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成長の章
孤児から王子へ
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これは神代と言われる遠い太古の物語である。
ロータジアという王国があり、そこには円也(えんや)という王が国を統治していた。この物語の主人公、此花蓮也(このはなれんや)の祖父であるが、血は繋がっていない。
円也王は幼少時から剣術の天才と言われ、長じてその才能は更に開花した。人々は彼のことを剣聖王を呼んだ。
円也王は庶民的な王であり、赤いマントに身をつつみ、マスカレードをつけ、お供には、親衛隊長のナディを従い、城下を歩き、人々の様子をみた。これを20代の頃から行なっている。円也王の歩く姿はとても威厳のあるものであったが、馬に乗ってないことから(騎士の位なら馬に乗っている)、人々は高名な剣士であると思っていた。この剣士が五行英雄の一人、「赤き剣士」である。
ナディ
「大王、今日はどちらへ?」
円也王
「オーラを感じる方向だ」
ナディ
「また、剣客と勝負なされるおつもりですか?王がそのようなことはおやめください・・・」
円也王は、強いオーラを放つような剣士と試合をすることを好んだ。年齢は70にも達するが、未だに負け知らずであった。そして、自ら戦った剣士を王国で雇用することもしていた。
ナディ
「そころで私に持たせているこの箱は何が入っているのです?」
円也王
「お菓子だ」
ナディ
「お菓子・・・でございますか・・・」
二人は城下をしばらく歩き、ある場所へ入った。
ナディ
「ここは・・・」
「・・・孤児院?」
円也王
「そうだ」
入り口に女性が立っており、円也王に話しかける。
セシル
「あ、王様、いつもありがとうございます」
この女性はセシル・テティスと言い、王立孤児院の責任者をしている。彼女はこの男が王であることを知っている。
円也王
「やあ、セシル。今日は子供たちに会いたい」
セシル
「今お遊戯をしているところですが、よろしければ」
職員と楽しそうに遊んでいる子供達を円也王は見つめている。
端の方で一人だけポツンと座っている無表情な子供がいた。
セシル
「王様がお菓子を持って来てくれましたよ~」
「みんな、お礼を言いましょうね」
「王様、ありがとう」と子供達は声を揃えて元気よく言った。子供達は箱からお菓子を取り出そうとするが、職員がそれを止めて、平等に分配しようとする。しかし、端に座っている男の子は一切興味を示さない。
円也王
「あの子は?」
セシル
「あの子は蓮(れん)と言います」
5年前、寒い雪の日、セシルはある街からロータジアへ帰ろうとしていた。雪が降り頻る中、森の雪道を歩いていると、道を外れた森の中からかすかに光が見えた。よく見ると、赤ん坊が捨てられている。
セシル
「あら、大変。赤ちゃんが・・・」
「何、この子。白く光り輝いている・・・」
「・・・そして、この子の周囲だけ雪が溶けているし」
セシルはその子を抱き抱えて孤児院に持ち帰った。そして、そこで育てることとした。
男の子は、立ち上がるのも言葉を覚えるのも遅かった。また、他の子と交わることもなく、常に無表情・無気力であった。そして、現在、5歳となる。
最近の不思議な出来事といえば、蓮が寝ているとたまに彼は身体を振動させ、青白いオーラを発するのである。セシルは病気ではないかと心配し、医者に見せたがどこも悪いところはないらしい。医者でわからないことはヒーラーに見せるというのがこの時代の常識であるが、ヒーラーは特殊な覚醒現象ではないか、と言う。それからというもの、蓮には色々と不思議なことが起こった。
そうした経緯をセシルは円也王に話した。
円也王
(一見、無気力・無表情に見えるが、それは恐らくアジュナーチャクラが強いからであろう。通常、アジュナーチャクラは覚醒の終盤に開くが、この子供は恐らく先天的に開いている。これはただの子供ではない。私が最近感じたのも、このオーラであろう)
「この子には立派な白毫がついておる。吉相である」
「セシルよ、この子を王国で預かりたい」
セシル
「王様がそうおっしゃるのでしたら」
円也王
「安心せい。養子縁組をちゃんとして、私の孫として育てる」
セシル
「えっ!わ、わかりました・・・」
セシルは驚いたが、信頼する円也王が言われることであるし、不思議な子供でもあるから、これも神の思し召しと思い、円也王に蓮を託すこととした。
もう一つ、セシルが意外と思ったのは、いつも感情表現をしない蓮が、お別れの時に「今まで、ありがとう」と言って抱きついて来た時であった。セシルは蓮が無表情・無感情なところを心配していたことから、彼女なりの愛情を注いで可愛がってはいたが、反応は一切示してこなかった。しかし、この時、自分の愛情は通じていた、この子はそれを理解できる子なのだと思い、安心した。ただ、自己表現が下手なだけなのかもしれない、とも思った。蓮が去っても、セシルは彼のことを思い出し、幸せに育つように祈った。
この時代よりも遥か太古、ロータジアの始祖に蓮也という王がいた。この始祖王・蓮也は、死ぬ直前、
「我、危機ある時、白き光の衣を纏い、白毫をつけ、この世に再来せん」
と言ったとされている。円也王は、この言い伝えを思い出し、孤児院からもらい受けた「蓮」を「蓮也」という名前に改めた。
円也王
「今日からお前の名前は「蓮也」だ」
蓮也
「蓮・・・也・・・?」
円也王
「そうだ。そして、私がおじいちゃんだ」
蓮也
「おじいちゃん・・・」
円也王
「そして教育係のゼイソンだ」
「わからないことがあったら、ゼイソンに何でも聞くといい」
ゼイソンが片膝をついて控えている。ゼイソンも一目見た瞬間、蓮也がただの子供ではないことを見抜いた。
ゼイソン
(円也王が養子縁組をされるだけはありますな。子供とは思えない程の強いアジュナーチャクラ、そしてそこから発するオーラ・・・。しかし、初代蓮也王の名前を拝命するとは、この子にはどのような運命が待ち受けているのだろうか・・・)
円也王には泰斗という息子がおり、この泰斗が次の王となる。平和な時代になるよう、名付けられたのが泰斗であり、よく内政や政略を行った。しかし、彼の考え方は血縁中心主義であったため、蓮也よりも実の子である舞也を可愛がった。
ロータジアには血縁の考えよりも、王の資質を優先する気風がある。それは、初代蓮也王が奴隷の身分から王へと昇りつめたことがあるのであろう。そうしたことも、この養子縁組に関係しているかもしれない。
このようにして、此花蓮也は孤児から王子への道を歩むのであった。
【解説】
チャクラとはサンスクリット語で「輪」の意味である。通常、チャクラは一番下のチャクラから開いて、その者に覚醒をもたらすというのが本作品の設定である。しかし、蓮也は6番目のアジュナーチャクラが先天的に開いているのである。このチャクラが蓮也の冷静さや知恵、不思議な能力を司ることとなる。
白毫(びゃくごう)とは仏につく眉間の上に生えている白く巻いた毛のことである。
ロータジアという王国があり、そこには円也(えんや)という王が国を統治していた。この物語の主人公、此花蓮也(このはなれんや)の祖父であるが、血は繋がっていない。
円也王は幼少時から剣術の天才と言われ、長じてその才能は更に開花した。人々は彼のことを剣聖王を呼んだ。
円也王は庶民的な王であり、赤いマントに身をつつみ、マスカレードをつけ、お供には、親衛隊長のナディを従い、城下を歩き、人々の様子をみた。これを20代の頃から行なっている。円也王の歩く姿はとても威厳のあるものであったが、馬に乗ってないことから(騎士の位なら馬に乗っている)、人々は高名な剣士であると思っていた。この剣士が五行英雄の一人、「赤き剣士」である。
ナディ
「大王、今日はどちらへ?」
円也王
「オーラを感じる方向だ」
ナディ
「また、剣客と勝負なされるおつもりですか?王がそのようなことはおやめください・・・」
円也王は、強いオーラを放つような剣士と試合をすることを好んだ。年齢は70にも達するが、未だに負け知らずであった。そして、自ら戦った剣士を王国で雇用することもしていた。
ナディ
「そころで私に持たせているこの箱は何が入っているのです?」
円也王
「お菓子だ」
ナディ
「お菓子・・・でございますか・・・」
二人は城下をしばらく歩き、ある場所へ入った。
ナディ
「ここは・・・」
「・・・孤児院?」
円也王
「そうだ」
入り口に女性が立っており、円也王に話しかける。
セシル
「あ、王様、いつもありがとうございます」
この女性はセシル・テティスと言い、王立孤児院の責任者をしている。彼女はこの男が王であることを知っている。
円也王
「やあ、セシル。今日は子供たちに会いたい」
セシル
「今お遊戯をしているところですが、よろしければ」
職員と楽しそうに遊んでいる子供達を円也王は見つめている。
端の方で一人だけポツンと座っている無表情な子供がいた。
セシル
「王様がお菓子を持って来てくれましたよ~」
「みんな、お礼を言いましょうね」
「王様、ありがとう」と子供達は声を揃えて元気よく言った。子供達は箱からお菓子を取り出そうとするが、職員がそれを止めて、平等に分配しようとする。しかし、端に座っている男の子は一切興味を示さない。
円也王
「あの子は?」
セシル
「あの子は蓮(れん)と言います」
5年前、寒い雪の日、セシルはある街からロータジアへ帰ろうとしていた。雪が降り頻る中、森の雪道を歩いていると、道を外れた森の中からかすかに光が見えた。よく見ると、赤ん坊が捨てられている。
セシル
「あら、大変。赤ちゃんが・・・」
「何、この子。白く光り輝いている・・・」
「・・・そして、この子の周囲だけ雪が溶けているし」
セシルはその子を抱き抱えて孤児院に持ち帰った。そして、そこで育てることとした。
男の子は、立ち上がるのも言葉を覚えるのも遅かった。また、他の子と交わることもなく、常に無表情・無気力であった。そして、現在、5歳となる。
最近の不思議な出来事といえば、蓮が寝ているとたまに彼は身体を振動させ、青白いオーラを発するのである。セシルは病気ではないかと心配し、医者に見せたがどこも悪いところはないらしい。医者でわからないことはヒーラーに見せるというのがこの時代の常識であるが、ヒーラーは特殊な覚醒現象ではないか、と言う。それからというもの、蓮には色々と不思議なことが起こった。
そうした経緯をセシルは円也王に話した。
円也王
(一見、無気力・無表情に見えるが、それは恐らくアジュナーチャクラが強いからであろう。通常、アジュナーチャクラは覚醒の終盤に開くが、この子供は恐らく先天的に開いている。これはただの子供ではない。私が最近感じたのも、このオーラであろう)
「この子には立派な白毫がついておる。吉相である」
「セシルよ、この子を王国で預かりたい」
セシル
「王様がそうおっしゃるのでしたら」
円也王
「安心せい。養子縁組をちゃんとして、私の孫として育てる」
セシル
「えっ!わ、わかりました・・・」
セシルは驚いたが、信頼する円也王が言われることであるし、不思議な子供でもあるから、これも神の思し召しと思い、円也王に蓮を託すこととした。
もう一つ、セシルが意外と思ったのは、いつも感情表現をしない蓮が、お別れの時に「今まで、ありがとう」と言って抱きついて来た時であった。セシルは蓮が無表情・無感情なところを心配していたことから、彼女なりの愛情を注いで可愛がってはいたが、反応は一切示してこなかった。しかし、この時、自分の愛情は通じていた、この子はそれを理解できる子なのだと思い、安心した。ただ、自己表現が下手なだけなのかもしれない、とも思った。蓮が去っても、セシルは彼のことを思い出し、幸せに育つように祈った。
この時代よりも遥か太古、ロータジアの始祖に蓮也という王がいた。この始祖王・蓮也は、死ぬ直前、
「我、危機ある時、白き光の衣を纏い、白毫をつけ、この世に再来せん」
と言ったとされている。円也王は、この言い伝えを思い出し、孤児院からもらい受けた「蓮」を「蓮也」という名前に改めた。
円也王
「今日からお前の名前は「蓮也」だ」
蓮也
「蓮・・・也・・・?」
円也王
「そうだ。そして、私がおじいちゃんだ」
蓮也
「おじいちゃん・・・」
円也王
「そして教育係のゼイソンだ」
「わからないことがあったら、ゼイソンに何でも聞くといい」
ゼイソンが片膝をついて控えている。ゼイソンも一目見た瞬間、蓮也がただの子供ではないことを見抜いた。
ゼイソン
(円也王が養子縁組をされるだけはありますな。子供とは思えない程の強いアジュナーチャクラ、そしてそこから発するオーラ・・・。しかし、初代蓮也王の名前を拝命するとは、この子にはどのような運命が待ち受けているのだろうか・・・)
円也王には泰斗という息子がおり、この泰斗が次の王となる。平和な時代になるよう、名付けられたのが泰斗であり、よく内政や政略を行った。しかし、彼の考え方は血縁中心主義であったため、蓮也よりも実の子である舞也を可愛がった。
ロータジアには血縁の考えよりも、王の資質を優先する気風がある。それは、初代蓮也王が奴隷の身分から王へと昇りつめたことがあるのであろう。そうしたことも、この養子縁組に関係しているかもしれない。
このようにして、此花蓮也は孤児から王子への道を歩むのであった。
【解説】
チャクラとはサンスクリット語で「輪」の意味である。通常、チャクラは一番下のチャクラから開いて、その者に覚醒をもたらすというのが本作品の設定である。しかし、蓮也は6番目のアジュナーチャクラが先天的に開いているのである。このチャクラが蓮也の冷静さや知恵、不思議な能力を司ることとなる。
白毫(びゃくごう)とは仏につく眉間の上に生えている白く巻いた毛のことである。
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