私とお嬢様の優雅な紅茶(ティー)タイム 〜春夏秋冬季節という名のスパイスを添えて〜

episode 2

悩みとの葛藤 Conflict with troubles

　あれからどのくらい時間が経ったのかしら、　徐々に意識が戻ってきて段々と目が開き眩しい光が差し込んでくる。かろうじて全開するといつものベッドで横たわっている時から見える目線だった。もしかして夢を見ていたのかしら？そう一瞬ふと安堵した気持ちになり二度寝しようとした瞬間
　「お目覚めになりましたか、お嬢様。先ほどはおんぶなど土壇場で無礼を仕りまして大変申し訳ございませんでした。お嬢様の気分を損ねていないことを願いたいのですがご気分はいかがでしょうか？」
　夢だと思い込もうとしたのに隣にさっきいた男性が凛とした表情で佇んでおり思わず驚いてからの左頬を思い切り平手打ちしてしまったのである。
　自分でも何が起こったのか理解できず戸惑っている中、床に倒れ込んだマイケルが立ち上がり「流石はミリアお嬢様。お噂に聞いての通り元気いっぱいでいらっしゃいますね。回復されたようで何よりでございます。お目覚めの直後ではなんですが、只今より紅茶(ティー)タイムと致しませんか？」
　冷静なマイケルの対応にますます動揺してしまった。しかし、紅茶(ティー)タイムと聞いて思わずこんな質問をしてみたくなった。
　「ねぇ、執事さん！私紅茶にはうるさいで有名なんだけれど私のお好みはご存知なのかしら？いつも飲んでいるのと違う味だったら私の権限でクビにいたしますけれど覚悟はよろしくて？」
　すると、間髪入れずに「お嬢様のお好みのブランドは、フォートナム&メイソン、砂糖の種類はグラニュー糖でg数は3g、ミルクの種類は特別牛乳でよろしかったですよね？」
　「これくらいできて当然だならね！答えられないなんて対外よ！分かっているならボサっとしていないでさっさと準備しなさい！紅茶が美味しくても待たせるような執事は即刻クビよクビ！」
　「お嬢様がそう仰ると思いまして既に用意はしておりますよ。それではベランダの方へご移動お願い申し上げます。」
　「私のお気に入りの場所まで把握しているなんてやるわね、いやいやさっさと飲みたいからあんたも準備しなさいよね！」
　
　この時、ミリアは墓穴を掘ったのである。この国では特に異性間での交流が厳しく禁じられている中ましてや皇室内において自ら男性を誘うなど本来あってはならないことなのに、、
　お願い！どうか気づかないで！！

　「お嬢様、、　よほど紅茶がお好きなようですね。　では只今より支度いたしますのでお掛けになってお待ちください。」

　どうやら気づいていなさそうである。　それとも本当は気づいているのに気づいていないフリをしているのかしら？
もう、どっちなのよ！ハッキリしなさいよ！

　「お嬢様、用意が整いました。大変お待たせいたしました。私たちの出会いを祝福して乾杯といきましょう。」

　その時心の奥底の何かが壊れる音が聞こえた気がした。マイケルはチャールズの代わりにここに来たわけなのに、それを祝福ってまるでチャールズが邪魔者みたいな言い方をして、、

　「私気分が悪いわ　紅茶はいいからささっと出ていって！っていうかクビよ冗談抜きで即刻クビよ！」

　「お嬢様、　左様でございますか。お気に召さない点がございまして私がいたらぬばかりに大変申し訳ございませんでした。戴冠式頑張ってくださいませ。それでは失礼いたします。」そう言い残し彼は荷物をまとめると部屋を静かに出ていってしまった。

　本当にこれでよかったのかな？でも、失言をした彼がいけないから当然の処罰よね
でも、あんな真面目そうな彼が悪意を持ってあの発言をしたとも考えづらいわね、
もしかしたら純粋に私たちが出会えたことに喜びを感じていたとするならば？
いえもう考えても遅いわよ。クビにしてしまったのだから。でも、ここまで迅速に対応してたった1日で執事に就任できるなんてよっぽどのプロよね。そんなプロを手放して本当にいいのかしら、、

　そんなモヤモヤした気分の中ふとベランダに目を向けると紅茶セットが用意されていたため自分で淹れて飲んでみることにした。美味しい。完璧じゃない。ていうか私このままだと一生誰かに頼らないと生きていけないのかしら、、
よく考えたら執事とそばにいたら家事の様子がよく分かるはずなのに今までちゃんとみてこなかったから何一つ身についていない。そんな人間が国のトップに立てるとは到底思えない。いったい私はこれからどうしたらいいのかしら、、

　ミリアはマイケルへの想いと自分の情けなさとが入り混じり葛藤している状態に陥っているのである。果たして彼女は負のループから脱出することはできるのか！