33 / 38
黄金戦争の章
モローの決死行
しおりを挟む蓮也軍の軍師・ゼイソンはスサノオ軍の第二砦への陽動を見抜いていた。もし第二砦が陽動にかかり敗北した場合、蓮也軍では数の上でスサノオ軍に太刀打ちできない。その最悪のシナリオを避けるため、ゼイソンは蓮也に突破された第一砦に行き、兵力の集結を計ることを進言した。
蓮也
(三将星不在の中、頼れるのは我が兄でもあり、王国元帥でもある舞也だ)
「モローを呼べ」
神速将軍キュリアス・モローが呼ばれた。モローは王国の正規軍ではなく、蓮也直属の諜報部隊長である。
蓮也
「モロー、我が兄・舞也の下へ言伝を頼む」
モロー
「はっ!」
蓮也
「我が軍が敵と対峙するタイミングは恐らく、敵軍が本城と対峙した時である」
「その時、我が軍は敵の背後を突くことになるだろう。その場合、相手はこちらに戦力を向け、対峙してくるに違いない。そこを見計らって、本城の本軍は敵の背後を突いてほしいと」
モロー
「こちらがまず敵と対峙し、膠着したら、本城の軍と敵を挟み撃ちにすると言うことですね」
蓮也
「そういうことだ」
「しかし、この伝言を届ける時、既に本城は包囲されている可能性がある」
モロー
「俺の神速術なら楽勝です。任せてください」
蓮也
「頼んだぞ、モロー」
蓮也はモローに蓮也の使者の証明としての割符を渡した。
モローの神速術は騎馬よりも速い。そのため、蓮也もモローも少し油断していたかもしれない。
モローが王都に着いた頃、既に王都はスサノオ軍が包囲しつつあった。
王都ロータジアは要塞都市となっており、町ごと大きな城壁に取り囲まれている。先王の時に修復工事が行われ、より強固な要塞と化している。
モロー
「あれがスサノオ軍か」
バッシア
「全員、騎馬だから行軍スピードが速いんすねぇ」
モロー
「誰かが城に到達し、蓮也様の伝言を舞也様に届ければいい」
「バッシア、俺が囮役をやるから、お前が後の者を率いて先に城に入ってくれ」
バッシア
「しかし、兄貴・・・オトリと言っても相手はトンデモねー数でっせ」
モロー
「大丈夫だ。騎馬よりも俺の神速術の方が速い」
「城内に入れたら狼煙を上げてくれ」
バッシア
「わかりやした。死なねーでくだせーね。こんなところで失業したくねーんで」
モロー
「お前たちに給料ださねーといけねーから、こんなところでは死ねねーぜ」
バッシア・スコットはモローの副官であり、モローの次に速い神速術の持ち主である。バッシアに蓮也からもらった割符を渡した。これがあることで城塞の裏門の開門が可能となる。
一方、モローはスサノオらしき人物を確認した。
モロー
(遠目に見てもガタイが違うし、とんでもないオーラをビンビン感じるぜ)
(とは言っても、相手の攻撃が当たらなければいいわけだ)
(伝説の傭兵だか何だかしらねーが、少し試させてもらうぜ)
「神速走行術!」
モローの足からオーラが吹き上げ、モローの移動速度を神速の域に引き上げる。
モローはスサノオの護衛を背後から斬りつける。しかし、流石のスサノオの護衛である。斬りつけられてもすぐ様大勢を立て直し、スサノオをガードしようとする。
スサノオ
「何者だ」
モロー
「お前がスサノオか」
スサノオの護衛がすぐにモローへ連続攻撃を仕掛ける。モローはそれを全て躱す。
スサノオ
「どけ、我が対す」
モローが変則的に構えるが、いつもよりも構えが硬かった。それは、今までにないオーラと圧力を相手から感じていたからである。
スサノオが矛でモローを突く。矛は凄まじいスピードでモローに襲いかかる。
モロー
(速い・・・!)
モローは矛を跳躍して躱す。
スサノオ
「もらったぁ!」
空中に舞い上がるモローを確認し、間髪入れずに、矛を繰り出す。
モロー
(マズい・・・!)
「神速走行、側面噴射!」
モローの足の側面からオーラが迸り、モローは空中で真横へ移動し、スサノオの攻撃を躱す。矛の轟音がモローの横を突き抜けていく。
モロー
(これは当たったら一発で終わるな)
スサノオ
「ほぉ、空中でも移動ができるのか」
モロー
(とりあえず今は時間稼ぎだ)
スサノオが少し深く構える。モローはそれに気づき、反応体勢に入る。
モロー
(構えが変わった、何か来るぞ)
スサノオ
「素戔嗚神伝流奥義・旋風撃!」
モロー
(ヤバイ・・・!)
「神速走行・・・全開!」
モローはスサノオの繰り出す強烈な一撃を躱した。
モロー
「何・・・!」
モローの脇腹から出血が見られる。
モロー
(確かに躱したはず・・・)
(ということは、スサノオの繰り出す矛の風圧でダメージを受けたというのか?)
(・・・このようなことがありえるのだろうか)
(このバケモノを蓮也様と戦わせてはいけない・・・)
モローは蓮也と過去に一騎討ちをしたことがある。相対せば、相手の圧力がわかるし、攻撃を受ければその威力がわかる。それは、蓮也の実力を超えているのではないかと感じた。
すると、遠くの方から狼煙が上がる。
バッシアが城内へ入城した合図である。
モロー
「・・・では、これにて!」
スサノオ
「逃すかぁ!」
スサノオの矛の突きを躱し、すぐにモローは逃げていく。
モロー
(くそ!今度も躱したつもりがダメージを受けたか・・・。とりあえず何とか逃げることができたが、スサノオ恐るべし)
やがて、モローも入城を果たし、蓮也の伝言を兄であり王国元帥の舞也に伝えるのであった。
モロー
(しかし、奴が伝説の傭兵と言われるのは伊達じゃなかったか)
伝説・レジェンドクラスと言われるのは、戦歴が多くあり、人類への貢献度が高く、高い実力を誇った者に与えられる人々から人々へ伝えられる称号である。こうした語り継がれるレジェンドに魔王サトゥルヌスを封印したとされる五行レジェンドと言われる五人の伝説の英雄がいる。何十年も前に活躍した英雄なので、恐らく、この五人は存命ではないとされている。スサノオの場合は遊牧民の侵攻を何十年と渡り防いで来た功労者である。そのため、生きた伝説として唯一存在するレジェンドクラスの英雄なのである。しかし、そのスサノオがなぜアルトドールに力を貸しロータジアを攻めたかは、この時点ではわからなかった。
0
お読みいただきありがとうございました。お気に入り登録して応援いただけると嬉しいです☆
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる