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未来見学の章
スマートベッド
しおりを挟む2020年、不治の病に侵された少女・結海(ゆうみ)はヨットで世界一周をすると決めて航海に出たが、UFOのようなものに遭遇し、なぜか2062年の未来へとタイムスリップすることとなってしまった。そこで、ヘティスと結海は出会った。そして、結海はヘティスの家で同居することとなった。
ヘティス
「うみみん、おはようw」
結海
「おっは~、ヘティ・・・w」
ヘティス
「調子はどう?」
結海
「あのベッド、すごーくリラックスしたw」
「暖かい海に寝ているようなのw」
ヘティス
「身体を温めると免疫力がとっても上がるのよw」
結海
「そうなんだw」
スマートベッドの治療は、1/fゆらぎ、温熱療法、量子干渉レーザーなどである。
ヘティス
「健康度の数値は大幅に改善したわw」
結海
「数値?」
ヘティス
「そうよ。このベッドは、寝ている人の健康を数値化して調整してくれるのw」
結海
「へえー」
スマートベッドは、人体のホメオスタシスを読み取り数値化する。脳波・自律神経・脈拍・深部体温などである。更にfMRI機能によって、患部の状態も確認できる。
ヘティス
「画像を見た限りだと、悪いところはかなり消えてるけどw」
結海
「私の病気はガンだから、そう簡単に治んないわ・・・」
結海は自分の身体にあるシコリを触ってみた。
結海
「あれ、この辺にあったグリグリがないわ・・・!消えてる・・・!」
ヘティス
「でしょ?w」
この時代、ガンは自宅のスマートベッドで、医療機関が遠隔で治療するのであるが、ガンは数日で完治する病気となった。
従来の放射線治療だと、ガン細胞だけでなく、正常な細胞も破壊してしまうため、身体にダメージを受ける。このスマートベッドから放射される「量子干渉レーザー」は、癌細胞のみをピンポイントで破壊するというものである。
「量子干渉レーザー」とは、数カ所から微細な粒子(量子レーザー)を発し、それを干渉させる技術である。量子レーザーは身体もガン細胞もすり抜けてしまうが、患部で干渉することで、微細粒子が粗大粒子となり、その部分の細胞をピンポイント破壊するのである。
結海
「あと、なんだかね、ここで寝てると、何かに包まれているような感じになるの」
「深海に入ったみたいな感じで、まるでお母さんの子宮の中にいるような感じw」
ヘティス
「そうねw低圧酸素注入機能もあるから、そんな感じになるんだと思うw」
嫌気性と好気性の原始生命体が結合し、生物の細胞を形成している。体内に低酸素・酸素不足のところがあると、細胞は嫌気性の細胞に先祖返りしていく。それがガン細胞となる。ガン細胞の増殖は免疫によって抑制されるが、低体温だと免疫力が下がり、癌細胞が処理できずに増え続けることとなる。こうしたことから、酸素注入や温熱も有効かもしれないが、これらには即効性はない。しかし、ガン細胞が増えない内部環境の形成は必要である。スマートベッドは医療機関の医療AIとリンクしており、即効性のある量子干渉レーザーと、長期的な内部環境の治療を結海に行った。
結海
「あと、ヘティが貸してくれたパジャマも可愛くて、素材も気持ちいいし、チョー・サイコーよw」
「けど、よく私にピッタリの服があったわよねwへティの方が身体ちっちゃいしw」
ヘティス
「うみみんのために、昨日つくったのw」
結海
「え?つくった?どうやって?」
ヘティス
「3Dプリンターよw」
結海
「それ、少し聞いたことあるわ・・・w」
「そうなのね、つくれちゃうのね・・・w」
「マジ・マンジだわ・・・w」
ヘティス
「うちの顧問医の日保(ひほ)先生はね、衣服は健康にすっごく大事なんだって言うから、健康度の設定をMAXにして、昨日3Dプリンターでつくったのw」
東洋医学の古典「黄帝内経」では、漢方薬を小薬、鍼灸を中薬、飲食・衣服を大薬としている。東洋医学では衣服は、健康にとって重要とされている。
ヘティス
「素材はシクルとオーガニックコットンの混合よw」
結海
「とっても肌触りがいいわw」
ヘティス
「色は温かみのある淡いピンクになってるのw」
結海
「ピンク、大好きw」
ヘティス
「ヘパが作ってくれたのよw」
結海
「あのAIロボットが?」
ヘティス
「そうよw」
この時代、服は3Dプリンターで個人が自由につくることができる。また、ショッピングは、仮想空間にて等身大アバターに着せ替えを行い、その衣服の情報を買うというものである。DCブランドは仮想空間にてブロックチェーン化され、数量限定のNFT(非代替トークン)となった。
リアル空間のDCブランド商品も、それなりに存在している。リアル空間の商品は、使用すると中古品となり、価値が下がることが多い。しかし、ファッションブランド・トークンは、使用しても当然、劣化することがないため、中古品とはならない。それどころか、価値が上がる場合もあり、資産となるのである。
【解説】
・肌が色を感じることに関して
肌は「オプシン」というタンパク質によって色を感じる。そしてその色や光の感じ方によって、筋肉の緊張度は変化する。これを数値化したのが「ライトトーナス値」である。ベージュやパステルカラーはライトトーナス値が低く、筋肉が弛緩する。
AIロボット・ヘパイトスは、こうした様々な要素から、ヘティスが命令した健康優先の服を作成したのである。
・静電気と経絡の仮説
東洋医学は、体表に経絡というエネルギーラインがある。それは恐らく生体電流と関連し、これが身体の健康に影響を与えると考えられる。化繊の衣服は静電気を起こし、経絡の流れを乱すのではないか、と著者は考える。
・大病に関して
ガンは現在、生命に関わる病であるため、早期発見によって医療機関で適切な治療が行われることが望ましい。大病を軽んじているわけではなく、現在の大病が大病でなくなる未来を願って、本作品を書いていることをお許し願いたい。
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