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第十二章 明らかになっていくこと
しおりを挟む俺は病院へ着いた。
着いたら、前野に連絡をするという約束だったので早速連絡をした。
そしたら、迎えに来るというので慌てて止めて、病み上がりの人をベットに戻した。
しぶしぶ、分かってはくれたようだったがやはりどこか気に食わなさそうだった。
しょうがないだろう。
病み上がりなんだからという一言で反省をしたのかしゅんと項垂れている姿が思い浮かんだ。
コンコンッ
ドアをノックした。
「前野ー。いるかー?見舞いにきたぞー」
と言ってはみるが部屋には前野の姿が見当たらない。どこ行ったんだろうか。
と思った瞬間頬に冷たいものが押し付けられた。
驚いて声も出ずに固まっていると後ろから笑い声が聞こえてきた。
前野だった。
思いっきり振り返って、一発ぶちかましてやろうかと思ったが、さすがに病人には手を出すことはできないので断念した。
まったく、反省してるんだかしてないんだか分からないがやめてほしい。
まあ、そうにいってもすぐには治らない気がするが・・・・・・・。
そこが前野のいいところでもあり、子供っぽいところでもあり、可愛らしいところである。
まあ、同い年の男を可愛らしい呼ばわりしたら絶対に変な目で見られるには決まっているだろうが・・・・。
「せっかく人が前野のお見舞いにきたっていうのにいろいろ遊んでるし、まったく・・・・。まあ、前野らしいっちゃ前野らしくて安心したけどさ。」
「悪い。」
と言って全然悪そうに思っている感じがしないのは俺だけだろうか。
相変わらず前野は笑っているままだった。
「とにかく、ベッドに入って安静にしてなさい。飲み物くらい俺買ってくるし。」
「おう、悪いな。次からじゃあ頼みますか。」
「おう。」
前野はベッドに素直に入った。そのまま安静してくれればいいのだが。
俺は本題に入るべく、前野が落ち着くのをしばらく待った。
それを前野は察したのだろう。俺が思ったよりも早く落ち着いてくれた。
俺が尋ねようと思って口を開きかけた瞬間に前野が話しかけてきた。
「実はな、前から言おう言おうと思っていたんだけどなかなか日暮に言い出せずにいたんだ。
こういう話って人に簡単にするものじゃないし、俺だけの問題じゃないんだ。
でも、状況がここまできたらもう話そうと思ったし佐藤のことやまだ会ってまもない俺とも仲良くなってくれて想ってくれたから話したいって思ったんだ。
だから、聞いてくれるか。」
俺は速攻で答えた。
「当たり前だろ。そのために来たんだからな。」
そして俺は過去から現在の前野と佐藤の関係について知ることになった。
本当に今日は前野の検査がなくてよかった。
もしあったら、話すことなんてできなかっただろう。
時間なんかいくらあっても足りないくらいだった。
そして、前野の入院してるところは周りに人がいない状態だったので周りも人がいなくて助かった。
人が聞く話でもないからだ。
前野は話を一通りおえると、なんとも言えない表情をしていた。
俺はそれを聞いてなんと言っていいか分からなかった。
ただ話を聞いて一つだけ言えることがあるとしたらこれは前野でも佐藤でもどちらのせいでもないということだった。
前野はこの話を言いながら自分が今思ってくれていることも話してくれた。
それは佐藤に対するこれまでの気持ちだった。
前野はずっと後悔して自分を責め続けていたことを俺は知った。
なんで前野はずっと自分を攻め続けているんだろう。
でももし、俺が前野の立場だとしたら俺も自分を責め続けていたのだろうと想像ができた。
でも、今俺に言えることは、
「それは前野でも佐藤のせいでもない。だから自分を責めるな。」
と言えることだけだった。それを聞いて前野は、顔を上げた。
顔を上げた前野の顔はでもとでも言いたげな顔だった。
それはそうだろう。今まで自分をずっと攻め続けていたんだから・・・
子供の頃だろうと大人だろうと関係ないという考えが前野の考えだった。
でもその考えは何も変えられない。いい方向には進んでいかない。
きっと佐藤もいろいろと考えていて、それで今前野と絶対にすれ違っている。
それを俺は変えたい。変えなきゃいけないんだ。これからの為に。
その為に俺は言った。一番前野にとって怖いことを。
「話そう。佐藤と。全部。きっと佐藤も心のどこかで分かってるよ。一度ちゃんとお前と話さなきゃって。」
その言葉を吐いた瞬間、前野は一度深呼吸をしてこの時がきたかというような神妙な面持ちをしていた。
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