時間を大切に

落合 優帆

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時間を大切に

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「よしっ僕が今月もトップだ!!」


「ええー。またお前かよー。俺だって結構今月頑張ったのによー。」


「新入りのくせに生意気だぞー。」


そんな会話が聞こえてくる。僕は今月もビリだった。


ビリとトップでは待遇が全然違う。僕はトップが羨ましかった。


最近入ったばかりの新入りなのに、前の月からトップなのだ。うらやましい。


僕だって仕事を初めたばかりの頃はずっと成績がトップだった。


けれど今では一番ビリ。こんなに悲しいことがあっていいのか・・・。



でもしょうがない。順位を決めるのは上なのだから。

僕も最初の頃はあんなに可愛がってもらってたのになあ。






僕たちの仕事はオシャレな服を着て外に働きにいくことだ。

その日によっていろんな服をきて、たまに様子を見られて、僕たちの状況次第でそのままな時もある。

外に出るとその日によって天気がよかったり悪かったり寒かったりいろいろだから働きに行けない時もある。

まあそんな時は最近はやりの在宅ワークだ。

まあいつも僕たちは臨機応変に働きに出ている。いい仕事環境で働かせてもらっている。





結構若い子たちが入ってくると新しい風が吹くとでもいうのだろうか。

新しい子ほど待遇がよくなって、ずっと働いている僕だとだんだん待遇も違ってくる。

まあ、それは僕がチヤホヤされていた時もだんだんと感じ取っていた。

僕が初めて入ってきたときにいた大先輩も、今の僕と同じような考えをしていた。

どうせお前も俺のように古株になれば相手にされなくなるだろうよと。



まあいろんなタイプが入ってくるのでチヤホヤされ、変わるのは当たり前だがそれを見ている僕はとても悲しくなる。


前に相手にされなくなるよと僕に言った先輩も、もうここにはいない。



相手にされなくなると新入りがどんどん入ってきて古いのはいらない。そういうスタイルだ。
要するにクビだ。



でも僕にはどうしようもできない。それを変えようとしても変えられないのが現状なのだ

上が何を求めているかで、僕達の働きはなくなる。変えようとしても変えられない。



変えられないのが分かっているから上も古株を切り捨てるのだ。
僕は今から最近入った新人に言っときたいことがある。


今の時間を存分に楽しめ。お前は何もできない。また新しい新人が入ってきたらだんだんお前も相手にされなくなる。


だからこそ、この時間を大事にしろと。



あの先輩はきっと僕にそう言いたかったんだろう。

あの時の僕はその先輩の言葉が嫌味だと思っていた。

それはまだ僕が新人でチヤホヤされていたからだ。

先輩から僕がチヤホヤされているから嫌味を言いたいんだろうとしかその時は思えなかった。

けれど今なら、今だからこそわかるから新人にどう思われようとも、僕はその言葉を新人に伝えたい。

それがその新人にとって大事なことだからだ。



今いろんなことができてる一瞬一瞬を大事にしろと。



僕たちはそれしかできないからである。


上が認めてくれて入っても結局新しい新人が入れば話は別だ。

僕たちは上に立て付くこともできない。話す機会さえない。そもそも僕たちは言葉が話せない。





だって人間じゃないから。






僕たちの上とは人間で、この世界に住む人間たちだ。


人間が僕たちを必要と思ってくれないと僕たちの働き場所はどこにもない。



どんどん新しいものがでてくる。


硬くて細い奴、太くて硬い奴、なだらかで受け止めてくれる奴、なだらかでずっと受け止めていてくれる優しいやつ。


僕たちは製造され常に置かれている。


そんな僕たちに気づいてくれる人間がいて初めて働きに行けるのだ。


でも、僕たちは運がいい。人間たちに選ばれてここにいるからだ。


選ばれていない奴はまだ働きにも行けず、ずっと暗い中にいるか、ずっと整列していないとだめなのだ。



なにかしらで列から抜けたとしてもまた選ばれない限り絶対にそこに戻されてしまう。


だから、僕は僕を選んでくれた人間に感謝している。働きに行けたことがなによりも嬉しかった。



たとえビリでもそれが僕にとっての大切な時間だったのだ。今だからこそわかる。




その大切さを分かったからこそ僕はその大切な時間を入ってきたばかりの新人に伝えておきたい。





僕がもう少しここにいる間に。




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