幻想神統記ロータジア(パラレルストーリーズ)

静風

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列伝

タリオン伝『相場の魔術師から宰相へ』

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ロータジア王国には宰相・軍師・元帥の三つの最高権力がある。今回は平民から登りつめた宰相ダニング・タリオンである。

タリオンの出自は不明のところが多いが、泰斗王の時代になってから、ロータジア城下の町に住み着いた移住者らしい。大変頭がよく知識が豊富で、生計は株の売買で立てていた。彼が株を買うと、その株は上がり、彼が売るとその株は下がり、下がった時は空売りで財をなした。そのため彼を人々は「相場の魔術師」と呼んだ。

泰斗王の時代、経済は大蔵省が担当したが、そこでは株式運用も行われていた。そこには優秀な人材が集められたので、泰斗王の時代は経済が潤った。泰斗王は戦争は苦手だったが、国を豊にするという意味では先王円也より長けていた。そして、泰斗王にもタリオンの噂は次第に耳に届き、王直々に呼び出した。そして、大蔵省の淮官僚ではなく少官僚として登用した(淮官僚が最下級である)。

そこからタリオンは省内の株式運用でも、その辣腕を振るい、収益を上げた。そこから中官僚、大臣まで数年で昇進した。宰相になるには、大臣の中から国民投票で民主的に選出される。このタリオンが宰相になったのは、国民の投票による直接民主制によるものであった。

タリオン以前に宰相であったのは薫風であった。彼は外交や交易で国を安定させていた。薫風の外交によってロータジア北部の小国とは良好な関係にあるが、タリオンになってからは、経済面では潤ったが国外へは不安を抱えることになる。
軍師は兵法・天文地理に通じ、戦略・戦術を練る役割であり、国王・元帥・宰相を補佐する。軍師からは北部小国へと外交するように宰相タリオンへ働きかけをしたが、外交費の関係でこれを却下した※1。
そのため、その時の軍師・元帥からはタリオンへの罷免権が発せられたが、王はこれを却下したのである※2。
更にタリオンは王国の株式投資を盛んに行い、国庫は潤った。こうした経費削減や株式投資で潤ったものを、様々な福祉や貧困層の生活保護にあてたので、平民からのタリオンの人気は益々上がった※3。

「国が豊かになった暁には、その利益は国民全体に分配する」

というのがタリオンの選挙時のマニフェストであり、彼はこの公約を掲げ当選し、その公約を果たすのである。
しかし、外交面を憂慮した薫風は王にタリオンを退任させるように直訴したが、王はこれを退けた。その後、薫風は官職を辞した。と言うのは、最近王国では官僚の暗殺が数件発生しており、その官僚はタリオンに異を唱える者ではないか、と言う見方があり、薫風は身の危険を感じて去ったのである。
この薫風の憂いはやがて現実のものとなるのだが、それはまた別の話である。そして、この薫風は、後に蓮也がパドマリアを統治する時にパドマリア宰相として返り咲くのであった。

それからというもの、タリオンは軍師・元帥職につくゼイソン、ナディ、アイン、マルマと意見を対立させることも多かった。しかし、舞也が元帥につくと、第二王子ということもあり、幾分、大人しくなったようである。このように、タリオンは総じて野心家として見られていたが、このタリオンが後に意外な動きをし、この物語を展開させていくのであった。

【解説】
※1外交費とは、小国からの貢物に対し、大国はそれよりも多くのものを返すことで威光を示すために発生する。また、他国の諸侯を賓客として迎えるなどの費用などである。
※2ロータジアの制度は、直接民主制で宰相を選ぶが、衆愚政治を防ぐために、国王・軍師・元帥に罷免権があり、この三権の罷免が一致した時に、宰相は罷免され、再び国民投票となる。
※3本作品の設定では、株式投資は資金のある富裕層が行うものであり、その富裕層から王国の株式投資は利益を上げ、貧困層のための政策を行うため、タリオンは平民からの人気を得ることとなる。王国は平民が多いので、国民投票では、平民からの人気が重要となる。

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