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第一章 王女を取り巻く環境
01 悪夢の始まり
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ヴェロネル王国の王妃は、三度の出産を得て、二度とあんな大変な出産はもう御免、そう心に誓った。しかし、王、そして三人の王子の希望により、あと一回だけ出産してみようと決心した。
王妃自身も、どうしても可愛い娘が欲しかったのだ。過去、二番目三番目は娘を! と神に願ったが、聞き届けられなかった。しかし、次こそは……!
そして、王妃は最後の出産で待望の娘を産んだ。夫の王、三人の息子の王子たちも大変喜んだ。
娘の王女は王妃と同じストロベリーブロンドの髪と菫色の眼を持ち、王妃に似て大変愛らしく可愛らしかった。
王と王妃、三人の兄王子は王女を溺愛し、国民全員が王族が王女を大変愛している様子を知っていた。国民の大半も王女に好意的で、『我らが王女』と敬愛した。
王女は愛されながらすくすく育ち、十三歳となった王女は大きな愛らしい瞳と可憐な唇、背中まであるストレートの髪を綺麗に流し、歩く姿は清楚で大変美しい。
そんな愛らしい王女の姿が、王女より一つ年上の隣国プーマ王国の第二王子の目に留まった。パーティーの最中に第二王子は王女にこう言った。
「俺の妻にしてやる! 光栄だろう!」
突然の求婚に王女は大変驚いていたが、動揺を飲み込み、笑みを浮かべて口を開きかけた時、第二王子が王女の手をつかんだ。そして王女を無理やり引っ張ると、強引な態度に青い顔で震える王女をそのまま連れて行こうとした。
「妹を離してください!」
王女の兄の王太子が、王女とプーマ王国第二王子を引き離した。震える王女を抱きしめ、王太子が険しい顔で第二王子に口を開く。
「このように強引にどこに連れて行く気ですか!?」
「もちろん、プーマ王国だ。俺の妻にすると言っただろう」
「何を勝手に……妹は震えているでしょう!」
「女は普段からビクビクと震えるものだろう。いちいち気にしない。俺は王になる男だぞ。妻になれるのだから、喜んでついてくるべきだ」
第二王子の騒ぎに、プーマ王国の王弟が第二王子に近づいた。
「何をしている!?」
「叔父上! 俺の妻に相応しい女を見つけました。帰国するときに連れて帰りましょう」
「お前は何を……とにかく、相手は王女だろう。王女は成人していないから連れては帰れない。まずは求婚状を送るのが先だと思うが」
「そんな悠長な! 俺の妻が誰かに盗られたらどうするんですか!?」
「誰かに盗られないためにも、正式な手順で求婚をするべきだろう」
第二王子は納得のいっていない顔だったが、ひとまずは叔父の言葉に従うことにしたらしい。プーマ王国の王弟は苦笑いしながら、子供の言うことだから大目に見てくれと言うので、その場は王太子が穏便にことを収めた。
そして時は過ぎ、王女は現在十七歳。
護衛を連れて王宮の廊下を進む王女は、とある部屋の前に立った。扉の前に経つ騎士が部屋の住人に声を掛けた後、扉を開けてくれる。王女は護衛と共に部屋の中に入るのだった。
王妃自身も、どうしても可愛い娘が欲しかったのだ。過去、二番目三番目は娘を! と神に願ったが、聞き届けられなかった。しかし、次こそは……!
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「このように強引にどこに連れて行く気ですか!?」
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「何を勝手に……妹は震えているでしょう!」
「女は普段からビクビクと震えるものだろう。いちいち気にしない。俺は王になる男だぞ。妻になれるのだから、喜んでついてくるべきだ」
第二王子の騒ぎに、プーマ王国の王弟が第二王子に近づいた。
「何をしている!?」
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「お前は何を……とにかく、相手は王女だろう。王女は成人していないから連れては帰れない。まずは求婚状を送るのが先だと思うが」
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そして時は過ぎ、王女は現在十七歳。
護衛を連れて王宮の廊下を進む王女は、とある部屋の前に立った。扉の前に経つ騎士が部屋の住人に声を掛けた後、扉を開けてくれる。王女は護衛と共に部屋の中に入るのだった。
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