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27 夫と食事などしたくない

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 庭から部屋に戻ってきて、すぐにお仕着せに着替えた私を、侍女二人は困惑の顔で見ていた。私はショックで何かを口にすると泣いてしまいそうなので、無言でソファーに横になってぼーっとしていた。もう少し落ち着いたら、事情を説明して、侍女たちにドレスなどを別室へ移動してもらおう。

 ぐう、とお腹が鳴る。健康な体は、こんな時でも食を求める。食事を用意してもらおうと、ソファーから起きると、ちょうど使用人がやってきた。使用人が口を開く。

「……旦那様と夕食を一緒に?」

 どうやら、使用人はルークの伝言を伝えに来たようだった。

 しかし、先ほどルークに怒られたばかりで、すぐに一緒に食事なんて、できるはずがない。少しは私の気持ちも考えてくれてもいいと思うのに。

 せっかくの誘いだけれど、私は断った。そして、使用人に部屋に食事を持ってきてもらうよう依頼していると、今度はなぜかイーライがやってきた。

「旦那様が奥様とお食事をしたいと申されています」
「ええ、聞いたわ。さきほど断ったのだけれど、聞いていない?」
「お聞きしましたが、せっかくの機会ですし、一緒に食事されてはどうかと思いまして。旦那様はお忙しいので、次に一緒に食事をする機会はいつになるか分かりませんし」

 そうはいっても、今はルークと一緒に食事をしたい気分ではない。ただ、そう返事するわけにもいかないだろう。

「一緒に食事するにも、お仕着せで出るわけにはいかないでしょう?」
「はい。もちろん着替えていただく必要があります」
「でも、わたくしにはお仕着せしか着るものがないの。さきほど、旦那様に、わたくしが昼に着ていたドレスを見られて怒られてしまったし」
「……怒られた?」

 イーライは怪訝な顔をした。イーライも私に用意されたはずのドレスが、実は私のではないと知らなかったのだろう。

「わたくしのドレスだと思っていたものは、全てわたくしのものではなかったみたい。とにかく、わたくしがバリー家から持ってきたものは寝間着くらいなもので、あとはこのお仕着せくらいしか持っていないでしょう? 旦那様と一緒に食事をする恰好ではないし、旦那様にはお食事を一緒にできないとお断りしてくれる?」
「…………承知しました」

 疑問の表情のイーライだったが、さすが執事はいろいろと飲み込んだのか、返事して出て行った。

 そうこうしている内に、部屋に食事が用意される。嫌なことがあったら、美味しいものをたくさん食べて忘れることだ。
 今日も美味しい料理を、私はじっくり堪能するのだった。
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