幻想神統記ロータジア(パラレルストーリーズ)

静風

文字の大きさ
上 下
34 / 38
黄金戦争の章

第一次黄金戦争・決着

しおりを挟む


スサノオも鎧を脱ぎ捨てる。
脱ぎ捨てた鎧は大地にめり込む。相当な重量の鎧であることが想像できる。
と同時にスサノオの筋肉は肥大化し、血管が浮き出す。
髪の毛は逆立ち、鬼のような形相が更に鬼のような形相となる。
そして、神炎のオーラが解放される。



スサノオ
「迦楼羅炎(かるらえん)・・・解放!」
「ついでに我のベルーフ(天職)も教えてやろう」
蓮也
「ほぅ」
スサノオ
「我のベルーフはブレイカー(破壊者)だ」

その力の扱いを間違えると世界が消滅する可能性があるため、神代に封印されしベルーフ(天職)がいくつか存在する。その封印されしベルーフの一つがブレイカー(破壊者)である。ブレイカーは、神の代理として、破壊の力を司るとされる。

スサノオ
「神の代理者として、今、お前を破壊する」
蓮也
「その理由は?」
スサノオ
「我が破壊すると決めたら、それ以上の理由はいらぬ」
「なぜなら、我が神の代理者だからだ」
蓮也
「ならば、神の意志がどうであるか、ここで教えてやろう」

スサノオのオーラは益々燃え上がり、その灼熱のオーラは両陣営からも感じ取れた。

スクナ
「スサノオ様も本気を出したでスクナ」
ナムチ
「神炎の熱気がこちらまで届く程に熱い・・・」



スサノオが腕に神熱を集中すると剣が真っ赤に燃えだす。物理魔法である。通常の魔法は精神エネルギーを使うが、物理魔法は身体が極限まで鍛錬された者が使うことが可能とされる。増血系が脊髄増血から全身増血に変化し、血液は腕の筋肉に集中し、筋肉は肥大化する。そこから生まれる神熱が剣へと伝わる。
それは、通常の剣なら溶解する程の熱であるが、スサノオの持つ草薙の剣は、それによく耐えた。
そして、その真っ赤に燃えた剣を振り下ろす。
蓮也もオーラを解放して剣を繰り出す。
十文字に切り結んだ剣の衝撃波は、これまでにない強さであった。そのお互いの繰り出す斬撃の衝撃波によって大地が揺れ、そして割れた。その衝撃波はもちろん両陣営の兵士たちにも届く。
そして、城壁の上でその様子を見ている舞也にも伝わる程であった。

舞也
(あのロータジアの剣を蓮也は使いこなしている。彼こそ、初代蓮也王の再来であろう。天に在します先王よ、見ておられますか。貴方のチカラは蓮也が継承しましたよ)

一旦、両者が離れ、剣を構え睨み合いとなる。
両者のオーラは益々燃え上がる。

スサノオ
「我が力を見せてやろう」
「素戔嗚流奥義・爆風波!」

スサノオの腕の筋肉が肥大する。そして、素早く草薙の剣を水平に薙ぎ払う。轟音を立てて爆風の波が蓮也に襲いかかる。それを蓮也がギリギリでかわそうとする。しかし、衝撃波の範囲が思ったよりも大きい。致命傷には至らないが、蓮也の身体は削られ、その部分からは出血する。
スサノオは更に衝撃波を繰り出し、蓮也はそれを避ける。更に蓮也は身体を削られ、流血していく。しかし、それでも蓮也は顔色一つ変えない。

蓮也
「インテグリストが神のオーラを纏った時、真のインテグリストとなる」



蓮也はプロテクションを張り、スサノオの攻撃を防ぎつつ、精神集中状態に入る。魔法充電は、その魔法が強力である程時間を必要とする。プロテクションの中で、精神エネルギーが充満し、やがて解放される。神のオーラは更に燃え上がり、神々しさを増した。



蓮也
「燃え盛れ、炎よ」
「研ぎ澄ませ、風よ」
「剣技統合!」
「伊耶那岐神伝流奥義・鳳凰疾風波!」

インテグリストが封印ベルーフとなる理由は、様々な力を統合し、その威力が乗数倍されるからである。今、蓮也は自身の持つ、火魔法・風魔法・潜在運動系・剣技を統合したのである。

蓮也は水平に剣を薙ぎ払う。
すると、火炎を帯びた疾風の衝撃波が剣から解き放たれる。
火炎を帯びた衝撃波は、スサノオが放った衝撃波を破壊し、スサノオ目掛けて襲いかかる。
スサノオは剣でその衝撃波を真っ二つに一刀両断する。衝撃波は左右に分かれ、後方の大地を抉り、抉られた大地は熱と煙が立ち込める。

スサノオ
「なるほど、このスサノオにお主の覇気は伝わった」
「ならば、こちらもそれに答えよう」

スサノオの腕の筋肉が更に肥大化し、血管が浮き出る。その腕は赤々と高熱を発し、それが剣に伝わる。それを見て、蓮也も力を溜め、次の攻撃に備える。
スサノオの真っ赤に燃えた豪腕で草薙の剣を奮う。

スサノオ
「風・炎・力・混合!」
「業火爆風波!」

スサノオの力、そして爆風と業火が混合され、その真っ赤に燃える衝撃波が爆音とともに迸る。
そして蓮也も応戦する。

蓮也
「鳳凰疾風波!」

両者の放った衝撃波は、ちょうど、両者の中央を衝突し、爆発を起こす。
爆風が収まると、地面は大きくえぐられていた。
その衝撃波に吹き飛ばされないよう、兵士たちは剣を地面に立て、身をかがめていた。
一方、スサノオはその場で仁王立ちしている。そして、蓮也に語りかける。

スサノオ
「蓮国の王子よ、お主はなぜ戦う?」
蓮也
「そのようなことを聞いてどうする」
スサノオ
「よいから、答えよ」
蓮也
「・・・そうだな」
「理想の世界を創造するためだ」
スサノオ
「理想の世界だと?」
「なるほど、よい答えだ」

そう言うとスサノオが斬りかかる。
蓮也もそれに応戦する。
そして、両者の戦いは続く。
その凄まじい攻防戦を観るために、両陣営の兵たちは身を乗り出して来ている。
蓮也が押せば、ロータジア軍から歓声が上がり、スサノオが押せばスサノオ軍から歓声が上がる。そして両軍の兵士の一部が接触し出し、勝手に戦いをし始めた。
興奮した兵たちは敵味方入り混じり、乱戦と化していく。
その時、遠くの方から軍が現れた。両軍から響めきの声が上がる。
反乱鎮圧を終えた神速の弓騎兵部隊・アルタイル隊が帰還したのである。
アルトドール軍から目付役(監視役)である参謀ムングは、アルタイルの想定外の早い帰還に驚いた。

ムング
(アルタイル将軍の用兵は神速と聞いてはいたが、これほど早いとは。これではこちらの計画が・・・)

傍観していた軍師ナムチがスサノオに近寄り声をかける。

ナムチ
「そろそろ・・・」
スサノオ
「わかっておる」
「蓮国の王子よ、見事な腕前であった。この乱世にて、お互い生あらば、再び雌雄を決しようぞ」

スサノオは最後に渾身の神気を解放し、蓮也を数メートル程吹き飛ばす。
そして、スサノオは馬に跨り踵を返す。
しばらくするとスサノオ軍は撤退していく。
反乱平定軍の隊長・アルタイルが蓮也の下に向かう。



アルタイル
「遅れて申し訳ございません、蓮也様」
蓮也
「アルタイル将軍、反乱平定、ご苦労であった」
アルタイル
「ありがたきお言葉」
「ところで、追撃はされぬのですか?」
蓮也
「そうだな、スサノオには借りができた、背後を襲うのはやめておこう」
「まあ、あちらも借りを返した、と思っているかもしれぬがな」
アルタイル
「借り・・・でございますか?しかも、お互いにでございますか?」
蓮也
「まあな」
アルタイル
「剣を交える場で、どのようなやりとりがあったかはわかりませぬが、あのスサノオ相手にご無事で何よりです」
蓮也
「そうだな、恐ろしい相手ではあった」
「それは、まあよい。貴殿も疲れたであろう。城で待機せよ。すぐにデネブ将軍も戻ってくる。そこから、もう一度、部隊編成し、砦に兵を配置する」
アルタイル
「かしこまりました!」

蓮也にすり寄るものがいた。愛馬、ユニコーンのケントニスだ。それを見て蓮也は安堵の表情を見せた。
ケントニスは脳震盪を起こしていただけであり、命に別状はなかった。ヒーラーに軽いヒーリングを施されるとケントニスは元気を取り戻し、蓮也を乗せて何事もなく城内へと歩を進めた。

一方、スサノオ陣営では。

ナムチ
「多少の手加減はあったかと存じますが、楽しみな若者が現れましたな」
スサノオ
「あれは手加減とは言わぬ、試してやったのだ」
「あの者を倒す時は、あの者がそのチカラを自己のものとした時だ。でないと、フェアでないし、面白くないであろう」
ナムチ
「しかし、クエストの報酬はよかったのですか?」
スサノオ
「世の中には金よりも大事なものがある、それだけだ」
ナムチ
「大分、変わっておられますな」
スサノオ
「ナムチよ、これが普通であるべきだ」
ナムチ
(アナタは変わっておられる、だから私は貴方についていくのです・・・)

蓮也とスサノオの神闘気がぶつかり合い、剣を交えることで、以心伝心による男同士の会話が成立していたようである。スサノオの剣を通して“もっと高みに登って来い”と言っているように感じた。そして、最後に感じたスサノオのオーラが、その頂(いただき)を示しているようであった。それを蓮也は肌で感じた。
スサノオの方は、途中から戦略的には不利になりつつあることを感じていた。しかし、その状況で蓮也が一騎討ちを受け入れたことに心意気を感じていた。
結局、スサノオは北西部の領地を取らずに帰還した。
アルトドール帝国とスサノオの契約は、北部の領地を奪取した場合、クエスト料金全額の支払い、そうでない場合はその半分と、兵士の動員数及び負傷の補償金を支払うという内容となっていた。アルトドール王はロータジア軍にそれなりの打撃を与えたため、そこそこ満足していた。しかし、攻略目的であるロータジア北西部の鉱山の奪取は出来なかった。
こうした「黄金を巡る戦い」、「第一次黄金戦争」は一応、幕を閉じるのであるが、この戦いにより蓮也は覚醒し、伝説の傭兵・スサノオと互角に戦った者として、初めてその名が各国に轟くこととなる。


しおりを挟む
お読みいただきありがとうございました。お気に入り登録して応援いただけると嬉しいです☆

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...