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未来見学の章
未来のスマートドライブ
しおりを挟む2020年、不治の病に侵された少女・結海(ゆうみ)はヨットで世界一周をすると決めて航海に出たが、UFOのようなものに遭遇し、なぜか2062年の未来へとタイムスリップすることとなってしまった。そこで、ヘティスと結海は出会った。
結海
「あれ?さっきから少し思ったんだけど~、信号機ってなくなーい?ぜんぜん、とまんないし~」
ヘティス
「ああ、社会の時間に習ったから信号機は知ってるわw今は自動運転100%の時代だから、信号機なんかないわよw」
結海
「え~、信号機がないの~?超ビックリなんだけど~!」
ヘティス
「全てデジタルツインになってて、仮想空間で制御されてるからw」
結海
「でじたるついん?」
ヘティス
「このリアル空間を仮想空間に投影してシミュレーションする技術よw」
「うみみんは2020年から来たってことだったら、もうその時代にあるはずよぉ」
結海
「そんなの、ぜんぜん知らないわw」
ヘティス
「全てのスマートカーはデジタルツインで仮想空間とリンクしてるの」
「で、どの車がどのルートがいいかをデータセンターから全ての車に指示するの」
「その指示を参考にスマートカーのAIが自動運転するってわけw」
結海
(言ってる意味がよくわかんないわ・・・)
ヘティス
「ちなみにデジタルツインと自動運転によって渋滞ってのもないわw」
「昔はあったんでしょ?車が道路で止まって動けない状態のことを言うんだっけ?」
結海
「渋滞もないの~?」
「それに超静かだし~!」
ヘティス
「そうね、時代劇にガソリン車が出て来て暴走族とかあったみたいだけど、昔の車はスゴい音してたわねw」
結海
「時代劇って暴走族が出てくるんだ・・・w」
この時代、ガソリン車は既に消滅しており、自動車はの多くはEV、太陽光、水素などのハイブリッドで動いていた。そのため、交通量の多い場所でも、2020年代と比べると非常に静かであった。つまり、この時代、騒音問題は存在しない。
ちなみにエネルギー補充であるが、自宅でスマートカーを充電し、外などで急速補充が必要な場合は水素が用いられる場合もある。また、新エネルギーの開発も進んでいた。
結海
「てゆーか、空は車が飛んでるし、あれも自動なの?ぶつかんないの?」
ヘティス
「もちろん、自動運転よw人間が運転したらぶつかっちゃうけど、AIが運転するから、天変地異とかよっぽどのことが起きない限り安全よ」
「ちなみに、交通事故も殆どないわw」
結海
「もう、マジ・マンジなんだけど~!」
ヘティス
「私からしたら、人間が手動運転する方が怖いわ~。昔はお年寄りが手動運転してたり、若い人が無茶苦茶な手動運転したりして、結構、事故が多かったって聞くわ~」
結海
「ふーん、そんなものなのね」
ヘティス
「一応、空を飛んでるのも、ちゃんと空路があって、仮想空間ではバーチャルロードが空にも設定されているから、見えない道を飛行してるの。昔で言う“高速道路”って感じかしら。バーチャルロード代が必要よ」
ヘティスは眼鏡を取り出してかけた。
ヘティス
「これがスマートグラス」
「これをかけると、さっき言ってたバーチャルロードが見えるの」
結海にスマートグラスをかけさせると、その様子が確認される。
結海
「これがバーチャルロード・・・。確かに、空中に道があって、その上をちゃんと飛んでるいるわ」
ヘティス
「でしょ?」
結海
「あ、あの更に上に飛んでいるのは?超スゴいスピードなんだけどぉ」
ヘティス
「あれはロケットよw」
結海
「ロケットって宇宙に飛んでいくものでしょ?」
ヘティス
「そうね、最初はロケットは真上に飛ばすだけだったけど、そのロケットを横方向に飛ばすようになったのw」
「だから日本からアメリカまで1時間で行けるわよw」
結海
「アメリカへ日帰り旅行ができちゃうのね・・・」
その時、車内モニターから警戒信号が表示された。
ヘティス
「あれ、ヘルスメーターに異常があるわ」
「ふむふむ、低体温、自律神経に異常、免疫低下、と・・・」
スマートカーは乗車した人間の情報を常にモニタリングしている。
ヘティス
「結海ちゃん、体温低いわね~。低体温だと免疫が低下しちゃうってAIから注意を受けるわ。それに姿勢に歪みがあるし、呼吸が浅くて不規則だし、心拍も速いし、自律神経が乱れている可能性があるわ」
結海は自分が不治の病であり、少しでも身体が動くうちにヨットで世界一周をしようと旅に出た、ということをヘティスに話した。
ヘティス
「へぇー、だからヨットに乗っていたのね」
結海
「そうなの。あー、世界一周できなくなっちゃったなぁ・・・」
「けど、不思議な世界へタイムスリップしちゃったから、まあ、いっか~」
ヘティス
「で、うみみんの病気って何なの?」
結海
「実は、進行性のガンなの・・・。転移もあるみたいで、お医者さんからは余命1年もないって言われて・・・」
ヘティス
「まあ」
結海
「それに私、家を出ちゃって、学校を中退して、一人で生活費を稼いでたんだけど。生活するだけで精一杯で、治療費までは出せなくて。それで、もうアパートも引き払って、スマホを買い替えて、ヨットを買って、旅に出たってわけ」
ヘティス
「大変だったのね・・・」
結海
「けど、今、面白い体験ができてるし、こうやってヘティとも出会えたし、思い残すことはないわ」
ヘティス
「えーと、そのガンなんだけど」
結海
「いいの!ガンなんて怖くない!覚悟はもうできてるの!」
ヘティス
「治るわよ?」
結海
「え?」
ヘティス
「うちのスマートベッドで1日寝たら治っちゃうから」
結海
「うっそー!信じらんなーい!マジ・マンジー!」
ヘティス
「とりあえず、家につくまでは自律神経を整えるために、車内リラックスモードにしましょw」
「ねぇ、ヘパ」
「車内をリラックスモードにして」
ヘパイトス@汎用性AIロボット
「了解」
ヘティスが汎用性AIロボット・ヘパイトスに命令すると、窓が消え、外の景色が消え、車内には森の映像がリアルに映し出される。風のそよめきや鳥の鳴き声が聞こえ、車内には森の香りのアロマミストが立ち込める。
ヘティス
「緑って癒されるわよね~w」
結海
「何これ~!超森なんだけど~!」
ヘティス
「森の緑は、人間をリラックスさせて自律神経を整えるのよw」
結海
「海も好きだけど、森もサイコー!」
ヘティス
「そっか、結海ちゃんは海の方がいいわね!」
そう言うと、ヘティスはヘパイトスに命令し、車内の景色を海に変えた。
すると、青い海が一面に広がった。どこまで続く水平線が遠くに見え、青い空が広がっている。そして、さざ波の音がコンフォートな世界へと誘う。
このバーチャルな海の景色を見て結海は興奮していたが、やがて、リラックスして眠りについた。
ヘティス
「うみみん、うみみん」
結海
「ん?」
ヘティス
「もうすぐ着くわよ」
結海
「着くって、どこへ?」
ヘティス
「私の家よw」
結海が目を開けると、海の景色は消えており、ヘティスのスマートハウスの前に来ていた。
ヘティス
「ねぇ、ヘパ」
「駐車して」
ヘパイトス
「了解」
この時代のAIはコンテクストを理解でき、「駐車」と「注射」の区別がつく。
もちろん、駐車も自動で行う。
結海
「え?地面が沈んでいってる・・・?」
ヘティス
「そうよ、駐車場は地下にあるの」
結海
「どのお家もこんな感じなの?」
ヘティス
「そうよ」
「少し前の時代は“スマートパーキング”ってのがあって、車が自動運転で近くの駐車場まで行ってくれてたの」
結海
「なくなっちゃったの?」
ヘティス
「そうね、やっぱ自分のお家にあった方が近いし」
結海
「そっかー」
ヘティス
「それとこの地下駐車場は個人シェルターになってるの。そして、この海上都市共通の大規模シェルターにもいけるの」
結海
「個人がシェルターを持ってるの・・・?」
ヘティス
「そうよ」
「もし、大気中に放射能とか漏れても安心でしょ?」
結海
「物騒な話ね・・・」
スマートハウスの入り口には、自動車専用のエレベーターがあり、自動車を感知すると自動的にエレベーターが作動し、自動車を地下駐車場へと運ぶようになっている。地下駐車場は、個人シェルターになっており、更にその地下へは車で大規模シェルターへと乗り入れることができる。
結海
「ここが駐車場兼シェルターね」
ヘティス
「あ、ちょっと降りるのは待って」
結海
「どうしたの?」
ヘティス
「あのパネルの文字が赤から緑になるまで、この部屋にいるの」
結海
「何をしてるの?」
ヘティス
「細菌やウイルス、放射性物質とかを除去するミストと電磁波を放射してるのよ」
結海
「ふーん。何も見えないけど」
パネルの文字が緑となり、二人の安全が確認されたようだ。
結海
「これって除菌なのかな?どのお家もこんなふうになってるの?」
ヘティス
「そうよ」
「私が生まれる前にね、パンデミックとか放射性物質とかが漏れて大変な時代があったみたいなの。だから、今のお家の玄関や駐車場はクリーンルームになってるの」
結海
「放射性物質も無害化できちゃうの?」
ヘティス
「今は正常化したから、放射性物質は滅多に検出しないけど、もしあったとしても時間をかければ除去できちゃうわw」
結海
「へぇー」
結海が車から降りると透明なケースの中に、様々な植物があり、その中を水が循環していた。
結海
「これはなに?」
ヘティス
「水耕栽培よ。ここはシェルターだから、もし災害が起きた時に食料っているでしょ?一応、非常食の備蓄はあるんだけど、やっぱりレタスとか緑のものが食べたいじゃない?」
結海
「あは、そうね・・・」
(そんな時に、そこまでして食べたいのかな・・・)
ヘティス
「あと、お水はミネラルウォーターだから、非常用の飲み水にもなるしねw」
結海
「お水は重要よねw」
ヘティス
「それに、外から帰ってきて、最初に緑の植物たちに“おかえり”って出迎えてもらえると嬉しいじゃない?」
結海
「そ、そうね・・・」
(ちょっとこのコ、変わってるわ・・・w)
ヘティスの母親は、ヘティスを産んですぐに亡くなっている。だから、ヘティスは、母親の記憶がない。物心ついた頃から母親はいないため、それに関して特に寂しいという感情はないのだが、植物と会話するヘティスの心の奥底には、そうした思いもあるのかもしれない。
このようなやりとりをしながら、二人は駐車場からエレベーターで家の中に入って行った。
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