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第1章
21 死神業では天使は上司です2
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人は死ぬと、生きていた頃の行いの裁判が行われ、その結果により何かの罰を受けるものいれば、魂の洗浄を行われ次の生へと生まれ変わるものもいる。ざっくりと言えばこんな感じだそうで、そのあたりの細かな行程までは分からないが、私の上司であるカーリオンはそこを管轄しているのだ。
地球を含む、いろんな異世界の魂は、必ずカーリオンの管轄する場所を通ることになっている。
はるか昔。
魂は一つ一つ丁寧に裁判され、処理が行われていた。そのためか、魂の行列が何百キロにも及ぶほど渋滞していた。
そんな時だった。魂の生成をしている神から嫌味を言われたらしい。魂の生成をしている神は、世の中に出回る魂の稼働率をチェックしている。カーリオンたちの仕事の処理が遅れるせいで、稼働率が下がっているという。世の中に稼働する魂が減れば、魂を生成しなくてはならないが、カーリオンたちの仕事が滞りなく進んでいて、魂の洗浄と生まれ変わりがうまくいっていれば不要な作業である。仕事をサボり気味なのではないかと、それはもう嫌味たっぷりだったらしい。
神の世界にも人材不足の波が起きていて、神も神の部下もそれはもう寝る間も惜しんでオーバーワークらしいのだが、処理できる神が少ないのに、処理すべき魂の数は膨大過ぎて、まったく追いついていない。しかし処理自体が遅れているのは、嫌味を言う神の言うとおりなのは間違いなく、カーリオンはブチギレ寸前だったけれど、その時は神同士の戦争なんてものにはならずに済んだらしい。
神の世界にも派閥があるという。
カーリオン含む一派、カーリオンと敵対する一派、そしてどちらとも仲の良い中立派。
魂の生成する神は、やはり敵対する一派らしい。
カーリオン一派は、敵対する一派に口出しされるのを極端に嫌う。そのため、その嫌味を言われたときに、処理の大改造を行った。ついに神の世界にもシステム化の導入である。
といっても、私たちの想像するような機械が出てきたりはしない。魂が、ある道を通るときに、生前に行った所業なんかがスクリーニング、つまり自動で振り分けされるよう組み込んだ。それにより処理は大幅に時間短縮できるようになった。おかげで、処理を待つ魂の行列が何百キロから数十キロくらいまでに短くなったらしい。
ところが、どんなシステムにもバグは発生する。膨大な死人の中から、ときどきスクリーニングされる前の魂が迷子になってしまうのだ。それを本来の道に戻す作業が、私たちの死神業である。
迷子の魂は決まって、生前の所業が一般的に普通の人間、つまり極端な善行や極端な悪行ではなく、普通に生きてきた人間が多い。よくいう大悪人と言われるような、多くの人間を不幸にした人や、大量殺人をした人なんかは迷子にならない。なぜかそういう魂は迷いなくスクリーニングの道に吸い込まれやすいからだとか。
しかし彼女のお金を盗んだとか、人に嘘を付いたとか、戦争で戦って人を殺したなどという人なんかは迷子になる人もいた。だからなのか、迷子になった魂の情報が頭に流れる時、『本人が抱える罪』なんかも流れるため、私もそれをメモはしている。なぜかというと、魂の回収を拒むものには、その罪が原因で生に未練がある場合があるからだ。
そんなこんなで、私たちが死神業をやることになった起因は、カーリオン一派と敵対する一派の神戦争を回避することから始まったわけだ。
しかし、それとティカの言う『時間を巻き戻した甲斐』というのは別の話である。
帝国は独特な石技術が発展する国であるが、その技術は建国時に活躍した帝室と建国貴族に与えられた力で、その力は帝国を守護する女神ヴァリーが与えたものとされる。その女神ヴァリーはカーリオン一派と仲のいい中立派の一派で、そちら経由で『時間の巻き戻しを行うので目をつぶってくれ』とお願いされたという。
そんなこと、私は頼んでいない。もう二度と目が覚めなくてよかった。なのに『二度目の人生を与えてやったのだから、よい働きを期待している』という圧をいつも感じる。そしてそれに反発できない自分もいる。
「ねぇ、さっきのおやつ、お代わり欲しいな」
「いいですよ」
結果連絡は終わった、とでも言うように、ティカは手に持っていたメモ帳を消すと、目をキラキラさせて言った。マリアが持ってきたデザートを嬉しそうに食している。
「……すでに東京地区は私一人で二年作業をしています。それでも、結果は出していると証明していると思います。もう母は死神業をこのまま引退させたいと以前相談したお話ですが、了承いただけますか?」
「うん、いいんじゃない? 以前のように、警告を出す事態にならなければ」
「もう警告は出しません。今は時間が巻き戻る前とは違いますから。古い手ですが人海戦術でうまくいってますし」
「そこは任せるよ。警告だけは気を付けて」
警告さえ出さなければ問題ない、とは言ってくれてはいるので、それでよしとしよう。
結局、ティカはその後二皿お代わりして帰っていった。
地球を含む、いろんな異世界の魂は、必ずカーリオンの管轄する場所を通ることになっている。
はるか昔。
魂は一つ一つ丁寧に裁判され、処理が行われていた。そのためか、魂の行列が何百キロにも及ぶほど渋滞していた。
そんな時だった。魂の生成をしている神から嫌味を言われたらしい。魂の生成をしている神は、世の中に出回る魂の稼働率をチェックしている。カーリオンたちの仕事の処理が遅れるせいで、稼働率が下がっているという。世の中に稼働する魂が減れば、魂を生成しなくてはならないが、カーリオンたちの仕事が滞りなく進んでいて、魂の洗浄と生まれ変わりがうまくいっていれば不要な作業である。仕事をサボり気味なのではないかと、それはもう嫌味たっぷりだったらしい。
神の世界にも人材不足の波が起きていて、神も神の部下もそれはもう寝る間も惜しんでオーバーワークらしいのだが、処理できる神が少ないのに、処理すべき魂の数は膨大過ぎて、まったく追いついていない。しかし処理自体が遅れているのは、嫌味を言う神の言うとおりなのは間違いなく、カーリオンはブチギレ寸前だったけれど、その時は神同士の戦争なんてものにはならずに済んだらしい。
神の世界にも派閥があるという。
カーリオン含む一派、カーリオンと敵対する一派、そしてどちらとも仲の良い中立派。
魂の生成する神は、やはり敵対する一派らしい。
カーリオン一派は、敵対する一派に口出しされるのを極端に嫌う。そのため、その嫌味を言われたときに、処理の大改造を行った。ついに神の世界にもシステム化の導入である。
といっても、私たちの想像するような機械が出てきたりはしない。魂が、ある道を通るときに、生前に行った所業なんかがスクリーニング、つまり自動で振り分けされるよう組み込んだ。それにより処理は大幅に時間短縮できるようになった。おかげで、処理を待つ魂の行列が何百キロから数十キロくらいまでに短くなったらしい。
ところが、どんなシステムにもバグは発生する。膨大な死人の中から、ときどきスクリーニングされる前の魂が迷子になってしまうのだ。それを本来の道に戻す作業が、私たちの死神業である。
迷子の魂は決まって、生前の所業が一般的に普通の人間、つまり極端な善行や極端な悪行ではなく、普通に生きてきた人間が多い。よくいう大悪人と言われるような、多くの人間を不幸にした人や、大量殺人をした人なんかは迷子にならない。なぜかそういう魂は迷いなくスクリーニングの道に吸い込まれやすいからだとか。
しかし彼女のお金を盗んだとか、人に嘘を付いたとか、戦争で戦って人を殺したなどという人なんかは迷子になる人もいた。だからなのか、迷子になった魂の情報が頭に流れる時、『本人が抱える罪』なんかも流れるため、私もそれをメモはしている。なぜかというと、魂の回収を拒むものには、その罪が原因で生に未練がある場合があるからだ。
そんなこんなで、私たちが死神業をやることになった起因は、カーリオン一派と敵対する一派の神戦争を回避することから始まったわけだ。
しかし、それとティカの言う『時間を巻き戻した甲斐』というのは別の話である。
帝国は独特な石技術が発展する国であるが、その技術は建国時に活躍した帝室と建国貴族に与えられた力で、その力は帝国を守護する女神ヴァリーが与えたものとされる。その女神ヴァリーはカーリオン一派と仲のいい中立派の一派で、そちら経由で『時間の巻き戻しを行うので目をつぶってくれ』とお願いされたという。
そんなこと、私は頼んでいない。もう二度と目が覚めなくてよかった。なのに『二度目の人生を与えてやったのだから、よい働きを期待している』という圧をいつも感じる。そしてそれに反発できない自分もいる。
「ねぇ、さっきのおやつ、お代わり欲しいな」
「いいですよ」
結果連絡は終わった、とでも言うように、ティカは手に持っていたメモ帳を消すと、目をキラキラさせて言った。マリアが持ってきたデザートを嬉しそうに食している。
「……すでに東京地区は私一人で二年作業をしています。それでも、結果は出していると証明していると思います。もう母は死神業をこのまま引退させたいと以前相談したお話ですが、了承いただけますか?」
「うん、いいんじゃない? 以前のように、警告を出す事態にならなければ」
「もう警告は出しません。今は時間が巻き戻る前とは違いますから。古い手ですが人海戦術でうまくいってますし」
「そこは任せるよ。警告だけは気を付けて」
警告さえ出さなければ問題ない、とは言ってくれてはいるので、それでよしとしよう。
結局、ティカはその後二皿お代わりして帰っていった。
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