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最終章
129 真実1 ※ルドルフ視点
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「やはり、サーヤにも前世の記憶があったか。あまりにも不自然にサーヤが避けているから、そうだろうと思っていた。その様子だと、ユリウスはサーヤに色々と聞いているか?」
「はい」
ユリウスはサーヤに聞いた前世の話をルドルフに説明した。
「姉様は泣いていました。あと少し、姉様が死ぬのが遅ければ、子供が生まれていたと。子供が生まれていたら、ルドルフ殿下が時間を巻き戻さなかったのではないかと。階段から落ちる寸前、ルドルフ殿下から手を離してしまった自分を責めていました」
「……そうか」
サーヤのせいではない。妻を守れなかったルドルフが悪いのだ。いや、その前に建国記念式典にサーヤを連れて行かなければ、サーヤを娶った時に第一皇妃と第二皇妃の二人と離縁していれば。後悔は後を絶たない。
サーヤの願いは、何一つ叶えてあげれなかった。力を使う人物に代償があるからと、石の能力の時間の逆行を使わないでとサーヤにお願いされたけれど、ルドルフは裏切った。他にも最大な裏切りをルドルフはしている。
「サーヤが死んで、俺はサーヤに再び会いたいということしか考えていなかった。たぶん、俺はあの時、サーヤがいないことに耐えられず狂っていたのだろう」
ルドルフはユリウスに過去の出来事を話すため、口を開いた。
サーヤが頭を強く打って死んだ日、サーヤを階段から落とした第一皇妃レベッカをルドルフは即刻打ち首にしようとしたけれど、部下に止められ、レベッカを牢獄へ閉じ込めた。レベッカの聴取から、調査した結果、サーヤを殺した実行犯はレベッカだけれど、それを唆した人物がいるのが分かった。第二皇妃ユリアである。
ユリアは巧みにレベッカを誘導し、サーヤを自らの手を使わずとも排除することを考えていたのだ。そして、当然サーヤを殺したレベッカは処刑されると考え、ユリア一人が唯一の皇妃になる計画だったのだろう。ユリアは帝室に忠実なハイゼン家の娘で、普段大人しかったため、内にそんなことを秘めているとは、ルドルフも想像していなかった。
しかし、調査も済み、黒幕も分かったところで、レベッカとユリアはルドルフ自身の手で処刑した。後継者争いの時からずっと血に染まる手だ。躊躇も後悔もない。
そして、すぐに石を使った時間の逆行を実行した。サーヤを生き返らせるすべがないなら、時間の逆行をするしかない。石の力は、文書ではなく伝聞で後継に伝えていくものだから、時間の逆行を使った場合の代償が何なのかは分からなかった。しかし想像するに、ルドルフの寿命が減るなど、そういった類だろう。サーヤに会えるのなら、少しくらい寿命が減ろうが気にしなかった。
そして神とやり取りした。時間の逆行だけは、神とのやり取りがある。神ヴァリーとやり取りしたところ、なぜか神ヴァリーは戸惑っていた。すんなり時間の逆行が始まるものだと思っていたが、他の神と交渉が必要だと言い出した。サーヤを生き返らせるために時間を逆行したいと言ったからだろうか。しかし、まもなく他の神の許可が降りたのか、時間が逆行する。
次にルドルフの目が覚めた時、五歳になっていた。まだ父の母以外の妻、第一皇妃や第二皇妃たちに執拗にいじめられていた頃だった。今すぐにはサーヤにまだ会えない。もう少し力を付けなければ。今回は第一皇妃や第二皇妃たちを適当にあしらいつつ、力のない自分の地位を少しずつ上げるよう努力した。そんな中、前世とは違う出来事が起きた。やたらと第三皇子ヴェルナーがルドルフを構うようになったのだ。
数年後に知ったことだが、サーヤがヴェルナーと友人関係になっていて、サーヤがヴェルナーにルドルフと仲良くするように言っていたことが分かった。それまでサーヤと接触していなかったが、初めてサーヤを遠目で見た時にはすでに、サーヤの前髪が長くて顔が見えない姿だった。
前世とは違う出来事が、次々に起こる。サーヤは領地持ちではなくなり、ウィザー家はいつのまにか事業を初めて裕福になっていった。サーヤに会おうにも、サーヤに徹底的に避けられている様子だった。
そんな時、宮殿の子供の剣術訓練の集まりに、サーヤの弟ユリウスの付き添いでサーヤが宮殿に来ていた。サーヤは訓練場の近くの芝生で、本を読んでいたようだけれど、いつの間にか居眠りしていた。ルドルフはサーヤに近づいた。そして、サーヤの顔を見ようと、長い前髪を上げた。
「……っ?」
戸惑った。前髪を上げたのに、顔上半分がペンでぐるぐると塗り潰されたように、見ることができない。自分の目がおかしいのかと思い、目をこするが、やはりサーヤの上半分を見ることができない。
「はい」
ユリウスはサーヤに聞いた前世の話をルドルフに説明した。
「姉様は泣いていました。あと少し、姉様が死ぬのが遅ければ、子供が生まれていたと。子供が生まれていたら、ルドルフ殿下が時間を巻き戻さなかったのではないかと。階段から落ちる寸前、ルドルフ殿下から手を離してしまった自分を責めていました」
「……そうか」
サーヤのせいではない。妻を守れなかったルドルフが悪いのだ。いや、その前に建国記念式典にサーヤを連れて行かなければ、サーヤを娶った時に第一皇妃と第二皇妃の二人と離縁していれば。後悔は後を絶たない。
サーヤの願いは、何一つ叶えてあげれなかった。力を使う人物に代償があるからと、石の能力の時間の逆行を使わないでとサーヤにお願いされたけれど、ルドルフは裏切った。他にも最大な裏切りをルドルフはしている。
「サーヤが死んで、俺はサーヤに再び会いたいということしか考えていなかった。たぶん、俺はあの時、サーヤがいないことに耐えられず狂っていたのだろう」
ルドルフはユリウスに過去の出来事を話すため、口を開いた。
サーヤが頭を強く打って死んだ日、サーヤを階段から落とした第一皇妃レベッカをルドルフは即刻打ち首にしようとしたけれど、部下に止められ、レベッカを牢獄へ閉じ込めた。レベッカの聴取から、調査した結果、サーヤを殺した実行犯はレベッカだけれど、それを唆した人物がいるのが分かった。第二皇妃ユリアである。
ユリアは巧みにレベッカを誘導し、サーヤを自らの手を使わずとも排除することを考えていたのだ。そして、当然サーヤを殺したレベッカは処刑されると考え、ユリア一人が唯一の皇妃になる計画だったのだろう。ユリアは帝室に忠実なハイゼン家の娘で、普段大人しかったため、内にそんなことを秘めているとは、ルドルフも想像していなかった。
しかし、調査も済み、黒幕も分かったところで、レベッカとユリアはルドルフ自身の手で処刑した。後継者争いの時からずっと血に染まる手だ。躊躇も後悔もない。
そして、すぐに石を使った時間の逆行を実行した。サーヤを生き返らせるすべがないなら、時間の逆行をするしかない。石の力は、文書ではなく伝聞で後継に伝えていくものだから、時間の逆行を使った場合の代償が何なのかは分からなかった。しかし想像するに、ルドルフの寿命が減るなど、そういった類だろう。サーヤに会えるのなら、少しくらい寿命が減ろうが気にしなかった。
そして神とやり取りした。時間の逆行だけは、神とのやり取りがある。神ヴァリーとやり取りしたところ、なぜか神ヴァリーは戸惑っていた。すんなり時間の逆行が始まるものだと思っていたが、他の神と交渉が必要だと言い出した。サーヤを生き返らせるために時間を逆行したいと言ったからだろうか。しかし、まもなく他の神の許可が降りたのか、時間が逆行する。
次にルドルフの目が覚めた時、五歳になっていた。まだ父の母以外の妻、第一皇妃や第二皇妃たちに執拗にいじめられていた頃だった。今すぐにはサーヤにまだ会えない。もう少し力を付けなければ。今回は第一皇妃や第二皇妃たちを適当にあしらいつつ、力のない自分の地位を少しずつ上げるよう努力した。そんな中、前世とは違う出来事が起きた。やたらと第三皇子ヴェルナーがルドルフを構うようになったのだ。
数年後に知ったことだが、サーヤがヴェルナーと友人関係になっていて、サーヤがヴェルナーにルドルフと仲良くするように言っていたことが分かった。それまでサーヤと接触していなかったが、初めてサーヤを遠目で見た時にはすでに、サーヤの前髪が長くて顔が見えない姿だった。
前世とは違う出来事が、次々に起こる。サーヤは領地持ちではなくなり、ウィザー家はいつのまにか事業を初めて裕福になっていった。サーヤに会おうにも、サーヤに徹底的に避けられている様子だった。
そんな時、宮殿の子供の剣術訓練の集まりに、サーヤの弟ユリウスの付き添いでサーヤが宮殿に来ていた。サーヤは訓練場の近くの芝生で、本を読んでいたようだけれど、いつの間にか居眠りしていた。ルドルフはサーヤに近づいた。そして、サーヤの顔を見ようと、長い前髪を上げた。
「……っ?」
戸惑った。前髪を上げたのに、顔上半分がペンでぐるぐると塗り潰されたように、見ることができない。自分の目がおかしいのかと思い、目をこするが、やはりサーヤの上半分を見ることができない。
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