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元禄編
6.新たな花の流れ
しおりを挟む先ほどまで立ち込めていた暗雲を消え去り、遠くには微かに美しい山が聳えていた。
その山を蓮也はいつの間にか眺めていた。
蓮也
「・・・あの山は?」
一雲
「あれは富士山じゃ。日本一高い山と言われておる」
「蓮也さんのお国にはどこじゃ?エゲレスか?オランダか?」
蓮也
「ロータジアだ」
(と言っても、今はもうないが・・・)
一雲
「さてはて、知らん国の名前じゃのぅ」
ヘティス
(あのバカ、一雲おじいちゃんがそんなこと分かるわけないのに、まともに答えてるわ・・・)
一雲
「そうじゃ、相抜けになったことであるし、せっかくなのでワシから認可を与えよう!」
蓮也
「そのようなものには興味はない」
一雲
「そう言わずに、お国に帰って、今日得た相抜けを広めるとよいぞ」
蓮也
「気が向いたらな」
一雲
「そうじゃ、ワシと金子さんと連名で認可することにする!いいかのぅ、金子さん?」
夢幻
「私は構いませんが・・・」
一雲
「そうじゃ、それとせっかくなので流派名も贈るぞ!」
ヘティス
(あはは・・・この一雲おじいちゃん少しお節介かもw)
(こんな感じだと、もしかしたら、円四郎さんも少し引いちゃっているかもね・・・)
一雲は若く才能溢れる蓮也を見て、かつての円四郎とを重ねてみているかもしれない。
この「円四郎」という名前も一雲が贈ったものであるとされている。
“心をもって視る・聴く・言う・動くの四つのことが、即ち円(まどか)なり”
という意味が「円四郎」と言う名に込められている。名付け親とでも言うべきか、そこには一雲の相当の愛情が込めれれていたに違いない。しかし、それを円四郎がどのように捉えていたのかはわからない。
一雲は少し閉眼してから遠くを見つめた。
遠くには美しい富士の山がいつにも増して輝きを放っているように思えた。
一雲
「おぉ、あの山じゃ。相抜けした後、あの富士の山が浮かび上がり、この者を祝福したに違いない」
「そして、あの山に座すお方は木花咲耶姫様じゃ。」
「木花咲耶姫様の祝福が、この者にあらんことを」
蓮也
(木花咲耶姫だと・・・?ということは、あの山は・・・)
一雲
「そなたの今の神気は凄まじいが、陽気のみであり、剛の剣じゃ。金子さんの幽玄の構えのように陰の気を調養すれば、即ち無敵となーる!」
一雲
「それを奥義とし“此花神伝流兵法”を名乗るとよいであろう」
「必ずや、木花咲耶姫様の加護が受けれようぞ」
そのように一雲が神妙に言うと、興味がないと言っていた蓮也が反応した。
蓮也
「此花神伝流・・・!」
「いいだろう、それをもらい受けることにする」
ヘティス
(あれ?蓮也、めずらしく素直じゃないの。何か関係あるのかしら?けど、“此花”って蓮也の苗字よね・・・。偶然ってあるのね~)
こうして、蓮也は小田切一雲・金子夢幻連名による認可を受け、此花神伝流兵法初代伝承者となった。この此花神伝流は、この後、過去に持ち帰り、蓮也二世が別伝で子孫へと一子相伝で継承されることとなる。そして、それは後々、意外な意味を持つこととなるのであるが、それはまた別の話である。
一雲
「今日はもう遅いので、ここに泊まっていきなされ」
ヘティス
「わぁい、ありがとう!」
ヘティス一行は一雲のところで一泊した。その時、夜通し話したことがあったらしく、蓮也にとって重要な一日となった。
そして、次の目的地、真里谷円四郎のところへ出発するのであった。
ヘティスの調査では、一雲と夢幻のレーティングが人間の常識(70~100ポイント)を超えた数値の9000ポイントであるが、円四郎は10000ポイントを超えると言う。このAIの出したレーティングが本当かどうかは、彼に会ってみないとわからない。
そうしたところで、ゲーム好きのヘティスは少し興味津々であった。
そして、蓮也は、天才・真里谷円四郎に勝つことができるのであろうか。
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