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未来見学の章
スマートルームの購入
しおりを挟む2020年、不治の病に侵された少女・結海(ゆうみ)はヨットで世界一周をすると決めて航海に出たが、UFOのようなものに遭遇し、なぜか2062年の未来へとタイムスリップすることとなってしまった。そこで、ヘティスと結海は出会い、結海は未来の世界の体験をするのであった。
ヘティス
「そうそう、うみみんのお部屋が必要よね?」
結海
「私のお部屋があるの?」
ヘティス
「ないわw」
結海
「あ、そう・・・wそりゃ、そうよねw」
ヘティス
「パパの部屋があるけど、お仕事の書斎になってるし、パパのベッドで寝るのは嫌だろうし」
ヘティスの父親は北欧出身であり、現在、海外出張と地球外出張で自宅にはいない。
結海
「私は野宿だってしたことあるし、どこでも平気よw」
ヘティス
「大丈夫よw」
「今からうみみんの部屋を買うわw」
結海
「え?部屋を買うって、どういうことぉ?」
ヘティス
「ねぇ、ヘパ」
ヘパイトス@汎用性AIロボット
「はい」
ヘティス
「私の隣のコを画像認識して」
汎用性AIロボット・ヘパイトスは、結海の方に顔を向け、結海のボディスキャンを行った。
結海
「なんか、私のこと見てるんだけどぉ~」
ヘパイトス
「ボディスキャン、終了」
「先ほどスマートグラスで撮影した画像と一致しました」
ヘティス
「これで全身撮影はOKよw」
「ねぇ、ヘパ」
「この子の本名は“結海(ゆうみ)”って言うの。ニックネームは“うみみん”よ」
「年齢は17歳」
「これで登録して」
ヘパイトス
「既存の情報に追加で登録しました」
ヘティス
「じゃ、このコにあったスマートルームを探して」
ヘパイトス
「“結海”は、年齢の割には2020年代のとてもレトロな服装です。高齢者向けのスマートルームを選択します」
結海
「ちょっと、なんで私が高齢者なのよ?まだ17よ・・・!チョーギャルなのに、チョームカつくんだけどぉ?」
ヘパイトス
「言葉遣いも2020年代の懐かしさを感じさせると思われます」
結海
「あのね~、アンタ、私と初対面でしょ~?チョーKYじゃないのぉ~?」
ヘパイトス
「“KY”とはどういう意味だ?」
結海
「“空気読めない”の略語よ!」
ヘパイトス
「検索してみたが、結海はとても古い時代の言葉をよく知っている」
結海
「も~、会話にならないわ!」
ヘティス
「うみみん、このコはAIだから悪気はないのよ~」
「ゆるしてあげてw」
結海
「未来って、こんなイラつくものと会話しなきゃならいのね・・・w」
ヘティス
「まあ、落ち着いてw」
結海
「はぁ・・・」
このようなやりとりをしていると、家が軽く揺れた。
結海
「え?地震?」
ヘパイトス
「スマートハウスの連結が終了しました」
ヘティス
「あ、うみみんのお部屋が今、届いたのw」
結海
「え?部屋が届くって?」
スマートハウスは、部屋の一つ一つがボックス(箱型)になっており、それを販売業者からドローンで空中を運んで来るのである。そのため、増築も減築も簡単に行うことができる。人間が結婚し、二人の住まいを作り、子供ができれば増築をする。そして、子供が成長して家を出れば、簡単に減築が可能である。もちろん、引越しも部屋ごと、家ごと行うことが可能である。そのため、この時代、引越し業者と配送業者は統合されている。更に、家ごとドローンで運んで旅行するサービスも開始されている。
このスマートハウスのモデルルームはメタバース空間にあり、実際に、その部屋に住んで生活するという疑似体験も可能である。そうすることで、部屋の形状や仕切り、家具の配置や模様替えなどは簡単にできる。そうしたシミュレーションを経て、カスタマイズし、購入することも可能である。生活版デジタルツインである。
今回、ヘティスが注文したスマートルームは、結海の生体情報に合わせた部屋となっている。結海にとっての適正な温度・湿度・部屋の色・音楽・香り、様々なものがカスタマイズされている。そうすることで、結海の生体はコンフォートな状態となり、ホメオスタシスが最大化されるのである。つまり、これは、結海にとって健康的な部屋である、と言える。
ヘティスと結海は、注文した部屋に入った。
結海
「キャー、素敵なお部屋w」
「それにいい香り~w」
ヘティス
「どう?気に入った?」
結海
「うん、もちろんよw」
「けど・・・、高いんでしょ?」
ヘティス
「あ、部屋の値段のこと?」
「そんなの気にしないでw」
「来客が来たら部屋を買っていいってパパが言ってたから、パパのカードで買ったわw」
この時代、クレジットカードは物理空間に存在しない。仮想空間にてヴァーチャルカードを発行する。そこにAIロボットを紐付け、人間はAIロボットに命令して注文する。
購入方式は「BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)」である。手数料は一切かからず、企業側が持つ。例えば、あるブランド商品を分割払いにし、分割手数料をとると、結果として売れ残ってしまう。そうなると割引セールをすることとなり、ブランドの価値も下がる。そこでメーカーと販売店が手数料を完全に負担する、という方式が取られるようになったのである。
ヘティス
「それじゃ、うみみんのお部屋も届いたことだし、お風呂に入ってお食事にしましょw」
「明日から早速お仕事よw」
結海
「けど私、病気だし~、大丈夫かな・・・」
ヘティス
「大丈夫、大丈夫w」
「スマートルームで一晩寝れば元気になっちゃうわw」
結海
「う、うん・・・」
二人は食事を済ますと、ヘティスは再び結海を部屋へ案内した。
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