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最終章前編 それぞれの反応
9 柳サイド
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おうちゃんのいる病室は個室らしくシーンとした廊下がいやに冷える。
ちょうどおうちゃんの病室を開けようとした時、ドアが開いた。
驚いて開けた人物を見るとスーツを着た男の人も驚いた顔で立っていた。
「君は…。神笠君の知り合いかな?」
「あ…はい。おうちゃんの従兄弟です」
「そうか。僕は神笠君の担任の坂下です」
「担任?…先生!おうちゃんは!?おうちゃんは無事ですか!?」
先生にそう聞くとその人はシーッと言いながら部屋から出た。
「君、まず落ち着いて。ここは病院だから他の患者さんもいるんだよ。大きな声を出さないで」
焦る気持ちはあるが先生の言ってる事は最もなので素直に謝る。
「神笠君は大丈夫だよ。まだ意識は戻ってないけど頭を打った際に脳震盪を起こして、さらに熱も高かった為に意識を失ったんだろうって。しばらくすれば意識も戻るだろうから大丈夫ってお医者様が言ってたよ。意識が戻り次第、1週間くらい様子見で入院するらしいけど後遺症もないだろうって。」
先生の言葉を聞いて体の力が抜ける。
早くおうちゃんの顔が見たい。
「先生、おうちゃんの顔を見てもいい?」
「あぁ…いいよ。ご両親に連絡したら今からこっちに向かうって言ってたから多分オーストラリアからだと8時間くらい掛かると思うし僕はいったん、学園に戻るよ。またご両親が着き次第、説明に戻って来るね」
そう言って先生は去って行った。
それを見送り、おうちゃんのいる病室のドアに向き直る。
震える手でドアを開けた。
カーテンで仕切られている為、まだおうちゃんは見えなかったが薬の匂いが鼻をかすめた。
カーテンを開けるとそこには頭を包帯で巻かれ、腕には2本の点滴と繋がれたおうちゃんが目を閉じ横になっていた。
それを見た瞬間、我慢していた涙が次から次へと溢れ出て来た。
その姿が何だか痛々しくて胸が張り裂けそうになった。
「おうちゃん…」
すぐにおうちゃんの隣に座り点滴と繋がれていない方の手を握った。
「おうちゃん…早く目を覚まして…。おうちゃんの笑った顔とかやっくんて呼んでくれる声を聞きたいよ…」
そう言いながらおうちゃんの手に自分の顔を押し付けた。
何時間経ったのだろう。
ずっとこの体制でおうちゃんを見ていた。
いつの間にか涙は止まっていて頭を刺激しないようにソッと撫でたり握っている手を撫でたりした。
1回だけ看護師さんが点滴を交換しに来てくれた。
意識が戻ったら呼び出しボタンを押して下さい。と言い、すぐに出て行った。
時々、おうちゃんに意識が戻るよう呼びかけたりもした。
何回目か分からないくらいおうちゃんの名前を呼んだ時、ピクッと手が動いた。
ハッとしてまたおうちゃんを呼んだ。
するとゆっくりと瞼が上がっていき、綺麗な青色の目が見えた。
「おうちゃん!!」
嬉しくて叫んでしまった。
「あれ…やっ…くん?」
「そう!そうだよ!!おうちゃん!おうちゃん!」
抱き着きたい衝動を抑え、握っている手をギュッとして何度もおうちゃんを呼んだ。
「やっくん…あれ?」
おうちゃんは自分の状況がまだ分かっていないのか首を傾げている。
聞いた話をおうちゃんにしながら今の状況を説明した。
「そっか…。海斗先輩が…。やっくんもありがとう。心配かけてごめんね」
おうちゃんが申し訳なさそうに謝った。
ブンブン頭を振り、そんな事ないことを伝える。
おうちゃんの意識が戻った為、ナースコールを押した。
それから看護師さんとお医者様が来ておうちゃんの目に光を当てたり手が動かせるか確認したりした。
安心してみんなに連絡するのを忘れてた。
ちょうどおうちゃんの病室を開けようとした時、ドアが開いた。
驚いて開けた人物を見るとスーツを着た男の人も驚いた顔で立っていた。
「君は…。神笠君の知り合いかな?」
「あ…はい。おうちゃんの従兄弟です」
「そうか。僕は神笠君の担任の坂下です」
「担任?…先生!おうちゃんは!?おうちゃんは無事ですか!?」
先生にそう聞くとその人はシーッと言いながら部屋から出た。
「君、まず落ち着いて。ここは病院だから他の患者さんもいるんだよ。大きな声を出さないで」
焦る気持ちはあるが先生の言ってる事は最もなので素直に謝る。
「神笠君は大丈夫だよ。まだ意識は戻ってないけど頭を打った際に脳震盪を起こして、さらに熱も高かった為に意識を失ったんだろうって。しばらくすれば意識も戻るだろうから大丈夫ってお医者様が言ってたよ。意識が戻り次第、1週間くらい様子見で入院するらしいけど後遺症もないだろうって。」
先生の言葉を聞いて体の力が抜ける。
早くおうちゃんの顔が見たい。
「先生、おうちゃんの顔を見てもいい?」
「あぁ…いいよ。ご両親に連絡したら今からこっちに向かうって言ってたから多分オーストラリアからだと8時間くらい掛かると思うし僕はいったん、学園に戻るよ。またご両親が着き次第、説明に戻って来るね」
そう言って先生は去って行った。
それを見送り、おうちゃんのいる病室のドアに向き直る。
震える手でドアを開けた。
カーテンで仕切られている為、まだおうちゃんは見えなかったが薬の匂いが鼻をかすめた。
カーテンを開けるとそこには頭を包帯で巻かれ、腕には2本の点滴と繋がれたおうちゃんが目を閉じ横になっていた。
それを見た瞬間、我慢していた涙が次から次へと溢れ出て来た。
その姿が何だか痛々しくて胸が張り裂けそうになった。
「おうちゃん…」
すぐにおうちゃんの隣に座り点滴と繋がれていない方の手を握った。
「おうちゃん…早く目を覚まして…。おうちゃんの笑った顔とかやっくんて呼んでくれる声を聞きたいよ…」
そう言いながらおうちゃんの手に自分の顔を押し付けた。
何時間経ったのだろう。
ずっとこの体制でおうちゃんを見ていた。
いつの間にか涙は止まっていて頭を刺激しないようにソッと撫でたり握っている手を撫でたりした。
1回だけ看護師さんが点滴を交換しに来てくれた。
意識が戻ったら呼び出しボタンを押して下さい。と言い、すぐに出て行った。
時々、おうちゃんに意識が戻るよう呼びかけたりもした。
何回目か分からないくらいおうちゃんの名前を呼んだ時、ピクッと手が動いた。
ハッとしてまたおうちゃんを呼んだ。
するとゆっくりと瞼が上がっていき、綺麗な青色の目が見えた。
「おうちゃん!!」
嬉しくて叫んでしまった。
「あれ…やっ…くん?」
「そう!そうだよ!!おうちゃん!おうちゃん!」
抱き着きたい衝動を抑え、握っている手をギュッとして何度もおうちゃんを呼んだ。
「やっくん…あれ?」
おうちゃんは自分の状況がまだ分かっていないのか首を傾げている。
聞いた話をおうちゃんにしながら今の状況を説明した。
「そっか…。海斗先輩が…。やっくんもありがとう。心配かけてごめんね」
おうちゃんが申し訳なさそうに謝った。
ブンブン頭を振り、そんな事ないことを伝える。
おうちゃんの意識が戻った為、ナースコールを押した。
それから看護師さんとお医者様が来ておうちゃんの目に光を当てたり手が動かせるか確認したりした。
安心してみんなに連絡するのを忘れてた。
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