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第三章 執着の行方

42 幸せの始まり

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 第二王子が捕まった次の日、プーマ王国にある連絡が届いた。プーマ王国の第二王子が、アシュワールドの王の暗殺未遂を起こしたという驚きの内容だった。

 プーマ王国から寄越された使者がアシュワールド王を訪ね、事実を確認した。第二王子は、国からやってきた使者に「俺のレティツィアを奪った男は死ぬべき」と発狂したように叫び、「早く牢から出せ! 報復してやる!」と捲し立てたという。当然、大問題を起こした第二王子が牢から出されるはずもなく、そのまま牢の中。

 使者から事実を聞いたプーマ王国は、第二王子の身分を即座に剥奪、元第二王子の処分はいかようにもしてくれ、とアシュワールドに処分は全て任されることになった。しかし、未遂とはいえ、王を暗殺とは事が事だけに、実行犯の第二王子を好きにしていい、というだけでアシュワールドが終わりにさせるはずもない。

 プーマ王国の第一王子は王太子となった。これから元第二王子の尻拭いという面倒な仕事は残っているが、オスカーから密かに起こるであろうことを聞いていたため、すでにアシュワールドの使者と政治的な補償の話し合いを冷静に行っている。元第二王子が捕らえられたことは、元第二王子の母であるプーマ王国の王妃や、元第二王子派の貴族たちを抑えつけるのに優位に働いて、王太子は内心オスカーに大変感謝していたのである。

――そして。

 アシュワールド王の暗殺騒ぎから数日、無事にアシュワールドの王宮入りしたレティツィアは、誕生日を迎えていた。つまり、本日はレティツィアとオスカーの結婚式である。

 ヴォロネル王国からは、母、長兄アルノルド、三兄シルヴィオが家族として参加していた。家族全員が参加したいと言い張ったものの、王族が一人も自国に残らないというのは良くない。そこで、チェスにてメンバーを決めたという。

 チェスで負けそうになった王妃は、「わたくしがお腹の中で大事に大事に育てた娘です! わたくしが母として参加しないなど、ありえません!」と泣き落としで王から参加券をもぎ取った。
 三兄弟は、長兄アルノルドがダントツで一位を勝ち取り、次兄ロメオと三兄シルヴィオは接戦の末、シルヴィオが参加券を勝ち取ることになった。

 家族以外では、ヴォロネル王国からは、コルティ公爵夫妻とその子らであるレティツィアの従姉妹のレベッカとラウル、そしてカルロが参加している。ちなみにだが、侍女マリアは結婚後のレティツィアに付いて行きたいという本人の希望で、すでにアシュワールドでもレティツィアの侍女として働いている。

 アシュワールド王が結婚式の日を決めてから、十日と少し。急ピッチで進められていた結婚式の準備は、どうにかこうにか間に合った。代わりに、げっそりとしていたオスカーの部下シリルの苦労がうかがえる。

 レティツィアとオスカーの衣装だけは、婚約が決まった日の次の日に極秘にデザインを話し合い、サイズを測り、レティツィアが着たいウェディングドレスが結婚式の前日に届けられた。急いで作ったとは思えないほどの素晴らしい出来上がりであった。

 アシュワールドの最大の教会では、お祝いムードの中、この国の王とその配偶者となる他国の王女が、大教皇の言葉を聞いていた。

 ウェディングドレスを身にまとった大変美しい花嫁が、横に立つ眉目秀麗な花婿をそっと窺う。それに笑みで答える花婿に、笑みを返す。

 これまで第二王子に苦しめられてきたことから解放されたのだと、まだ実感は薄いが、それでも隣に愛している人がいるのを見ると、これから幸せが待っている現実だけは信じられる。

「それでは、誓いのキスを」

 花婿と花嫁は向かい合う。花婿が花嫁の腰を抱き寄せ、愛情をもって花嫁に深く口づけた。少し長すぎるキスに、花嫁の母は涙を流しながら喜び、花嫁の兄たちは額に青筋を立てていたが、そんなものは愛し合う二人には関係ない。

 キスの後も、余韻で完全に二人の世界の花婿と花嫁を、盛大な拍手が包み込むのだった。



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お読みいただき、ありがとうございました。
本編はここで終わりです。

明日は「その後」ということで、レティツィアの結婚後のちょっとした甘い?お話と、執着第二王子の末路について更新予定です。
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