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最終章
88 情報交換と相談1
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時間が少し進み、五月の半ば。
現在私は東京に戻ってきていた。学校に通ったり仕事をしたりする日々を過ごしつつ、夜の現在、リビングで麻彩に化粧とヘアメイクをしているところだった。丁度その時、兄が帰宅した。
「おかえり、お兄様」
「ただいま。なんだ、まだ風呂に入ってないのか?」
「これが終わってから入るの。よし、できた! まーちゃん、綺麗だよ。モデルさんにしか見えない」
「えへ! さーちゃん、写真撮って!」
「オッケー」
麻彩の写真をスマホで複数枚撮り、画像を確認する。その後画像を少し加工した。それを近くのソファーに座った兄が見ている。
「なんだ、次の撮影の構図か?」
「うん、そう。冬に出したリップが好調でね。今度新色を予定しているから、そのポスターの構図を考えてたの。まーちゃんのポスター人気なんだよ。モデルは誰だって問い合わせがよくあるもの」
ポスターの撮影は毎回麻彩だ。撮った写真はうちの会社のシステム担当の松山が加工してくれる。帝国にも写真技術はあるけれど、日本のほうが断然綺麗だ。帝国のは画質が粗いし、カラーも綺麗ではない。麻彩のポスターは店舗の中に貼るだけだが、チェックしている人も多いし、黒髪でエキゾチックだと麻彩が人気なのだ。
「ほら、こんな感じどうかな。写真はあえてカラーじゃなくてモノクロにして、まーちゃんの唇だけカラーにするの。素敵じゃない?」
「うん、いーかも!」
「そうだな。麻彩がより大人っぽくみえる」
褒められてニコニコしている麻彩が可愛い。でも、何か写真に足したい気もする。
「……まーちゃん、もし嫌じゃなかったら、藤くんを写真のパートナーに……」
「絶対イヤー!!」
「だよね……」
やっぱりか。断固拒否される藤ドンマイ。さて、ではどうしよう。
「じゃあ、お兄様にお願いしようかな?」
「俺をポスターにするな」
「大丈夫だよぉ。お兄様のななめ後ろからしか写さないから。男性の輪郭が欲しいだけなの。ちょっと試しに撮らせて」
「はあ? ちょっ……待て」
抵抗する兄を後ろを向いたまま座らせ、兄の正面の斜め前に麻彩に兄を向いて座ってもらう。そして麻彩には兄を抱き寄せてもらいつつ、頬にキスしようとする隙間を三センチくらい空けてもらった。そして麻彩の視線だけカメラに向けてもらう。そしてカメラを連写。
「わあ! すごくいい写真が撮れた!」
兄と麻彩に写真を見せる。それからモノクロにして麻彩の唇だけ再びカラーにした。
「うん、これいいよ! 次はこれにしたいな!」
「俺の許可は?」
「お兄様の顔は見えてないから、いいでしょう。ななめ後ろだけだよ? 本番の撮影日はお兄様のスケジュールに合わせるからね」
「もう確定なんだな……」
嫌そうな兄は無視である。
そうやって、わあわあと兄妹で騒ぐ夜は深けていった。
次の日、私は東京で死神業の同業者である九州地区担当の如月親子と情報交換のために会っていた。いつも会う場所は九州だったり東京だったりが多い。大阪や京都になる場合もある。どうやら如月親子は、今回異世界から直接東京に来たらしい。三人で入った焼肉店で、二人とも大食いを発揮していた。
「ごめんねぇ、紗彩。お肉焼いてもらっちゃって」
「いえいえ。じゃんじゃん焼くので、まずはお腹を満たしてください」
死神業の行き来で大食いになるのは、死神をやっていれば、みな通る道なのだ。ちなみにだ、異世界の行き来は特定の場所でしかできないわけじゃない。私は突然壁から現れる所を他人に見られたくないから、見られない場所で行き来するようにしているが、実は一度行ったことのある場所であれば、それが沖縄などでも帝都から行き来はできる。私が小さい頃は、今の家ではなく本家を拠点に行き来していた。如月家も東京にマンションの一室を持っているそうで、今日は異世界からそのマンションにやってきたという。
「それにしても、珍しいですね。直接東京に来ることってあまりないでしょう。いつも一度九州の家に帰られますよね」
「実は王国でちょっとゴタゴタしていてね。こちらに長時間はいられないの」
王国、如月家のあちらの異世界では、親戚間の権力争いが続いているらしいが、その関係で色々あるらしい。
如月家は日本でも事業をしていて、野菜ジュースなどの食品関係でわりと有名な会社を営んでいる。実はその会社で作っている野菜や薬草などが、異世界に持って行って加工すると、特別な薬になるらしい。王国で魔法と薬学に関係する事業が、大きくなったのは日本産の野菜と薬草のおかげだというのだ。どの同業者も、みんな異世界では工夫して事業を営んでいるのが分かる。
如月親子のお腹が満足したところで、それぞれ死神業に関する情報共有を行った。今回は特別互いに気になる情報共有はなかった。ちなみにだが、流雨がルーウェンとなって生きることになったことは話さなかった。ティカの話では異例のようだったし、流雨のことを話したくはないというのがあった。
それから、話さなくてはならないことを全て話した後、世間話程度に聞いてみたいな、という話をするため、私は口を開いた。
現在私は東京に戻ってきていた。学校に通ったり仕事をしたりする日々を過ごしつつ、夜の現在、リビングで麻彩に化粧とヘアメイクをしているところだった。丁度その時、兄が帰宅した。
「おかえり、お兄様」
「ただいま。なんだ、まだ風呂に入ってないのか?」
「これが終わってから入るの。よし、できた! まーちゃん、綺麗だよ。モデルさんにしか見えない」
「えへ! さーちゃん、写真撮って!」
「オッケー」
麻彩の写真をスマホで複数枚撮り、画像を確認する。その後画像を少し加工した。それを近くのソファーに座った兄が見ている。
「なんだ、次の撮影の構図か?」
「うん、そう。冬に出したリップが好調でね。今度新色を予定しているから、そのポスターの構図を考えてたの。まーちゃんのポスター人気なんだよ。モデルは誰だって問い合わせがよくあるもの」
ポスターの撮影は毎回麻彩だ。撮った写真はうちの会社のシステム担当の松山が加工してくれる。帝国にも写真技術はあるけれど、日本のほうが断然綺麗だ。帝国のは画質が粗いし、カラーも綺麗ではない。麻彩のポスターは店舗の中に貼るだけだが、チェックしている人も多いし、黒髪でエキゾチックだと麻彩が人気なのだ。
「ほら、こんな感じどうかな。写真はあえてカラーじゃなくてモノクロにして、まーちゃんの唇だけカラーにするの。素敵じゃない?」
「うん、いーかも!」
「そうだな。麻彩がより大人っぽくみえる」
褒められてニコニコしている麻彩が可愛い。でも、何か写真に足したい気もする。
「……まーちゃん、もし嫌じゃなかったら、藤くんを写真のパートナーに……」
「絶対イヤー!!」
「だよね……」
やっぱりか。断固拒否される藤ドンマイ。さて、ではどうしよう。
「じゃあ、お兄様にお願いしようかな?」
「俺をポスターにするな」
「大丈夫だよぉ。お兄様のななめ後ろからしか写さないから。男性の輪郭が欲しいだけなの。ちょっと試しに撮らせて」
「はあ? ちょっ……待て」
抵抗する兄を後ろを向いたまま座らせ、兄の正面の斜め前に麻彩に兄を向いて座ってもらう。そして麻彩には兄を抱き寄せてもらいつつ、頬にキスしようとする隙間を三センチくらい空けてもらった。そして麻彩の視線だけカメラに向けてもらう。そしてカメラを連写。
「わあ! すごくいい写真が撮れた!」
兄と麻彩に写真を見せる。それからモノクロにして麻彩の唇だけ再びカラーにした。
「うん、これいいよ! 次はこれにしたいな!」
「俺の許可は?」
「お兄様の顔は見えてないから、いいでしょう。ななめ後ろだけだよ? 本番の撮影日はお兄様のスケジュールに合わせるからね」
「もう確定なんだな……」
嫌そうな兄は無視である。
そうやって、わあわあと兄妹で騒ぐ夜は深けていった。
次の日、私は東京で死神業の同業者である九州地区担当の如月親子と情報交換のために会っていた。いつも会う場所は九州だったり東京だったりが多い。大阪や京都になる場合もある。どうやら如月親子は、今回異世界から直接東京に来たらしい。三人で入った焼肉店で、二人とも大食いを発揮していた。
「ごめんねぇ、紗彩。お肉焼いてもらっちゃって」
「いえいえ。じゃんじゃん焼くので、まずはお腹を満たしてください」
死神業の行き来で大食いになるのは、死神をやっていれば、みな通る道なのだ。ちなみにだ、異世界の行き来は特定の場所でしかできないわけじゃない。私は突然壁から現れる所を他人に見られたくないから、見られない場所で行き来するようにしているが、実は一度行ったことのある場所であれば、それが沖縄などでも帝都から行き来はできる。私が小さい頃は、今の家ではなく本家を拠点に行き来していた。如月家も東京にマンションの一室を持っているそうで、今日は異世界からそのマンションにやってきたという。
「それにしても、珍しいですね。直接東京に来ることってあまりないでしょう。いつも一度九州の家に帰られますよね」
「実は王国でちょっとゴタゴタしていてね。こちらに長時間はいられないの」
王国、如月家のあちらの異世界では、親戚間の権力争いが続いているらしいが、その関係で色々あるらしい。
如月家は日本でも事業をしていて、野菜ジュースなどの食品関係でわりと有名な会社を営んでいる。実はその会社で作っている野菜や薬草などが、異世界に持って行って加工すると、特別な薬になるらしい。王国で魔法と薬学に関係する事業が、大きくなったのは日本産の野菜と薬草のおかげだというのだ。どの同業者も、みんな異世界では工夫して事業を営んでいるのが分かる。
如月親子のお腹が満足したところで、それぞれ死神業に関する情報共有を行った。今回は特別互いに気になる情報共有はなかった。ちなみにだが、流雨がルーウェンとなって生きることになったことは話さなかった。ティカの話では異例のようだったし、流雨のことを話したくはないというのがあった。
それから、話さなくてはならないことを全て話した後、世間話程度に聞いてみたいな、という話をするため、私は口を開いた。
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