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訓練開始…?
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「さぁ、参りましょう」
うっきうきで用意をしたフローリアが向かったのは王立騎士団の訓練場。
最近、新人が入団したとかで、その人たちの紹介と併せてフローリアのことも紹介してくれるとのことだ。
王太子妃教育の帰りや、父への差し入れを持ってきたときに顔を出しているから、新人以外とはある程度交流があるが、今は新人団員。
支給された制服を身に纏い、髪も一つにきっちりと纏めている。
制服といっても、シンプルな白シャツに動きやすいカーゴパンツのようなズボン、膝下までの黒のブーツ、というかなり簡素なもの。
ジャケットを着用しているのは所謂上官に当たる人たちばかりだ。
「全員、整列!」
定刻となり、副団長であるセルジュの号令とともにざっと整列をした。
一番前に新人が、後ろに入団歴順に並んでいる。
「まずは新人の紹介を行う。一人ずつ、簡潔にで良いので自己紹介をしていけ」
「はい!!」
声を揃えて、新人たちが一人ずつ自己紹介をしていく。
彼らの眼差しは真剣そのものだったが、フローリアが前に出て自己紹介を始めた瞬間にぴりりとひりついたものに変化した。
「(あーあ…)」
こっそり、セルジュは苦笑いを浮かべる。
それは他の団員たちもそうだった。
「フローリア・レネ・シェリアスルーツと申します。訓練に置いていかれないよう、全力で努めてまいります」
ぺこり、と頭を下げたフローリアに対して、トップの成績で入団した!と自己紹介をした団員がニヤついた顔で手を挙げた。
「シェリアスルーツ家のお嬢様が、騎士団に何の御用ですかぁ~?」
ぷぷ、と彼の周りで笑いが零れるが、フローリアは涼しい顔をしている。
特に反応を示さないことが彼、ニックのイラつきを更に加速させたようだった。
「無試験で入団とか舐めんじゃねぇぞ!」
「国王陛下がお認めになったことでも、でしょうか」
「当たり前だろうが!アホかお前!」
「では」
待っていました、と言わんばかりにフローリアは提案をした。
「今お笑いになった方々、皆様と手合わせでもしてみれば良いでしょうか?」
「……てめぇ、本気で舐めてんのか……?」
びき、とニックの額に青筋が浮かび上がり、他の新人団員もイラついたようにじり、とフローリアを取り囲んだ。
「あーあ」
「副団長、止めないんです?」
「女性が入ったら大体こうだ、やめとけ。…それに今回ばかりは新人が馬鹿揃いってのがよーーーっく分かるし、フローリア様の立ち回りは参考にしかならん」
セルジュとほかの団員が話している間に、フローリアは三人の男性団員に睨みつけられていた。他にも周りにはいるが、一触即発なのはどうやらこれくらいらしい。
女性が騎士団に入団すると、一定の割合で『どうせ色仕掛けだろう』『家の力か』『親の七光りで入りやがって』とイチャモンをつける人がいる。
ここで引いては何のための入団なのか分からないから、最初に喧嘩をふっかけて来た方をぶちのめすくらいやってみろ、ということは暗黙の了解。
あまりに酷いようなら、上司がすぐさま助けに入る。
「おい、せめてハンデやろうぜハンデ」
「だなー!」
ゲラゲラと笑う三人を見るセルジュだが、今年はやけに酷い。こんなにも品のない人間を誰が採用したのだろうか、と思うくらいには言葉遣いも含めて全てが酷い。
「まぁ、どのようなハンデをいただけるので?」
「一発、好きに殴れ」
にた、とニックが笑って言うと三人それぞれが頷いた。
フローリアは特に様子を崩すこともなく、うーん、と呟いてからもう一度問いかける。
「御三方、それぞれに一発、ですか?」
「そう言ってんだよ。人の話理解してねぇのか?」
「あまりに抽象的でしたので。失礼いたしました」
のほほんとしたフローリアの言動に、三人とも苛立ちを膨れあがらせるが、あともう少ししたらフローリアをぼこぼこに殴って土下座させてやろう。そんな思いしかなかった。
三人が敵に回したのは、恐らく一番敵に回してはいけない人なのに。
「順番も、好きにして良いのですよね?」
「はいはーい、どうぞお嬢様のお好きに~」
「では」
にこ、と改めて笑ったフローリアはニックの左に居た団員の股間を容赦なく思いきり、しかもつま先がそこにヒットするように振り上げ、蹴り上げたのだ。
「~~~?!?!?!」
ひゅ、と。
息が詰まったような、何かむせたような、よく分からない空気が漏れたような、不思議な音がした。
どうにか痛みを逃そうと蹴り上げられた彼は、しゃがんで股間を押さえた状態で蹲り、ふるふる、かたかたと震えている。
「へ……?」
ニックも、もう一人もぽかんと蹲っている彼を見て、フローリアを見ようとした瞬間、ひゅ、と空を切る気配を感じた。
本能的に動いてはならないと思い、動かないようにぴたりと静止した刹那のこと。
──ゴッ。
鈍い音がして、蹲っている彼の後頭部へと踵落としが炸裂した。
「……ぐぇ」
「え……?」
奇妙な声が彼から零れ、そのままへにょりと崩れ落ちていく。
そうだ、一撃を食らわせていいと言ったから。
女だから、男の急所を狙ったんだ。
きっと…そう、彼女は侯爵家令嬢として護身術を習っていただろうから、あんなことが可能だったんだ。
残り二人は自分たちに言い聞かせながら、じり、とフローリアから距離を取ったのだが、一連の流れを見ていた先輩たちは皆揃って股間を押さえている。
「いてぇ……」
「あれは…地獄だ…」
「ああやればいいのね、なるほど」
「そうよね、急所はね、うん」
男性騎士と女性騎士、双方反応はバラバラだが、男性騎士たちは己の股間を教えている。なお、女性騎士は揃って『次からやろう』とフローリアに対して賞賛を送っているのだが、トドメを刺されたお馬鹿さんは状態としてはある意味虫の息。
「い、一発って言ったけど男の急所を狙う馬鹿がいるか!」
「制限をかけなかったのはそちらですわよ?」
ごもっともな指摘に周囲はうんうん、と頷いている。嫌なら最初から場所を限定しておけば良かっただけの話だ。
フローリアが股間を狙わないと思い込み、決めつけた彼らの方が馬鹿だったというだけのこと。
「なら、次は顔だけにしろ!いいな!」
「かしこまりました」
微笑んだフローリアの背後に、もう一人が回る。
なるほど挟み撃ちか、とフローリアは思うがとりあえず目の前にいるニックにひたりと向き直った。
「いつでもいいからな、さ」
言い終わる前に、フローリアはぐっと腰を落として下から顔の中心、ちょうど鼻あたりを目掛けて勢いよく拳を繰り出した。
「あぎゃっ!」
令嬢の顔への一撃を、ビンタだけと侮るなかれ、とはこれだろう。
フローリアも、『平手でいきます』なんて言っていない。拳が禁止だとも言われていないし、どこに一発入れるか、も宣言しろ、だなんて言われていない。
なので、遠慮なく顔面のど真ん中に拳を叩き込んだ、というわけだ。
「お前…っ!」
フローリアが更に追撃しようと反対の手で拳を握って振りかぶって、さぁ今から、というところで背後にいた新人がフローリアの揺れる髪をぐっと掴んだ。
「……」
きゃあ、とか悲鳴が上がることを想像していた彼は、あれ?と首を傾げたが、すぐに髪を掴んでいたはずの手応えも何も、無くなった。
「は?!」
背後を振り返りもせず、フローリアは髪を結んでいた根元に風の刃を出現させて、ざっくり切り落としたのだ。
「いやいやいや!!」
「掴まれたままでは、動きづらいでしょう?」
ニックに対してアッパーカットを繰り出し、的確に当てて仰け反ったのを見てからフローリアはくるりと体の向きを変え、勢いそのままに回し蹴りを脇腹へと叩き込んだ。
「が、っ…」
「あ、一発入れないままにやってしまいましたわね。まぁ…」
いいか、と呟きながらよろけた彼に対し、こめかみに肘を打ち込んで、とさりと卒倒させた。
「……こんなもんでしょうか」
流れるように三人の男性を叩きのめしたフローリアだが、セルジュはそんなことよりもフローリアの短くなった髪に、冷や汗がどばどばと流れていくのを感じていた。
「(殺される)」
娘馬鹿なアルウィンのことだ、これはまずい。治癒能力か何かを持っている団員に髪の長さをどうにか元通りにさせねば!と焦っていたら、セルジュの方をがち、と掴む手があった。
「………………」
「ようセルジュ、うちの可愛い可愛いフローリアの髪が短くなった理由をお聞かせ願おうか」
ドスの効いた低音。
今、一番聞きたくなかったであろう人の声。
「あら、お父様。今は団長、とお呼びするべきでしょうか」
セルジュの心のうちは知らず、フローリアはにこにこと短くなった髪のまま父親のアルウィンに対してひらひらと手を振っている。
別の意味での修羅場が今から、始まろうとしていた。
うっきうきで用意をしたフローリアが向かったのは王立騎士団の訓練場。
最近、新人が入団したとかで、その人たちの紹介と併せてフローリアのことも紹介してくれるとのことだ。
王太子妃教育の帰りや、父への差し入れを持ってきたときに顔を出しているから、新人以外とはある程度交流があるが、今は新人団員。
支給された制服を身に纏い、髪も一つにきっちりと纏めている。
制服といっても、シンプルな白シャツに動きやすいカーゴパンツのようなズボン、膝下までの黒のブーツ、というかなり簡素なもの。
ジャケットを着用しているのは所謂上官に当たる人たちばかりだ。
「全員、整列!」
定刻となり、副団長であるセルジュの号令とともにざっと整列をした。
一番前に新人が、後ろに入団歴順に並んでいる。
「まずは新人の紹介を行う。一人ずつ、簡潔にで良いので自己紹介をしていけ」
「はい!!」
声を揃えて、新人たちが一人ずつ自己紹介をしていく。
彼らの眼差しは真剣そのものだったが、フローリアが前に出て自己紹介を始めた瞬間にぴりりとひりついたものに変化した。
「(あーあ…)」
こっそり、セルジュは苦笑いを浮かべる。
それは他の団員たちもそうだった。
「フローリア・レネ・シェリアスルーツと申します。訓練に置いていかれないよう、全力で努めてまいります」
ぺこり、と頭を下げたフローリアに対して、トップの成績で入団した!と自己紹介をした団員がニヤついた顔で手を挙げた。
「シェリアスルーツ家のお嬢様が、騎士団に何の御用ですかぁ~?」
ぷぷ、と彼の周りで笑いが零れるが、フローリアは涼しい顔をしている。
特に反応を示さないことが彼、ニックのイラつきを更に加速させたようだった。
「無試験で入団とか舐めんじゃねぇぞ!」
「国王陛下がお認めになったことでも、でしょうか」
「当たり前だろうが!アホかお前!」
「では」
待っていました、と言わんばかりにフローリアは提案をした。
「今お笑いになった方々、皆様と手合わせでもしてみれば良いでしょうか?」
「……てめぇ、本気で舐めてんのか……?」
びき、とニックの額に青筋が浮かび上がり、他の新人団員もイラついたようにじり、とフローリアを取り囲んだ。
「あーあ」
「副団長、止めないんです?」
「女性が入ったら大体こうだ、やめとけ。…それに今回ばかりは新人が馬鹿揃いってのがよーーーっく分かるし、フローリア様の立ち回りは参考にしかならん」
セルジュとほかの団員が話している間に、フローリアは三人の男性団員に睨みつけられていた。他にも周りにはいるが、一触即発なのはどうやらこれくらいらしい。
女性が騎士団に入団すると、一定の割合で『どうせ色仕掛けだろう』『家の力か』『親の七光りで入りやがって』とイチャモンをつける人がいる。
ここで引いては何のための入団なのか分からないから、最初に喧嘩をふっかけて来た方をぶちのめすくらいやってみろ、ということは暗黙の了解。
あまりに酷いようなら、上司がすぐさま助けに入る。
「おい、せめてハンデやろうぜハンデ」
「だなー!」
ゲラゲラと笑う三人を見るセルジュだが、今年はやけに酷い。こんなにも品のない人間を誰が採用したのだろうか、と思うくらいには言葉遣いも含めて全てが酷い。
「まぁ、どのようなハンデをいただけるので?」
「一発、好きに殴れ」
にた、とニックが笑って言うと三人それぞれが頷いた。
フローリアは特に様子を崩すこともなく、うーん、と呟いてからもう一度問いかける。
「御三方、それぞれに一発、ですか?」
「そう言ってんだよ。人の話理解してねぇのか?」
「あまりに抽象的でしたので。失礼いたしました」
のほほんとしたフローリアの言動に、三人とも苛立ちを膨れあがらせるが、あともう少ししたらフローリアをぼこぼこに殴って土下座させてやろう。そんな思いしかなかった。
三人が敵に回したのは、恐らく一番敵に回してはいけない人なのに。
「順番も、好きにして良いのですよね?」
「はいはーい、どうぞお嬢様のお好きに~」
「では」
にこ、と改めて笑ったフローリアはニックの左に居た団員の股間を容赦なく思いきり、しかもつま先がそこにヒットするように振り上げ、蹴り上げたのだ。
「~~~?!?!?!」
ひゅ、と。
息が詰まったような、何かむせたような、よく分からない空気が漏れたような、不思議な音がした。
どうにか痛みを逃そうと蹴り上げられた彼は、しゃがんで股間を押さえた状態で蹲り、ふるふる、かたかたと震えている。
「へ……?」
ニックも、もう一人もぽかんと蹲っている彼を見て、フローリアを見ようとした瞬間、ひゅ、と空を切る気配を感じた。
本能的に動いてはならないと思い、動かないようにぴたりと静止した刹那のこと。
──ゴッ。
鈍い音がして、蹲っている彼の後頭部へと踵落としが炸裂した。
「……ぐぇ」
「え……?」
奇妙な声が彼から零れ、そのままへにょりと崩れ落ちていく。
そうだ、一撃を食らわせていいと言ったから。
女だから、男の急所を狙ったんだ。
きっと…そう、彼女は侯爵家令嬢として護身術を習っていただろうから、あんなことが可能だったんだ。
残り二人は自分たちに言い聞かせながら、じり、とフローリアから距離を取ったのだが、一連の流れを見ていた先輩たちは皆揃って股間を押さえている。
「いてぇ……」
「あれは…地獄だ…」
「ああやればいいのね、なるほど」
「そうよね、急所はね、うん」
男性騎士と女性騎士、双方反応はバラバラだが、男性騎士たちは己の股間を教えている。なお、女性騎士は揃って『次からやろう』とフローリアに対して賞賛を送っているのだが、トドメを刺されたお馬鹿さんは状態としてはある意味虫の息。
「い、一発って言ったけど男の急所を狙う馬鹿がいるか!」
「制限をかけなかったのはそちらですわよ?」
ごもっともな指摘に周囲はうんうん、と頷いている。嫌なら最初から場所を限定しておけば良かっただけの話だ。
フローリアが股間を狙わないと思い込み、決めつけた彼らの方が馬鹿だったというだけのこと。
「なら、次は顔だけにしろ!いいな!」
「かしこまりました」
微笑んだフローリアの背後に、もう一人が回る。
なるほど挟み撃ちか、とフローリアは思うがとりあえず目の前にいるニックにひたりと向き直った。
「いつでもいいからな、さ」
言い終わる前に、フローリアはぐっと腰を落として下から顔の中心、ちょうど鼻あたりを目掛けて勢いよく拳を繰り出した。
「あぎゃっ!」
令嬢の顔への一撃を、ビンタだけと侮るなかれ、とはこれだろう。
フローリアも、『平手でいきます』なんて言っていない。拳が禁止だとも言われていないし、どこに一発入れるか、も宣言しろ、だなんて言われていない。
なので、遠慮なく顔面のど真ん中に拳を叩き込んだ、というわけだ。
「お前…っ!」
フローリアが更に追撃しようと反対の手で拳を握って振りかぶって、さぁ今から、というところで背後にいた新人がフローリアの揺れる髪をぐっと掴んだ。
「……」
きゃあ、とか悲鳴が上がることを想像していた彼は、あれ?と首を傾げたが、すぐに髪を掴んでいたはずの手応えも何も、無くなった。
「は?!」
背後を振り返りもせず、フローリアは髪を結んでいた根元に風の刃を出現させて、ざっくり切り落としたのだ。
「いやいやいや!!」
「掴まれたままでは、動きづらいでしょう?」
ニックに対してアッパーカットを繰り出し、的確に当てて仰け反ったのを見てからフローリアはくるりと体の向きを変え、勢いそのままに回し蹴りを脇腹へと叩き込んだ。
「が、っ…」
「あ、一発入れないままにやってしまいましたわね。まぁ…」
いいか、と呟きながらよろけた彼に対し、こめかみに肘を打ち込んで、とさりと卒倒させた。
「……こんなもんでしょうか」
流れるように三人の男性を叩きのめしたフローリアだが、セルジュはそんなことよりもフローリアの短くなった髪に、冷や汗がどばどばと流れていくのを感じていた。
「(殺される)」
娘馬鹿なアルウィンのことだ、これはまずい。治癒能力か何かを持っている団員に髪の長さをどうにか元通りにさせねば!と焦っていたら、セルジュの方をがち、と掴む手があった。
「………………」
「ようセルジュ、うちの可愛い可愛いフローリアの髪が短くなった理由をお聞かせ願おうか」
ドスの効いた低音。
今、一番聞きたくなかったであろう人の声。
「あら、お父様。今は団長、とお呼びするべきでしょうか」
セルジュの心のうちは知らず、フローリアはにこにこと短くなった髪のまま父親のアルウィンに対してひらひらと手を振っている。
別の意味での修羅場が今から、始まろうとしていた。
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