神々VS人工知能『ミラクル☆HT物語』

静風

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未来見学の章

不思議な出会い

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2020年、不治の病に侵された少女・結海(ゆうみ)はヨットで世界一周をすると決めて航海に出たが、UFOのようなものに遭遇し、なぜか2062年の未来へとタイムスリップすることとなってしまった。そこで、ヘティスと結海は出会うのであった。



結海
「アナタは誰・・・?」
「ここはどこ・・・?」
ヘティス
「あ、生きてる・・・、よかったわ」
「“ここはどこ?私は誰”じゃないから記憶喪失ではないようねw」
結海
「車が空を飛んでる・・・」

結海は複数のドローンによって宙に浮くスマートカーと、そこに乗っているヘティスの姿を見て目を丸くしている。

ヘティス
「飛行モード、解除!」

宙に浮いていたスマートカーは、ゆっくりと水面に降りた。

ヘティス
「私はヘティス。ここは海上スマートシティ“イザナミ”よ」
(陸上民の人なのかな・・・?海上都市を見るのは初めてな感じだけど・・・)
「・・・で、アナタは誰なの?レトロなヨットに、レトロなギャルの格好してるけどw」
結海
「私の名前は“結海(ゆうみ)”、“海を結ぶ”って書くの」
ヘティス
「へぇー、素敵なお名前ね!」
結海
「・・・ありがとう。ところで・・・」
「いざなみ・・・?」
ヘティス
「そうよ、あそこに見える海上都市が“イザナミ”よ。私は、ここの住人w」
結海
「え~、あの超大きい要塞に住んでるの~?」
「マジ、マンジ~!」
ヘティス
「何、その“マンジー”ってのはなんなの・・・」

世界はある時、大洪水に見舞われ、多くの国の平野部は浸水してしまった※。
そのため、各国は領海内に海上都市を建設した。そして、その都市にAIを搭載し、海上スマートシティとなっていったのである。海上都市は領海内と中立海内を、海洋発電や太陽光発電など、自然エネルギーを補助的に用いて動いている。風や波の揺れは、AIがその揺れを打ち消すように、柔構造を用いて設計されている。
海上スマートシティ『イザナミ』は、水面上昇によって日本の国土の多くが浸水してしまったために建造された、日本のスマートシティ第一号である。最初は小さな人工島であったが、増設を何度も重ね、世界屈指の巨大な海上都市へと成長していった。

結海
「・・・と言うわけなの」
ヘティス
「UFOに出会って、空に大きな穴が空いて、吸い込まれてしまった・・・。スゴイ話ね・・・w」
(このコ、大丈夫かしら・・・?それとも、嘘ついているのかしら・・・?)
結海
「も~、チョベリバよね!」
ヘティス
(チョベリバって、何時の時代の言葉かしら・・・w)
結海
「・・・とりあえず、マミーに電話しなきゃ。最新の防水スマホなんで、水浸しでも全然壊れてないわ!」

と言って、結海はスマホを取り出し、母親に電話をかけようとしたが、電話が通じない。

結海
「・・・あれ、変ね。電話が通じないわ」
ヘティス
「何それ。もしかして、スマートフォン?初めて実物を見たわwそんな古いもの、どこのアンティークショップで売ってたの?状態もいいし、多分、すごいプレミアついてそうだけどw」
結海
「古い?古くなんかないわよ!携帯ショップで買ったばかりの超最新式のスマホなんだから!」
ヘティス
「ん?今の時代、スマートフォンなんか誰も使わないし、サービス終了してるわよ」
結海
「え、、、どういうこと・・・」
ヘティス
「なんか、私たち、話が噛み合わないわね・・・」

少しの間、お互い見つめあって沈黙した。

ヘティス
「とりあえず、ヨットは後で自宅に帰ったらドローンで回収してあげるから、アナタはこちらに乗って」
結海
「あ、ありがとう・・・」

結海がスマートカーに乗り込むと、中は席が向き合っており、リムジンのようになっている。そして、目の前に一人、男性がいる。



ヘティス
「この子はヘパイトス。私の専属ロボットよ」
結海
「ロボット・・・?人間じゃないの・・・?」
「それに、この車、運転席がないんだけど・・・」
ヘティス
「当たり前じゃないの。だって、自動運転だもん」
結海
「自動運転!?そんなことできるの?」
ヘティス
「逆に、手動運転なんか出来るスマカーってあるの?」

再び、噛み合わない会話をしたため、二人は口を閉じた。ヘティスは自宅へ帰るようにスマートカーに命令すると、車体はゆっくりと浮いて、海上を飛行した。

結海
「車が空を飛ぶなんて・・・、なんか夢を見ているようだわ・・・」
ヘティス
(この子、演技じゃなくって、本当に驚いているみたい・・・)
「ところで、私と同い年くらいだと思うんだけど、結海ちゃんはいくつなの?」
結海
「2003年生まれのピチピチの17歳よ!」
ヘティス
「私も17歳なんだけど・・・、17歳なら2045年生まれのはずよ。もう、いい加減、冗談はやめてよね~」
結海
「2045年って・・・、だって、今2020年でしょ?」
ヘティス
「何言ってるの?今は2062年よ」

再び沈黙が走る。

ヘティス
「ねぇ、ヘパ。彼女の画像解析はしてる?」
ヘパイトス
「はい、してます」

汎用性AIロボット・ヘパイトスは、常に360度の画像解析を行っている。

ヘティス
「微表情分析をして。彼女は嘘をついてる確率を出して」
ヘパイトス
「了解」
結海
「嘘って・・・、私、嘘なんてついてないわよ!」

人間の表情筋は、大脳基底核の影響を受けるため、嘘をつく場合、それは微細な表情に現れる。ヘパイトスの人工知覚(AP)は、この微細な変化を画像解析することができるため、嘘をついているかどうかを99.99%の正確性で解析することができるのである。

ヘパイトス
「画像解析完了」
ヘティス
「数値を教えて」
ヘパイトス
「彼女が嘘をついている可能性は、0.02%です」
ヘティス
「・・・つまり、嘘ではない、ってことね」
結海
「なんで、こんな意味不な嘘つかなきゃいけないのよ!」
「チョー意味不!」
ヘティス
「・・・てことは、もしかして、これは」
結海
「これは・・・?何のよぉ・・・?」
ヘティス
「タイムスリップよ!」
結海
「タイムスリップ~?」
ヘティス
「結海ちゃん、アナタは2020年から2062年へとタイムスリップしちゃったのよ!」
「そのUFOってのは多分、未来人が載っているタイムマシンってヤツで、それに巻き込まれちゃったのね、きっと!」
結海
「え~、超マジマンジなんだけど~!」

結海はヘティスに、そのように言われることで、徐々に現状を受けるようになった。

結海
(確かに、要塞みたいなの海に浮かんでたり、空飛ぶ自動運転の車があったり、このヘティスってコの言ってることで解釈すると辻褄が合うわ・・・)
(タイムスリップなんて、とても信じられないけど・・・)
「で、私はこの未来の世界に来て、これからどうすればいいの?元の世界に戻れるの?」
ヘティス
「ん~、流石にまだ現在の最先端科学でもタイムマシーンは完成していないの。まあまあ、いいところまではいっているみたいなんだけどね」

タイムマシーンは、時空間にワームホールを発生させるのであるが、それには大きなエネルギーを宇宙空間で発生させなければならない。そして、そこを通る場合、凄まじい重力が機体にかかるため、真空エネルギー制御という技術が必要になるのであるが、それがまだ成功したばかりである。機体には汎用性AIロボットを載せての実験であったが、数分間過去や未来の宇宙の映像を確認することができた、と報告されている。

ヘティス
「・・・てわけなの」
結海
「ふーん、言ってることの半分も理解できないんだけど、タイムマシーンはまだダメってことはわかったわ」
「・・・じゃ、私はどうすればいいの~。も~、チョベリバ・チョベリブ~」
ヘティス
「ナニ、その“チョベリバ”“チョベリブ”って」
結海
「え~、知らないのぉ?“超ベリーバット”と“超ベリーブルー”の略よw」
ヘティス
「昔は、そんな言葉が流行っていたのね・・・w」
結海
「ちょっとぉ、ヘティ~、今、私のこと、バカにしたでしょ?もう、マジマンジなんだから~!」
ヘティス
「へティ~?」
結海
「略して“へティ~”よ」
ヘティス
(ギャルって種族は略す文化を持っているのね・・・w)
結海
「それとも“ヘティス”だから“HT(エイチティー)”がいいかしら?」
ヘティス
「“エイチティー”って、それ、略してるんじゃなくて逆に文字数が増えているんじゃ・・・w」
結海
「わかったわ、じゃあ、へティね!決まり!」
ヘティス
「じゃ、結海ちゃんは、海って字が素敵だから“うみみん”って呼ぶわ!」
結海
「うみみん・・・、カワイイのかな・・・」
ヘティス
「うみみん、カワイイわよw」
結海
「そう、じゃあ、それでいいわw」
「で、私はこれからどうすればいいの?」
ヘティス
「そうね~、とりあえず、うみみんは私のお友達ってことでパパに頼んでID登録しておくから、来客扱いで入国できるようにしておいてあげる」
結海
「・・・よくわかんないけど、ありがとうw」
ヘティス
「で、ウチで働いてもらうのw」
結海
「え~、私、高校生よ?働くのぉ?」
ヘティス
「多分、働いてもらう方がID登録がしやすいの」
結海
「ふーん、まあいいわw」
ヘティス
「それに、この時代の高校生は、働くことが勉強よ。昔のお勉強は、何かを記憶するだけでしょ?ああ言うのは脳に直接、情報をダウンロードできるようになったから勉強する時間が必要ないの。寝てる間にできちゃうから、文字通り“睡眠学習”ね」
結海
「そんなことができるんだ・・・。もう、マジマンジだわ・・・」



※世界同時大洪水の原因は地球温暖化であると言われているが、実のところわかっていない。温暖化が原因であるならば、水面は少しずつしか上昇しないはずである。
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