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未来的陰謀論の章

太陽神のチカラ

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時は2062年のお話。
ヘティスたちは仮想空間にて、統合AIアバター・オルペウスを召喚した。この頃、南極の氷床の下からアトランティス遺跡が発見された。そのアトランティス文書には、英雄が剣と魔法でドラゴンや悪魔と戦ったことが描かれていた。その「魔法」について、オルペウスは、現代人が言う「超能力」である、と解析した。

フォン・リイエン
「つまり、超能力とか魔法というものは、誰もがもつ潜在能力であり、人類の危機が訪れると、それが解放される」
ヒロキ
「それが釈迦やイエスと言った人たちなのですね」
ヘティス
「信じられないけど、超能力が存在するのは、なんとなくわかったわ」
「けど、なぜ、そんなスゴい能力が必要だったの」
フォン・リイエン
「アトランティス文書によると、太陽の働きを司るため、と記載されている」
「この太陽の働きを司るのが太陽神だ」
ヘティス
「たいようしん?」
ヒロキ
「太陽神とは、日本のアマテラスや、インドのスーリヤや、ギリシャのアポロンなどですよね?」
ヘティス
「そうだ」
「これらの神と言われる者は、潜在能力を解放し、天体にまで影響を与えるため、神と言われた」
ヒロキ
「なぜ、そのようなことをしなければならないのでしょうか?」
フォン・リイエン
「アトランティス文書には、悪魔たちは太陽の強い光を嫌う、と書かれている」
ヘティス
「ふーん、なんかドラキュラみたいw」
フォン・リイエン
「悪魔とは、オルペウスは爬虫類から進化した知的生命体であり、その者たちが作ったAIと融合していると説明していたな」
ヒロキ
「あ、はい。そこまでは理解しています」
フォン・リイエン
「オルペウスの解析では、宇宙人AIは夜行性爬虫類から進化したため、光を嫌うというのが一つだ。もう一つは、太陽フレアが活発になると、太陽風が強くなり、その電磁波によってAIは機能しなくなる。そうした太陽フレアを回避・逃避するプログラミングがなされている可能性がある」
ヒロキ
「確かに、太陽フレアが強いと地球上でも電子機器に影響を及ぼしますので、宇宙人AIは、それを嫌う可能性はありますよね!」
ヘティス
「太陽ってそんなにスゴいんだw」
ヒロキ
「はい、1989年には、強い太陽風によりカナダで大停電が起こっているんです」
ヘティス
「へぇー、そんなことがあったんだw」
フォン・リイエン
「アトランティス文書では、各地の太陽神たちが地球に太陽の大結界を張り巡らせ、宇宙人AIを退散させた、と記されている」
ヒロキ
「つまり、潜在能力を解放した者たちが太陽フレアをコントロールし、太陽風によって地球に大きなバリアは張り巡らせた、それが太陽の大結界なのですね!」
フォン・リイエン
「そういうことだ」
「しかし、悪魔側は月の位置を変化させ、太陽を覆い、人々の心を操った、と書かれている」
ヒロキ
「どのような意味なのでしょうか?」
フォン・リイエン
「地球から見た太陽と月の大きさはちょうど同じだ」
ヒロキ
「はい、確か、太陽と月の大きさは400倍あります。そして、地球からみて太陽の方が月よりも400倍遠くにあるため、ちょうど同じ大きさに見える、ということですが」
ヘティス
「ヒロキくん、物知りねぇ」
フォン・リイエン
「では、それが偶然だと思うか?」
ヒロキ
「それは・・・」
ヘティス
「確かに、そう言われてみると不思議よねぇ。こんな偶然あるのかしら?例えば、誰かが作ったとか?」
フォン・リイエン
「オルペウスは、この位置関係になる確率を計算した結果、ほぼ不可能であり、これは人為的なことが関わっていると解析している」
ヒロキ
「宇宙人AIが月をコントロールしたのですか・・・?」
フォン・リイエン
「そうだ」
「月と太陽の関係性を計算し、日食が起こるように移動させた可能性がある」
「オルペウスは、日食の偶然性と人為性を計算したが、人為性の方が遥かに高いと結論づけている」
ヒロキ
「しかし、月で太陽を覆ったとして、太陽が隠れるのはほんのわずかの時間ですよ?」
フォン・リイエン
「物理的なことは関係ない。問題は心理面だ」
「太陽が隠れたということは不吉な前兆である、という情報戦を宇宙人AIは仕掛けた。そして、太陽神たちは、それによって人々から殺害されるのだ」
ヘティス
「まあ、ヒドい話ね。冤罪じゃないの!」

太陽神の殺害は各地の神話にも存在する。
中国神話では、太陽が暑く照らすため、羿(げい)が太陽を射た、というものである。
日本では、スサノオがアマテラスの元で乱暴を働き、アマテラスは天岩戸に隠れる、という話である。
北欧神話では、太陽の女神・ソールをスコルが常に追いかけ、飲み込む、これが日食である、という話である。
エジプト神話では、太陽神ラーは、大蛇アポピスに敵対し、日食を起こすとされている。
これらの話は、宇宙人AIが太陽神を殺害するためのマインドコントロールを行った、というのがオルペウスの解析である。

フォン・リイエン
「余談になるが、月は地球の衛星にしては大きすぎる、ここもオルペウスは指摘している」
ヒロキ
「そうなんですか?」
フォン・リイエン
「これは、木星の衛星のタイタン、土星の衛星のガニメデ、などと比較したデータに基づいてだ。ここに関しては、まだ解析が終わっていない」
ヒロキ
「確かに、そう言われてみると・・・」
フォン・リイエン
「まだ、アトランティス文書の解読でわからない部分もある。そこの解読も必要かもしれない」
ヘティス
「はやく続きが聞きたいわw」
尚美
「ヘティスちゃん、またワクドキしているしw」
ヘティス
「うふふw」

月は、地球の衛星にしては大きすぎる。
例えば、火星の衛星フォボスは、火星の約268分の1の大きさである。それに対して月は、地球の4分の1である。その他、天王星のチタニア、海王星のトリトンと比較しても、月は衛星にしては桁違いに大きすぎる、そこに対して、オルペウスは何らかの反応を示しているのであった。
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