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ビッチ(処女)、騎士様のグレートドラゴンにビビる

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 俺の思い付きの、王都乗っ取り計画は実行前にうやむやになってしまった。確かに思い付きではあったけど、なかなかいい感じだったと思うんだけどなぁ。
 可愛い上に高い魔力で放たれる魅了魔法……これ最強でしょ。俺の可愛さで男は骨抜きになり、女子供は赤ちゃん使い魔に夢中になる。
 やっぱ可愛いは最強。これぞ正義。このアシュリー様に死角はないわけだ。

「アシュリーの肌はとても美しいな。この色がたまらなく素敵だ」
「はひ……いつも綺麗にしましゅ……っ」

 セオドアが低い声で囁き、俺は骨抜きになっていた。
 俺、チョロすぎ。こいつには俺の魅了魔法が通じない。俺がこのイケメン騎士様に魅了されちゃってるせいかもしれない。
 ソファーに座って頬や首を指でなぞられてるだけなのに、もう俺は蕩けてる。
 夕食の後、風呂の準備が終わるまで俺とセオドアは部屋で寛いでいた。食事の時はきっちり着ていた服の胸元をだらしなく開き、厚い胸板を惜し気もなく晒すセオドアは、あまりにも毒気が強すぎた。
 鍛えた男にしか出せない色気が、これでもかというほど漂っている。甲冑姿でも仕事用の貴族服でも見ることができない、セオドアの肌……溢れ出る彼のフェロモンは俺の魅了魔法の比ではない。
 さっきから猫みたいに顎をすりすり撫でられてるけど、俺は膝をぴったりくっ付けて「はふぅ……っ、んふう……っ!」と気持ち悪い鼻息ばかりを出していた。俺、きめぇな。

「……アシュリー、君に伝えなければならないことがある」
「な、なな……なんだよ」
「アシュリー……」

 長い指が顎を持ち上げ、澄んだ青い瞳が俺を見つめる。夏空にも似たその瞳に、目を丸くした俺が映っていた。
 どうしよう、体が熱い。動悸が止まらない。囁きは甘い痺れとなって俺を拘束した。

「君は……服を脱がなければならない」

 やだ騎士様、大胆!
 いくら二人きりだからって、いきなり脱ぐのを強要だなんて……出来れば一枚一枚脱がしてください。あ、でもその前にチューから始めたいな。いやいや、俺たちまだ手すら繋いだことないのに……。とにかく心の準備がまだなのに!
 そりゃ俺は可愛いし色気抜群だけど、まだ男を知らない無垢な体だ。

「そ、その……優しくしてください」
「もう風呂の準備が終わったというベルが鳴った。さぁ、一番風呂のために服を脱がねばな」

 そっちかい。ベルなんていつ鳴ったんだよ。あれか、俺の鼻息がすごすぎて聞こえなかっただけか。その可能性は充分にある。
 爽やかな笑顔を浮かべるセオドアが、たまらなく憎らしく……愛しくなった。ちくしょう、こいつ、本当に顔がいい。
 俺は一番風呂をいただくため、とぼとぼと部屋を出たのだった。


 この屋敷の風呂はやたらと広い。内装は質素だが、それなりの広さがある。セオドアだけでなく、使用人たちも使うから複数人で入ってもいいように作られているらしい。
 熱い風呂に体を沈め、大きな溜め息をついた。ここに来てからというもの、俺は騎士様に振り回されてばっかりだ。魔王軍にいた頃は、俺が誰かを振り回す側だったというのに……人間側にあんな手強い奴がいたとは。しかも顔がいい。恐ろしい奴だ、セオドアは。この可愛いアシュリー様をドキドキさせるなんて。抱かれるのをマジで覚悟したぞ。
 湯気で白く煙る視界に、ふと黒い影が見えた。誰か入ってきたようだ。
 しかし、俺やセオドアが風呂に入る時間は使用人の入浴は禁止されている。
 ちょっぴりビクビクして身構えていると、聞き慣れた声がした。

「やあ、アシュリー。湯加減はどうだい?」

 なんでセオドアが入って来るんだよ。湯けむりの中から、がっちりとした逞しい肉体が露になった。

「な、ななな……なんで入って来てんだよ!」
「裸の付き合いというものは素晴らしいものだぞ。それにさっき君は優しくしてくれと言っていた。優しく私が背中を流してやろうじゃないか」

 そういう意味じゃねえよ。でもそんな爽やかに綺麗に微笑まれたら、バカ野郎とっとと出ていけなんて言えない。何より、顔がいい。
 湯船に入ろうとこちらにやって来たセオドアを見上げて、彫刻のような肉体美に見とれてしまった。
 しかし、腰に巻かれた布が……はらりと落ちた。
 現れたソレに、思わず息を飲む。

 なんだ……このロングソードは。

 萎えててこの大きさなの?もうこれグレートドラゴンじゃん。バスタードソードじゃん。闇属性消滅させる王者の剣じゃん。
 これと比べたら俺のなんてドジョウじゃん。

「おっと、落ちてしまったか。恥ずかしいな。ははは」

 恥じらうなら早くそのウルフを隠しやがれ。
 湯船に一緒に入りながら、悶々とセオドアのグレートドラゴンのことを考えてしまった。
 今の状態であの大きさなら、究極完全体になったらどうなっちまうんだろう。間違いなく俺の慎ましいアレには入らない。絶対死んじゃう。もしセオドアとしっぽりにゃんにゃんすることになったら、俺は薬草バリバリ齧りながらヤるしかない……今のとこヤる予定なんてないけど。

「やはり一日の終わりは風呂に限るな。アシュリー、君とはもっと裸の付き合いをしたいな……」

 後ろから抱き締められ、びくっと体が跳ねた。俺の腰に……グレートドラゴンが当たっている。眠れる古代巨竜がそこにいる。これは絶対に目覚めさせてはいけない、古の魔竜だ。目覚めさせたら最後……滅んでしまう、俺の尻が。
 赤くなったり青くなったりしている俺の気持ちなんて知らずに、セオドアはそれはそれは丁寧に俺の背中を洗ってくれた。
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