ってる。なんていうか…立ち振る舞いも、綺麗だし」
「そんなことねーって」
「高校の時の文化祭でも、浴衣着てたでしょ?俺、あの時、」
「恭弥、マジで…もう、やめて」
「え?」
見上げると、顔を真っ赤にして手で押さえる悠が、バツ悪そうにこちらを見下ろしている。
「あのな。お前、褒めすぎ。マジで恥ずかしいから」
「でも、カッコいいですよ」
「っ…だから、そういうことをっ…!」
言うな、と悠が言いかけてやめる。
「悠さん?」
廊下を通る人々の視線が、恭弥に集まっているのが分かったからだ。
「どうかしました?」
「…いや…」
(なんていうか、…コイツ、なんかすっげーエロい空気、出てるんだよな…)
見ているだけでドキドキしそうなほど…一言で言うなら、綺麗で。
「いたっ…!」
「…あ、ごめん」
無意識のうちに、恭弥の胸元を締めるため、手を伸ばしていた。
「あ…ごめんなさい、見苦しかったですよね」
「…そうじゃない」
縁も関係もない、ただの通行人に妬いてただけ、なんて。
(言えるわけ、ねーよな…)
「…あの、やっぱり」
「ん?」
「内風呂、入りませんか。あ、えっと…露天風呂、混んでるかも…」
「うん、俺もそう思ってた」
これ以上、恭弥を誰かの目の触れるところに置きたくない。
「…注目されてる」
「え?」
「通行人の人、すっごい先ぱ、…悠さんのこと見てる。さっきからずっと、かっこいいって言ってる」
先輩と呼んだら怒るのを分かっているからか、無理やり言い換える姿も、全部が愛おしくて。
「…気のせいだろ」
だから、視線を集めているのはお前だ、なんて。
絶対に、言わない。
0
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
忘れられない思い
yoyo
BL
真野匠(25)は、4月から新社会人として働き始めた。
職場の歓迎会の居酒屋で7年ぶりに、高校の時の数学教師だった奥田春人(33)と再会する。
奥田先生のことは、高校生の頃から特別な存在に感じていた匠。
最寄り駅が同じであったことも判明し、そこから急速に距離が縮まっていく二人……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる