最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜

文字の大きさ
上 下
27 / 48

27 夫と食事などしたくない

しおりを挟む
 庭から部屋に戻ってきて、すぐにお仕着せに着替えた私を、侍女二人は困惑の顔で見ていた。私はショックで何かを口にすると泣いてしまいそうなので、無言でソファーに横になってぼーっとしていた。もう少し落ち着いたら、事情を説明して、侍女たちにドレスなどを別室へ移動してもらおう。

 ぐう、とお腹が鳴る。健康な体は、こんな時でも食を求める。食事を用意してもらおうと、ソファーから起きると、ちょうど使用人がやってきた。使用人が口を開く。

「……旦那様と夕食を一緒に?」

 どうやら、使用人はルークの伝言を伝えに来たようだった。

 しかし、先ほどルークに怒られたばかりで、すぐに一緒に食事なんて、できるはずがない。少しは私の気持ちも考えてくれてもいいと思うのに。

 せっかくの誘いだけれど、私は断った。そして、使用人に部屋に食事を持ってきてもらうよう依頼していると、今度はなぜかイーライがやってきた。

「旦那様が奥様とお食事をしたいと申されています」
「ええ、聞いたわ。さきほど断ったのだけれど、聞いていない?」
「お聞きしましたが、せっかくの機会ですし、一緒に食事されてはどうかと思いまして。旦那様はお忙しいので、次に一緒に食事をする機会はいつになるか分かりませんし」

 そうはいっても、今はルークと一緒に食事をしたい気分ではない。ただ、そう返事するわけにもいかないだろう。

「一緒に食事するにも、お仕着せで出るわけにはいかないでしょう?」
「はい。もちろん着替えていただく必要があります」
「でも、わたくしにはお仕着せしか着るものがないの。さきほど、旦那様に、わたくしが昼に着ていたドレスを見られて怒られてしまったし」
「……怒られた?」

 イーライは怪訝な顔をした。イーライも私に用意されたはずのドレスが、実は私のではないと知らなかったのだろう。

「わたくしのドレスだと思っていたものは、全てわたくしのものではなかったみたい。とにかく、わたくしがバリー家から持ってきたものは寝間着くらいなもので、あとはこのお仕着せくらいしか持っていないでしょう? 旦那様と一緒に食事をする恰好ではないし、旦那様にはお食事を一緒にできないとお断りしてくれる?」
「…………承知しました」

 疑問の表情のイーライだったが、さすが執事はいろいろと飲み込んだのか、返事して出て行った。

 そうこうしている内に、部屋に食事が用意される。嫌なことがあったら、美味しいものをたくさん食べて忘れることだ。
 今日も美味しい料理を、私はじっくり堪能するのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます

富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。 5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。 15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。 初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。 よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。 なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。 普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。 それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。 そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

処理中です...