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最終章
117 修羅場と事実3 ※ユリウス視点
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ユリウスがハイゼン家の後継者となってからというもの、父から後継者として色々と習うことになった。
ハイゼン家は帝国の情報機関の長であるわけだが、それは裏の顔であって、表向きは政治での別の仕事を引き受けている。情報機関をやっているのは、ハイゼン家の石の力が関係していた。帝室の場合は、姉の話だと一つ目は皇帝石、二つ目は治癒関係、三つ目は時間の巻き戻しとのことだった。ハイゼン家の場合、その三つ目が諜報に便利な力であり、情報機関とはなるほどな、とユリウスは思った。
ちなみに皇帝石のようなものはハイゼン家にもあるのかと父に聞いた。
「皇帝石のようなものは、あるにはあるが、帝室や大公家のような強い原動力になるものはないよ。ほとんど使い物にならないから、商売にも使えない。まあ、いずれユリウスの時間に余裕ができるようになれば、好きに弄ってもいいがね」
好きに実験して、使えそうであれば将来的に商売に使ってもいいよ、ということらしい。
また、父に治癒や再生力に使える石を貰った。
「普段は首から下げておくといい。ユリウスの力で他人にも使用はできるが、基本は他人には使わないことだ。制限はあるし体力も消耗する。この力は、建国貴族を断絶しないために作られているものだから」
それを見て、ユリウスは流雨が刺されたときに傷を治したのは、これかと思うのだった。
他にも、建国貴族と帝室と大公家の話を聞き、この国は帝室と大公家がなくなったらお終いだな、と思う。聞きたくなかったが、突然その渦中に巻き込まれた流雨の方が、ルーウェンとなったときに頭を抱えたことだろうと思い、少しだけ同情するのだった。
しかし、流雨にはそんな面倒を引き受けても、姉と一緒に生きていきたい願望がある。むしろ、姉と生きていけるなら、面倒など些末なことと思っている可能性もある。
後継者としての学びと並行して、ハイゼン家の後継者になると決めた目的、ユリアの動向を探ることも始めた。父に部下を付けてもらうこともできた。ユリアの動向を探ること自体は、父としては将来的に情報機関の長をやらなくてはならなくなるユリウスの練習台という認識のようだ。
今後ユリウスに逆恨みする可能性のあるテオバルトや侯爵夫人の動向については、父が引き受けてくれているため、そのあたりの情報は貰うことができている。
ユリウスが後継者になるということは、ミーゼス侯爵家から横やりが入らないのかと思ったが、父の代で侯爵夫人と結婚することという話で約束を組みなおしているらしく、結婚自体はしたのだから、横やりがあっても無視すればいいとのことだった。
ユリアが今何を目指しているのか、ユリアの目的は、皇帝に一番近いと言われる第三皇子と結婚すること。第三皇子の婚約者候補はユリアを含め複数人いるらしいが、すでに二人ほど脱落しているのは、裏でユリアが動いているからのようだ。
姉はすでに流雨と婚約しているし、第三皇子とは関係ないのに、なぜ姉を摘むべき種だと認識しているのか分からない。確かに姉は第三皇子と比較的親しいかもしれないが、ただの友人関係、もしくは事業の取引相手に過ぎないのに。
その日、メイル学園で授業を受け、廊下に出たユリウスは、廊下で姉と流雨に会った。姉はユリウスに会いに来て、流雨は姉に付いてきただけだろう。流雨は相変わらず姉の傍を離れようとはしない。
ユリウスに抱き付いた姉は、顔を上げてユリウスの両頬を両手で挟んだ。
「ユリウス、元気にしているの?」
「元気ですよ」
「いじめられていない!? もしそうなら、私が怒りに行くからね!?」
「大丈夫ですよ、いじめられていません」
姉はユリウスの顔色を確認しつつ、本当にいじめられていないのか探る目をしている。争いごとが苦手なのに、ユリウスのためなら怒りに行くという姉が愛しい。和むなと思いながら姉を抱きしめると、流雨がユリウスを無言で非難の目で見ていた。ユリウスがわざと姉の頭に頬を乗せると、流雨の眉がぴくっと動く。
相変わらず、弟にでさえ嫉妬するのだなと思うが、姉に甘えるのも甘やかすのも弟であるユリウスの特権なので、流雨に遠慮をするつもりはない。
姉がメイル学園でも素顔で過ごすようになってしばらく経ち、姉の日本な顔立ちが見慣れないという者もいれば、姉の容姿が好みのなのか陰で男子生徒が盛り上がっている者たちもいる。好みの女性を見れば盛り上がるのは男子の常だが、姉から見ると陰で姉の悪口を言い合っているようにしか見えないようで、人付き合いが苦手な姉はますます姉の脳内の『苦手リスト』のようなものに名前が増えていっているのは間違いない。
流雨は姉に気がある男性に目ざとく気づき、姉に気づかれないようこっそりけん制している。あれをこっそりと言っていいのか分からないが、ルーウェンに見られること自体が『ルーウェンに目を付けられた』と同意だと生徒たちに刻まれているので、ルーウェンにけん制されたのか、ただの普段の視線なのか分かりづらいところはあるが。
姉は二日に一度はユリウスの顔を見にやって来る。姉はいつも通りなので、今のところ不快な出来事などは起きていなさそうだ。流雨が姉の安全には気を配っているし、そこは引き続き任せようと思う。
ユリウスはとにかくハイゼン家、特にユリアからの姉への火の粉は、ユリウスが払う。
自分の身近に足を引っ張ろうとする者がいたがために、母を諦めざるを得なかった父。父がユリウスに母を諦めざるを得なかった話をしたのは、自分の情報不足で招いた不幸のように、ユリウスに同じ思いはさせたくないと話してくれたのだろう。だからユリウスは油断しない。大事な姉に火の粉が降りかからぬよう、ユリウスが守って見せるのだ。
ハイゼン家は帝国の情報機関の長であるわけだが、それは裏の顔であって、表向きは政治での別の仕事を引き受けている。情報機関をやっているのは、ハイゼン家の石の力が関係していた。帝室の場合は、姉の話だと一つ目は皇帝石、二つ目は治癒関係、三つ目は時間の巻き戻しとのことだった。ハイゼン家の場合、その三つ目が諜報に便利な力であり、情報機関とはなるほどな、とユリウスは思った。
ちなみに皇帝石のようなものはハイゼン家にもあるのかと父に聞いた。
「皇帝石のようなものは、あるにはあるが、帝室や大公家のような強い原動力になるものはないよ。ほとんど使い物にならないから、商売にも使えない。まあ、いずれユリウスの時間に余裕ができるようになれば、好きに弄ってもいいがね」
好きに実験して、使えそうであれば将来的に商売に使ってもいいよ、ということらしい。
また、父に治癒や再生力に使える石を貰った。
「普段は首から下げておくといい。ユリウスの力で他人にも使用はできるが、基本は他人には使わないことだ。制限はあるし体力も消耗する。この力は、建国貴族を断絶しないために作られているものだから」
それを見て、ユリウスは流雨が刺されたときに傷を治したのは、これかと思うのだった。
他にも、建国貴族と帝室と大公家の話を聞き、この国は帝室と大公家がなくなったらお終いだな、と思う。聞きたくなかったが、突然その渦中に巻き込まれた流雨の方が、ルーウェンとなったときに頭を抱えたことだろうと思い、少しだけ同情するのだった。
しかし、流雨にはそんな面倒を引き受けても、姉と一緒に生きていきたい願望がある。むしろ、姉と生きていけるなら、面倒など些末なことと思っている可能性もある。
後継者としての学びと並行して、ハイゼン家の後継者になると決めた目的、ユリアの動向を探ることも始めた。父に部下を付けてもらうこともできた。ユリアの動向を探ること自体は、父としては将来的に情報機関の長をやらなくてはならなくなるユリウスの練習台という認識のようだ。
今後ユリウスに逆恨みする可能性のあるテオバルトや侯爵夫人の動向については、父が引き受けてくれているため、そのあたりの情報は貰うことができている。
ユリウスが後継者になるということは、ミーゼス侯爵家から横やりが入らないのかと思ったが、父の代で侯爵夫人と結婚することという話で約束を組みなおしているらしく、結婚自体はしたのだから、横やりがあっても無視すればいいとのことだった。
ユリアが今何を目指しているのか、ユリアの目的は、皇帝に一番近いと言われる第三皇子と結婚すること。第三皇子の婚約者候補はユリアを含め複数人いるらしいが、すでに二人ほど脱落しているのは、裏でユリアが動いているからのようだ。
姉はすでに流雨と婚約しているし、第三皇子とは関係ないのに、なぜ姉を摘むべき種だと認識しているのか分からない。確かに姉は第三皇子と比較的親しいかもしれないが、ただの友人関係、もしくは事業の取引相手に過ぎないのに。
その日、メイル学園で授業を受け、廊下に出たユリウスは、廊下で姉と流雨に会った。姉はユリウスに会いに来て、流雨は姉に付いてきただけだろう。流雨は相変わらず姉の傍を離れようとはしない。
ユリウスに抱き付いた姉は、顔を上げてユリウスの両頬を両手で挟んだ。
「ユリウス、元気にしているの?」
「元気ですよ」
「いじめられていない!? もしそうなら、私が怒りに行くからね!?」
「大丈夫ですよ、いじめられていません」
姉はユリウスの顔色を確認しつつ、本当にいじめられていないのか探る目をしている。争いごとが苦手なのに、ユリウスのためなら怒りに行くという姉が愛しい。和むなと思いながら姉を抱きしめると、流雨がユリウスを無言で非難の目で見ていた。ユリウスがわざと姉の頭に頬を乗せると、流雨の眉がぴくっと動く。
相変わらず、弟にでさえ嫉妬するのだなと思うが、姉に甘えるのも甘やかすのも弟であるユリウスの特権なので、流雨に遠慮をするつもりはない。
姉がメイル学園でも素顔で過ごすようになってしばらく経ち、姉の日本な顔立ちが見慣れないという者もいれば、姉の容姿が好みのなのか陰で男子生徒が盛り上がっている者たちもいる。好みの女性を見れば盛り上がるのは男子の常だが、姉から見ると陰で姉の悪口を言い合っているようにしか見えないようで、人付き合いが苦手な姉はますます姉の脳内の『苦手リスト』のようなものに名前が増えていっているのは間違いない。
流雨は姉に気がある男性に目ざとく気づき、姉に気づかれないようこっそりけん制している。あれをこっそりと言っていいのか分からないが、ルーウェンに見られること自体が『ルーウェンに目を付けられた』と同意だと生徒たちに刻まれているので、ルーウェンにけん制されたのか、ただの普段の視線なのか分かりづらいところはあるが。
姉は二日に一度はユリウスの顔を見にやって来る。姉はいつも通りなので、今のところ不快な出来事などは起きていなさそうだ。流雨が姉の安全には気を配っているし、そこは引き続き任せようと思う。
ユリウスはとにかくハイゼン家、特にユリアからの姉への火の粉は、ユリウスが払う。
自分の身近に足を引っ張ろうとする者がいたがために、母を諦めざるを得なかった父。父がユリウスに母を諦めざるを得なかった話をしたのは、自分の情報不足で招いた不幸のように、ユリウスに同じ思いはさせたくないと話してくれたのだろう。だからユリウスは油断しない。大事な姉に火の粉が降りかからぬよう、ユリウスが守って見せるのだ。
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