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未来的日常の章

5.入学式

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少し話は遡り、2061年、ヘティスは中学を卒業し、名門校であるHT学園に入学した。
成長期を過ぎるとスマートチップの入れ替えか、スマートアイテムの変更が国によって義務付けられていた。

ヘティス:
「何このダサい制服!いつの時代の制服なの???」
「パパ~、こんなダサいの私着ないよ?」
「もうね、私も立派なレディなんだから!」

トールビョン(ヘティス父):
「ヘティス~、超プリティ~だよ~!」
「キミは世界一キュートだよ~!」
「キミが着れば、どんな制服もカワイく見えてしまうのさ~!」

ヘティス:
「ぇ、そう?」
「やっぱ?」
「そりゃ、私が着れば何でもカワイく見えちゃうわよね♡」

トールビョン
「そ~だよ~、ヘティス~、ママに似て、キミは超ハイパー美人だよ~」

ヘティス
「ママ・・・」

ヘティスの母親は、海外で女優・モデルをしている時代もあり、とても美しかった。その22歳の時の美しさが写真家に撮られたことをきっかけに、モデルとしてアメリカでデビューすることとなった。

母親はヘティスを生んですぐに亡くなった。だから、ヘティスは母親の温もりを知らずに育ってきた。
残されたこの写真の美しい母の姿は、ヘティスの心の中に常にあった。そのため、その母親の美しく長い黒髪の影響もあり、ヘティスも、この時まで髪を長くしていた。

ヘティス:
「ところでパパ」
「ママは何しに海外に行ったの?」

トールビョン:
「ん~、それは~、いわゆる、一つの~」
「ライフイノベーション!」
「だね~!」

ヘティス:
「ライフイノベーション?」
「何それ?」
「食べ物?ではなさそうね・・・」

トールビョン
「ライフイノベーションは~」
「何て説明したらいいかな~」
「つまり~、ライフを~、イノベーションするのだよ~」

ヘティス
「何ソレ、わかんない」

トールビョン
「つまり、自分を変える、ってことだね~」

ヘティス:
「へ~、そうなんだ!自分を変えるためにお母さんは海を渡ったのね!」
「私もライフイノベーションする!!」
「てことで、まず、このカラコンとるね!もう着けないんだから!ありのままの私でいく!」
「髪を黒くするのもやめるわ!」

と言いながら、ヘティスはカラーコンタクトを外した。茶色だった目は、美しいグリーンの瞳に変化した。
緑色の目の人間は、稀に北欧人や、日本だと東北にいるとされる。そのハーフであるヘティスの目は美しい緑の瞳だった。この茶色のカラーコンタクトは、父親が差別を受けないようにヘティスに子供の頃からしていたものだった。

ヘティス:
「この制服もやっぱ好みじゃない。3Dプリンターで変更してくる~」

ということで、ヘティスの制服の色は瞳の色に合わせて緑になった。

「緑が好き♡やっぱ服は緑よね~♡」

ここで、ヘティスのスマートアイテムも紹介しておこう。
ヘティスの首にはスマートチョーカーがある。スマートチョーカーには様々な機能があるが、主な機能は声の変換である。ヘティスは猫と犬を飼っているが、彼らに話しかける時に、この自動音声変換機能を使い会話をする。
また、頭部につけているのがスマートカチューシャ である。これは動物の声を人間の言語に変換し、聴覚野に直接、情報伝達させるという機能がある。
こうしたスマートアイテムの機能については、また今後、解説していこう。

ヘティス:
「私、髪の毛切る」
「だって、私はママじゃないもの。私は私。私の人生を生きることにするわ。」

ということで、今のヘティスになったのである。



ヘティスの心の中には「ライフイノベーション」という言葉が残った。

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