38 / 65
異変
しおりを挟む
「何だ……」
馬から降りた騎士団員たちは、周囲をぐるりと見渡す。
アルウィン、セルジュ、シオン、ラケル、そしてフローリアと新人団員三人が、森の中ほどで慎重に進んでいる。
「おかしいな……こんなにも異様な雰囲気ではなかったぞ……」
「閣下、何か振り撒きました?」
「撒くかアホ」
べん、と遠慮なくラケルを殴ったシオンは、以前とは全く異なっていることに怪訝そうな顔をしている。
「あの……以前は、と仰いましたが、前はこうではなかった、と……?」
「その通りだ」
フローリアの問いかけに頷くシオンは、腰にある剣の柄に手をかけている。
シオンがここまで警戒するとは、とアルウィンもセルジュも警戒態勢に入ったが、一体何がそんなに危ないのだろうか、と新人たちはきょとんとしている。フローリアを除いて。
「何が危ないんだろうな?」
「気配がおかしい、とは思うけど……」
そんなに警戒するほどか、と誰かが呟く。
シオンが前回様子を見に来たときは、こんなにも禍々しい気配ではなかった、らしい。
いるとしてもせいぜいBランクの魔物だろうから、フローリアの実力確認も兼ねつつ新人の力量判断にちょうどいいと思った、という話をアルウィンとセルジュは聞いていたのだ。だからこそ、この気配はおかしい。
まるでお目当ての魔獣ではなく、他の何か得体のしれないものが屯している、そんな気配なのだ。
「一応……」
気休め程度ですが、と前置きしてフローリアはぱっと魔法陣を展開し、防御術式を発動させた。
「これは……」
「簡易的ですが、攻撃から一度、守ってくれます。耐久力がありませんので、一度きりとお考え下さいませ」
「すっげ……」
いとも簡単に、この場の全員分のシールドを展開させるなど、並大抵ではない。
「(……困ったわね)」
緊張を保たなければいけないのに、顔がニヤつきそうになるのをシオンは必死におさえこんだ。
あまりに鮮やかな魔法の術式、無駄のない魔力展開、そして全員の防御には厚みにムラ一つなく丁寧な作りなのだから、すごい、としか言いようがない。
「お嬢様、また魔法うまくなりました?」
「そうだと良いのですが……」
「うちの子がうまくないわけないだろう」
フローリアではなくアルウィンがどや顔を披露しているが、セルジュからの『団長のことじゃないでしょ、何誇らしげにしてんですか』という鋭いツッコミに、フローリアは思わず笑ってしまう。
ほ、と安堵の息を吐いた、瞬間。
――ギャアアアオオオアアアアアアア!!
「何だ!?」
魔獣の咆哮が聞こえ、全員が武器を構える。
フローリアもアルウィンも、自身の魔装具を一番使い慣れている形態に変化させた。フローリアは鞭形態へと変化する片手剣へ、アルウィンは大剣へ。
決して油断してはいけないのだ、と各々言い聞かせるが、新人は足が震えているようだった。しかし、助けてくれる人はいない。自分のことは自分で、というシオンの言葉がここに来て重くのしかかっていた。
来なければ良かった、と後悔しても遅い。
「どこから来る……?」
アルウィンの声が、やたらと大きく聞こえるような気がした。いつの間にか、鳥の声さえも聞こえなくなっているのか、と気付いたその時。
「よけろ!」
ラケルの号令と共に、各々の判断でばっと飛び避ける。
元いた地面はえぐれ、爆音と共に土煙がもうもうと上がるが今まさに気が抜けない状況。シオンとアルウィン、同時に風魔法で土煙を吹き飛ばしてみれば、巨大な魔物が涎を垂らしながらそこに、居た。
「……あれ、は」
「普通に発生する魔獣じゃない!マズいぞ!」
呆然とするニックの首元をフローリアが掴み、筋力強化をすると同時にぐい、と引っ張った。
「うげ!」
「すみません、緊急回避させますわね!」
言いながらニックの体は少しだけ遠くに吹き飛ばされるが、ニックのいた場所を魔獣の鋭い爪がえぐったのを見て、心の底からフローリアに感謝をする。
「助かった!」
「気を抜かないでくださいませ! 死にますわ!」
アルウィンやシオンが我先にと魔獣に突撃していき、フローリアたちの方に攻撃がいかないようにとヘイトを買ってくれているのだが、いつまでもつのか。
「短期決戦……? でも……それをやるにしても」
ちらり、と視線を動かした先。鋭い爪を確認してからフローリアは器用に風魔法を使って飛び、セルジュの隣にひょいと現れる。
「もしもしセルジュ様」
「おうわああああああああああ!! びっくりしたあああ!!」
「あれの爪、ちょっと破壊するのでお手伝い願えます?」
「へ?」
「サポートお願いいたしますわね!」
「お嬢様ーー!?」
ちなみに二人が会話をしていたのはほんの数秒、かつフローリアはとんでもなく風魔法を器用に駆使して、空中飛行しているような状態。
言い終わると同時に、フローリアが魔獣に向かい一気に空中にいるまま加速した。
「ちょっと……って、ああもう、団長そっくりなんだからー!!」
サポートとして何をするか、何をすればあの鋭利な爪をどうにかできるのか。
魔獣が一瞬だけ動きを止めれば、きっとフローリアならやってくれる。そんな確信が出る樹にはあった。だったら取る方法は一つ。
「公爵閣下、団長、一瞬そいつの動きを止めますが、頭下げて!!」
「は!?」
「何言って……」
言い終わるが早いか、セルジュが魔獣の足止めをしようと、氷結魔法を魔獣の足元で展開する。
「凍てつけ!!」
「グオルアアアアアアアア!!」
魔獣の膝あたりまで凍結するが、すぐに氷が破壊されてしまう。それまでのほんの数秒しかなかったが、ひゅう、と風を切る音にシオンもアルウィンも、ラケルも意味をすぐに理解した。
「大人しくなさいませ!」
フローリアの声が聞こえるか早いか、彼女の剣鞭が風を切って的確に魔獣の手元に炸裂する。勢いだけでは無理と感じ、接触する瞬間に剣の強度を極度まで高める。
爪を割ればまず一つ攻撃手段が削れるから、とフローリアは判断した。その判断のもと、まるでガラスが割れるような音と共に、魔獣の爪が破壊された。左から右へ、剣鞭をしならせることで破壊は出来たが魔獣そのものは生きている。
そして、うっかり気付いてしまったシオンが叫んだ。
「アルウィン、今フローリア嬢が落とした爪採取すんだから、うっかり割ったらアンタをアタシが殺すからね!!」
「やかましいわクソ公爵! 知らん!」
「…………え?」
後方で何もできず呆然としていたニック、そして他の新人が、素っ頓狂な声を上げる。
「……今、何か……」
フローリアもきょとんとしているのだが、爪の振り回し攻撃がなくなればこちらのものと言わんばかりに、魔獣を最強格二人かかりで腕をもぎ、胴体に氷魔法を炸裂させて穴をぶちあけ、土魔法を展開し槍のようなもので魔獣の顎から頭にかけてを思いきり貫いた。
「っしゃあ!」
「頭潰してんじゃないわよ筋肉ゴリラ!!」
「こうしないとフローリアたちに当たって怪我でもしたらどうするんですか!! アホ公爵!!」
「は!? アンタ不敬罪でひっとらえるわよ!!」
「やれるもんならやってみろや!!」
めっちゃ言い合いをしている二人を、新人は呆然と、フローリアはきょとんとして見ている。
そこにセルジュがひょっこりとやって来た。
「お嬢様、部位破壊お上手になりましたねぇ」
「あのぉ……セルジュ様。あれって……」
「団長と公爵閣下の名物的なやりとりです」
あっはっは、と笑っているセルジュだが、あえて面白いのでアルウィンのところに報告に行っていない。だってその方が面白そうだから。
「放っておいて良いのですか……?さすがにお父様のあれは不敬では……」
「良いんですよ、公爵閣下も許可してますし。まぁでも、そろそろやめてもらいましょうかね。お二方~、若人が困惑してますよ~」
セルジュののほほんとした声に、結構距離が離れたところにいた二人の言い争いがぴた、と止まる。
「……」
そして、ぎぎぎ、と音が聞こえてきそうなくらいゆっくりと、アルウィンとシオンが振り返った。
「お父様……さすがに閣下に失礼かな、って……」
「あと公爵閣下の、その、言葉遣い、が」
ニックはきっと、『口に気を付けろ』と親や友人に言われているに違いない。うっかりぽろっと、『閣下が、オネェ……?』と呟いてしまったのだ。
「そこのお前、記憶を無くすか手足もがれて退職金たっぷりで騎士団退職するか、選べ」
シオンの口調も雰囲気も一変し、愛用の剣を構える。剣には先ほどの魔獣の血がべっとりなので、破壊力抜群だ。
「あのぉ……」
はい、とフローリアが挙手をすると、アルウィンが乗ってくれて『はいフローリア』と指名する。
「手足をもぐのは、違反といいますか……犯罪になっちゃいますし……」
「そっち!?」
「ニック様、こうなったらちょっとわたくし頭を殴りますので記憶を吹き飛ばしてはいかがですか?」
とんでもねぇ提案してる……とラケルが呟いたが、シオンはフローリアの言葉を聞いて爆笑している。
「あっははははは!!」
「フローリア……お父さん、さすがにその意見はどうかと思う……」
「え、でも……ねぇ?」
「こっち見ないでください。あとシェリアスルーツ令嬢、拳握らないでください」
さっきまで生きるか死ぬか、だったのにも関わらず、こののんびり具合。
役に立つどころか怯えているだけだった新人たちは、フローリアの強さもさることながら、アルウィンやシオンの強さに、呆然とすることしかできなかった。
オマケでシオンの口調など諸々を知ってしまったが故に、この後全員シオンに詰め寄られることとなるのであった。
馬から降りた騎士団員たちは、周囲をぐるりと見渡す。
アルウィン、セルジュ、シオン、ラケル、そしてフローリアと新人団員三人が、森の中ほどで慎重に進んでいる。
「おかしいな……こんなにも異様な雰囲気ではなかったぞ……」
「閣下、何か振り撒きました?」
「撒くかアホ」
べん、と遠慮なくラケルを殴ったシオンは、以前とは全く異なっていることに怪訝そうな顔をしている。
「あの……以前は、と仰いましたが、前はこうではなかった、と……?」
「その通りだ」
フローリアの問いかけに頷くシオンは、腰にある剣の柄に手をかけている。
シオンがここまで警戒するとは、とアルウィンもセルジュも警戒態勢に入ったが、一体何がそんなに危ないのだろうか、と新人たちはきょとんとしている。フローリアを除いて。
「何が危ないんだろうな?」
「気配がおかしい、とは思うけど……」
そんなに警戒するほどか、と誰かが呟く。
シオンが前回様子を見に来たときは、こんなにも禍々しい気配ではなかった、らしい。
いるとしてもせいぜいBランクの魔物だろうから、フローリアの実力確認も兼ねつつ新人の力量判断にちょうどいいと思った、という話をアルウィンとセルジュは聞いていたのだ。だからこそ、この気配はおかしい。
まるでお目当ての魔獣ではなく、他の何か得体のしれないものが屯している、そんな気配なのだ。
「一応……」
気休め程度ですが、と前置きしてフローリアはぱっと魔法陣を展開し、防御術式を発動させた。
「これは……」
「簡易的ですが、攻撃から一度、守ってくれます。耐久力がありませんので、一度きりとお考え下さいませ」
「すっげ……」
いとも簡単に、この場の全員分のシールドを展開させるなど、並大抵ではない。
「(……困ったわね)」
緊張を保たなければいけないのに、顔がニヤつきそうになるのをシオンは必死におさえこんだ。
あまりに鮮やかな魔法の術式、無駄のない魔力展開、そして全員の防御には厚みにムラ一つなく丁寧な作りなのだから、すごい、としか言いようがない。
「お嬢様、また魔法うまくなりました?」
「そうだと良いのですが……」
「うちの子がうまくないわけないだろう」
フローリアではなくアルウィンがどや顔を披露しているが、セルジュからの『団長のことじゃないでしょ、何誇らしげにしてんですか』という鋭いツッコミに、フローリアは思わず笑ってしまう。
ほ、と安堵の息を吐いた、瞬間。
――ギャアアアオオオアアアアアアア!!
「何だ!?」
魔獣の咆哮が聞こえ、全員が武器を構える。
フローリアもアルウィンも、自身の魔装具を一番使い慣れている形態に変化させた。フローリアは鞭形態へと変化する片手剣へ、アルウィンは大剣へ。
決して油断してはいけないのだ、と各々言い聞かせるが、新人は足が震えているようだった。しかし、助けてくれる人はいない。自分のことは自分で、というシオンの言葉がここに来て重くのしかかっていた。
来なければ良かった、と後悔しても遅い。
「どこから来る……?」
アルウィンの声が、やたらと大きく聞こえるような気がした。いつの間にか、鳥の声さえも聞こえなくなっているのか、と気付いたその時。
「よけろ!」
ラケルの号令と共に、各々の判断でばっと飛び避ける。
元いた地面はえぐれ、爆音と共に土煙がもうもうと上がるが今まさに気が抜けない状況。シオンとアルウィン、同時に風魔法で土煙を吹き飛ばしてみれば、巨大な魔物が涎を垂らしながらそこに、居た。
「……あれ、は」
「普通に発生する魔獣じゃない!マズいぞ!」
呆然とするニックの首元をフローリアが掴み、筋力強化をすると同時にぐい、と引っ張った。
「うげ!」
「すみません、緊急回避させますわね!」
言いながらニックの体は少しだけ遠くに吹き飛ばされるが、ニックのいた場所を魔獣の鋭い爪がえぐったのを見て、心の底からフローリアに感謝をする。
「助かった!」
「気を抜かないでくださいませ! 死にますわ!」
アルウィンやシオンが我先にと魔獣に突撃していき、フローリアたちの方に攻撃がいかないようにとヘイトを買ってくれているのだが、いつまでもつのか。
「短期決戦……? でも……それをやるにしても」
ちらり、と視線を動かした先。鋭い爪を確認してからフローリアは器用に風魔法を使って飛び、セルジュの隣にひょいと現れる。
「もしもしセルジュ様」
「おうわああああああああああ!! びっくりしたあああ!!」
「あれの爪、ちょっと破壊するのでお手伝い願えます?」
「へ?」
「サポートお願いいたしますわね!」
「お嬢様ーー!?」
ちなみに二人が会話をしていたのはほんの数秒、かつフローリアはとんでもなく風魔法を器用に駆使して、空中飛行しているような状態。
言い終わると同時に、フローリアが魔獣に向かい一気に空中にいるまま加速した。
「ちょっと……って、ああもう、団長そっくりなんだからー!!」
サポートとして何をするか、何をすればあの鋭利な爪をどうにかできるのか。
魔獣が一瞬だけ動きを止めれば、きっとフローリアならやってくれる。そんな確信が出る樹にはあった。だったら取る方法は一つ。
「公爵閣下、団長、一瞬そいつの動きを止めますが、頭下げて!!」
「は!?」
「何言って……」
言い終わるが早いか、セルジュが魔獣の足止めをしようと、氷結魔法を魔獣の足元で展開する。
「凍てつけ!!」
「グオルアアアアアアアア!!」
魔獣の膝あたりまで凍結するが、すぐに氷が破壊されてしまう。それまでのほんの数秒しかなかったが、ひゅう、と風を切る音にシオンもアルウィンも、ラケルも意味をすぐに理解した。
「大人しくなさいませ!」
フローリアの声が聞こえるか早いか、彼女の剣鞭が風を切って的確に魔獣の手元に炸裂する。勢いだけでは無理と感じ、接触する瞬間に剣の強度を極度まで高める。
爪を割ればまず一つ攻撃手段が削れるから、とフローリアは判断した。その判断のもと、まるでガラスが割れるような音と共に、魔獣の爪が破壊された。左から右へ、剣鞭をしならせることで破壊は出来たが魔獣そのものは生きている。
そして、うっかり気付いてしまったシオンが叫んだ。
「アルウィン、今フローリア嬢が落とした爪採取すんだから、うっかり割ったらアンタをアタシが殺すからね!!」
「やかましいわクソ公爵! 知らん!」
「…………え?」
後方で何もできず呆然としていたニック、そして他の新人が、素っ頓狂な声を上げる。
「……今、何か……」
フローリアもきょとんとしているのだが、爪の振り回し攻撃がなくなればこちらのものと言わんばかりに、魔獣を最強格二人かかりで腕をもぎ、胴体に氷魔法を炸裂させて穴をぶちあけ、土魔法を展開し槍のようなもので魔獣の顎から頭にかけてを思いきり貫いた。
「っしゃあ!」
「頭潰してんじゃないわよ筋肉ゴリラ!!」
「こうしないとフローリアたちに当たって怪我でもしたらどうするんですか!! アホ公爵!!」
「は!? アンタ不敬罪でひっとらえるわよ!!」
「やれるもんならやってみろや!!」
めっちゃ言い合いをしている二人を、新人は呆然と、フローリアはきょとんとして見ている。
そこにセルジュがひょっこりとやって来た。
「お嬢様、部位破壊お上手になりましたねぇ」
「あのぉ……セルジュ様。あれって……」
「団長と公爵閣下の名物的なやりとりです」
あっはっは、と笑っているセルジュだが、あえて面白いのでアルウィンのところに報告に行っていない。だってその方が面白そうだから。
「放っておいて良いのですか……?さすがにお父様のあれは不敬では……」
「良いんですよ、公爵閣下も許可してますし。まぁでも、そろそろやめてもらいましょうかね。お二方~、若人が困惑してますよ~」
セルジュののほほんとした声に、結構距離が離れたところにいた二人の言い争いがぴた、と止まる。
「……」
そして、ぎぎぎ、と音が聞こえてきそうなくらいゆっくりと、アルウィンとシオンが振り返った。
「お父様……さすがに閣下に失礼かな、って……」
「あと公爵閣下の、その、言葉遣い、が」
ニックはきっと、『口に気を付けろ』と親や友人に言われているに違いない。うっかりぽろっと、『閣下が、オネェ……?』と呟いてしまったのだ。
「そこのお前、記憶を無くすか手足もがれて退職金たっぷりで騎士団退職するか、選べ」
シオンの口調も雰囲気も一変し、愛用の剣を構える。剣には先ほどの魔獣の血がべっとりなので、破壊力抜群だ。
「あのぉ……」
はい、とフローリアが挙手をすると、アルウィンが乗ってくれて『はいフローリア』と指名する。
「手足をもぐのは、違反といいますか……犯罪になっちゃいますし……」
「そっち!?」
「ニック様、こうなったらちょっとわたくし頭を殴りますので記憶を吹き飛ばしてはいかがですか?」
とんでもねぇ提案してる……とラケルが呟いたが、シオンはフローリアの言葉を聞いて爆笑している。
「あっははははは!!」
「フローリア……お父さん、さすがにその意見はどうかと思う……」
「え、でも……ねぇ?」
「こっち見ないでください。あとシェリアスルーツ令嬢、拳握らないでください」
さっきまで生きるか死ぬか、だったのにも関わらず、こののんびり具合。
役に立つどころか怯えているだけだった新人たちは、フローリアの強さもさることながら、アルウィンやシオンの強さに、呆然とすることしかできなかった。
オマケでシオンの口調など諸々を知ってしまったが故に、この後全員シオンに詰め寄られることとなるのであった。
1,421
お気に入りに追加
3,143
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる