幻想神統記ロータジア(パラレルストーリーズ)

静風

文字の大きさ
上 下
2 / 38
列伝

蓮也伝『エウリディーチェとの恋』

しおりを挟む


蓮也は舞踏会でエウリディーチェと会った。そして、それからというもの、舞踏会に出ると決まってテラスで一人外を見ているが、エウリディーチェが話しかけてくるのを心待ちにしていた。



エウリディーチェ 
「蓮也様、先日は失礼致しました」
蓮也
「気にすることはない」
エウリディーチェ
「今日もずっとこちらで?」
蓮也
「ああ、悪いか?ああいうのは性に合わない」
エウリディーチェ 
「私も同感ですわ。しかし、人間って面倒なものですね。こうして何事も演じなければいけないなんて。けど、私自身も思っている私そのものも演じているのかもしませんわね」
蓮也
「あなたの言っていることが私には理解できない」
エウリディーチェ 
「人には魂ってものがあって、私とは別のものだと思うの。私自身には嫉妬とか執着ってのがあるわ。けど、それは魂を覆っているだけだと思うの。それを演じさせられているか、自ら演じているかの違いなのかも、と思いますの」
蓮也
「この前は宇宙の星々の話で、今度は魂の話か」
「エウリディーチェ、あなたは変わっている」



と言いながら、蓮也は少し微笑んだ。

エウリディーチェ 
「蓮也様の微笑むお顔をはじめてみましたわ」
「それでは、これで失礼いたします」

エウリディーチェも蓮也に微笑みかけ、一礼してその場を去って行った。
そう言われて思い返してみると、蓮也は自分が最後に何時笑ったり微笑んだか記憶になかった。

その次の日、宮廷の薔薇園で薔薇を見ていた。
その薔薇園は先王がつくり、その時は真紅の薔薇園であった。それを蓮也の義理の母が引き継ぎ、ピンク色の薔薇も植えられるようになったと伝わっている。ちなみに、この義理の母親は、舞也の実母であるが、舞也・蓮也を分け隔てなく可愛がったらしい。しかし、蓮也が5歳の頃に、この義理の母は亡くなっている。

そこへロータジア国の最高位・白金騎士ゼイソンが通りかかる。
王国随一と言われる存在であり、高齢ではあるが、未だ現役で職務をこなしている。



ゼイソン
「若君、いつになくボンヤリとされておられますが、どうなされましたか?」
蓮也
「ああ、爺か。何でもない、休憩しているだけだ」
ゼイソン
「先王様も、この薔薇を見るのがお好きでした」

ゼイソンは蓮也の幼少時からの教育も兼務していた。

ゼイソン
「・・・おや」
「さては、恋でもなされましたな」
蓮也
「・・・爺、恋とは何か?」
ゼイソン
「巷の定義では、特定の異性に想いを寄せることですかのぅ」
蓮也
「ふむ」
ゼイソン
「しかし、エネルギーレベルでは少し違う説明になります」
「人体には七つのチャクラがあり、その真ん中のハートチャクラは通常は緑のオーラを放っていますが、それが誰かに想いを寄せるとピンクになります。それを「恋」と呼んでおりまする。そして、そのエネルギーが相手のハートと繋がりあったことを「愛」と呼んでおりまする」

つまり、ゼイソンの説明では、「恋愛」とは、エネルギーレベルの変容であり、その変容した者同士の感応である、と言う。

蓮也
「それで、私の胸のチャクラはそのようになっているのか?」
ゼイソン
「いかにも。ちょうど、このピンク色の薔薇のようなお色ですぞ」
蓮也
「爺は恋をしたことがあるのか?」
ゼイソン
「さあ、どうでしたかのぅ。そんなこともあったかもしれませぬが、遠い昔のことですわぃ」
蓮也
「爺は、その人とは一緒にならなかったのか?その人は今、どうしているのだ?」
ゼイソン
「さぁて、どうでしょうなぁ。しかし、きっと、どこかできっと幸せに暮らしていると信じておりまする」
蓮也
「爺は、その人のことを自分のものにしたいとは思わなかったのか?」
ゼイソン
「若い頃は、そのようなことも考えましたかのぅ」
蓮也
「で、手に入れなかったのか?」
ゼイソン
「若い頃、「恋」をした時はそう考えたかもしれませぬが、それが「愛」になると、人はそう思わなくなるのかも、ですじゃ」
蓮也
「そんなものなのか」
ゼイソン
「まあ、昔のことですのでのぅ、ほっほっほ」

恋が愛になり、愛が永続して穏やかなものになると、相手そのものの幸せを祈る状態になるのかもしれない。それはピンク色のハートチャクラが再びグリーンへと戻るのであるが、そのグリーンは更に深い輝きを放つものであろう。

しおりを挟む
お読みいただきありがとうございました。お気に入り登録して応援いただけると嬉しいです☆

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

処理中です...