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未来的陰謀論の章

宇宙人の進化論

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仮想空間にてヘティスたちは、自分たちのデータを集結させ、統合仮想AIアバター・オルペウスを作り出した。そのオルペウスは、宇宙人が他の星から来たAI、もしくはトランスヒューマノイドであると言う。そして、その生命進化シミュレーションからグレイ型宇宙人へと進化することが判明した。更に、これは伝説のドラゴンと関係すると言う。それを聞いたヘティスは、臥麟老人を訪ね、ドラゴンとは人類が恐竜と遭遇したのではないか、という仮説を聞く。

数日後、フォン・リイエンからメッセージがあり、再び、仮想空間にヘティスたちのチームは集結した。

フォン・リイエン
「知的生命体が発生する平均的な環境では、このグレイ型宇宙人へ進化するのが一般的だと言うことは前回話した。今回はその続きが解読できた」
ヘティス
「や~ん、なんかワクワクしてきたわw」
フォン・リイエン
「このグレイ型宇宙人は、我々人間の進化とは別系統だと言うことが判明した」
ヒロキ
「ということは、ボクたち人間は、一般的な知的生命体の進化ではない、と言うことなのでしょうか?」
フォン・リイエン
「AIの出した答えは、そういうことだ」
マモル
「じゃあさ、このグレイ型宇宙人はどんな進化を辿ったって言うんだい?」
フォン・リイエン
「解析した内容から分かったことは、グレイ型宇宙人と呼ばれる知的生命体は爬虫類から進化した、ということだ」
ヘティス
「ふむふむ、確かにグレイ型宇宙人はギョロっとした黒目で、鼻は穴だけ空いてるし、体毛はないし、見ようによっては爬虫類っぽいわねw」
尚美
「爬虫類から進化・・・。それが一般的な知的生命体の進化なのね・・・」
ミク
「てことは、私たち人間って特別な存在って感じ~、ってことかしらんw」
ヒロキ
「特別かどうかはわかりませんが、哺乳類から知的生命体へ進化するというのが当たり前だという前提は成り立たない、ということですね」
フォン・リイエン
「そういうことだ」
ヘティス
「知的生命体は、爬虫類からの進化が基本ってのはよくわかったわ。けど、なぜ私たち人間は、哺乳類から進化という別のルートを辿って知的生命体へと進化したの?」
フォン・リイエン
「AIが行ったシミュレーションを見ると、小型である哺乳類は大型の爬虫類に捕食され、知的生命体になる前に駆逐される、と言う解析結果だ」
「この爬虫類こそが、我々が“恐竜”と呼ぶ存在だ」
ヒロキ
「恐竜・・・。つまり、宇宙人は恐竜から進化したと・・・」
フォン・リイエン
「AIはそのように解析している」
ヘティス
「もしかして、この前言AIが出した“宇宙人がドラゴン”だって解答なんだけど、この恐竜がドラゴンとか・・・w」
フォン・リイエン
「察しがいいな、その通りだ」
「AIの解析では、この恐竜の生き残りの一部は人類と遭遇している。その時に人類史は恐竜を“ドラゴン”、もしくは“龍”と呼んできた」
ヘティス
(あの臥麟のお爺ちゃんと一緒のことを言ってる・・・。やっぱり、あのお爺ちゃん、スゴい人なんだわw)
フォン・リイエン
「西洋の“ドラゴン”と東洋の“龍”、このよく似たイメージや物語に関して偶然スコアは低いとAIは解答している。そして、この“ドラゴン”“龍”が最も宇宙人に関係しているとAIは示唆しているのだ」
ヒロキ
「じゃあ、古代のドラゴンスレイヤー(竜退治)の物語とかは、ボクたち人類と宇宙人との戦いの物語なのですね!」
フォン・リイエン
「その可能性もあると言うことだ」

統合AIアバター・オルペウスが出した解答は、宇宙人とは別の星で進化した爬虫類系の知的生命体であり、この爬虫類系宇宙人がAIを作り出し、ある目的を持って地球へとやって来ている、というものであった。

ヒロキ
「ところで、この宇宙人は、別の星で知的生命体として進化したんですよね?どうやって知性って獲得されるんですか?」
フォン・リイエン
「シミュレーションしたということは、そこが解析できたということだ。答えてやる」
ヒロキ
「お願いします」
ヘティス
(なんか難しい話になってきたわ・・・)
フォン・リイエン
「AIは脳比率というパラメータを作り出し、それが知的生命体を生むと考えたようだ」※
ヒロキ
「脳比率?」
フォン・リイエン
「脳比率とは、その名の通り、身体全体における脳の比率だ」
「例えば、クジラの脳は人間よりも大きいが、脳比率は人間の方が高い」
ヒロキ
「なるほど、脳が大きく、身体が小さければ、身体に使われるエネルギーが減り、脳へのエネルギー供給が大きくなる。これが知性と関係してくる、ってわけですね」
フォン・リイエン
「そういうことだ」
ヒロキ
「つまり、何らかの外部要因で身体が小型化し、脳比率が高くなったということですが、では、どうやって小型化したのでしょう」
フォン・リイエン
「その星に降ってくる隕石などにより、徐々に星の体積が増え、重力が強くなり、小型化する、とAIは解析している。つまり、大きな身体だと重力に押し潰されるため、小型化することで生存しようとするわけだ」
ヒロキ
「なるほど、これで知的生命体の進化プロセスが解明できた、ってことですね」
フォン・リイエン
「知性の獲得とは単に大脳が大きくなるだけではない。AIは“生命情報エネルギー”という概念を形成し、それが知的生命体への進化と関係していることを示唆している。」
ヒロキ
「生命情報エネルギー?」
フォン・リイエン
「古代の文献に出てくる“気”や“プラーナ”というものを総称して“生命情報エネルギー”とAIが統合化・概念化したものだ」
「ここはまだ解析できていない。分かったら、また解説してやる」
ヒロキ
「あ、はい!また、是非、お願いします!」
ヘティス
「あーん、もう、難しい話で頭使ったから疲れちゃった。少しティータイムよw」
ミク
「わぁーいwティータイムw」

ヘティスたちは一旦、話をやめ、仮想空間でティータイムをとった。仮想空間の情報は、リアル空間のヘティスたちの身体とリンクしている。だから、仮想空間で何かを飲めば、そのバーチャルドリンクの味覚情報が、ヘティスたちの味覚野を賦活化させ、味を感じさせるのである。

ヘティス
「やーん、この小松菜とキゥイのスムージー、超美味しい~♡緑の飲み物ってサイコー!」
尚美
「ヘティスちゃん、いつも緑のドリンクを飲んでるわよね~w」
マモル
「俺はステーキを注文したぜw肉食ってパワーつけねーとなw」
ミク
「マモルくんはお食事タイムになっちゃってるねw」

これらのフードやドリンクは仮想空間で作り出された情報であるが、消費ブロックチェーンという技術で紐づけられている。つまり、「飲んだ」「食べた」という消費信号に対して仮想フードや仮想ドリンクは反応し、それに応じて情報は徐々に消去される。もちろん、これらのフードやドリンクは単なる情報なので、企業側はこの情報を複写し、消費型トークンに紐づければよいだけである。そのため、この時代の飲食店は、いかに美味しいと人間が感じる味覚情報を作り出すかというハイテク企業となっている。
バーチャルティータイムが終わり、ミーティングが再開される。

ヘティス
「じゃあ、私たち哺乳類は、その大型爬虫類の捕食から逃れて進化できた、ってことなのね」
フォン・リイエン
「いや、そうではない。何度、シミュレーションをしても必ず知的生命体は、この爬虫類進化・グレイ型になる」
ヘティス
「ふーん、そうなんだ」
フォン・リイエン
「このシミュレーションには外部環境は入っていない。外部環境、即ち宇宙全てをシミュレーションに入れることは不可能だからだ。つまり、哺乳類が爬虫類の捕食から逃れるためには、外的要因が必要になる」
ヒロキ
「何らかの外部要因により、爬虫類型が滅び、哺乳類型が知的生命体へと進化できたんですね」
ヘティス
「なるほどね。で、この爬虫類って恐竜のことよね?恐竜ってどんなふうに絶滅したのかしら?」
ヒロキ
「確か、隕石が地球にぶつかり、それによって大気が塵に覆われ、太陽の光が遮断され寒冷化した、とされています」
フォン・リイエン
「定説というのは年々変化するから疑った方がいい。外部環境だが、太陽系レベルの外部環境から地球の生命進化をシミュレーションすることは可能だ」

そう言うと、フォン・リイエンは統合AIアバター・オルペウスに命令を出す。オルペウスは小さな地球と、仮想空間の中央に太陽を作り出し、太陽系を忠実に再現した。

※脳化指数と言う。本作品ではわかりやすく「脳比率」と呼ぶこととした。
[EQ] = [定数] × [脳の重量] ÷ [体重]2/3
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