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黄金戦争の章
モローの決死行
しおりを挟む蓮也軍の軍師・ゼイソンはスサノオ軍の第二砦への陽動を見抜いていた。もし第二砦が陽動にかかり敗北した場合、蓮也軍では数の上でスサノオ軍に太刀打ちできない。その最悪のシナリオを避けるため、ゼイソンは蓮也に突破された第一砦に行き、兵力の集結を計ることを進言した。
蓮也
(三将星不在の中、頼れるのは我が兄でもあり、王国元帥でもある舞也だ)
「モローを呼べ」
神速将軍キュリアス・モローが呼ばれた。モローは王国の正規軍ではなく、蓮也直属の諜報部隊長である。
蓮也
「モロー、我が兄・舞也の下へ言伝を頼む」
モロー
「はっ!」
蓮也
「我が軍が敵と対峙するタイミングは恐らく、敵軍が本城と対峙した時である」
「その時、我が軍は敵の背後を突くことになるだろう。その場合、相手はこちらに戦力を向け、対峙してくるに違いない。そこを見計らって、本城の本軍は敵の背後を突いてほしいと」
モロー
「こちらがまず敵と対峙し、膠着したら、本城の軍と敵を挟み撃ちにすると言うことですね」
蓮也
「そういうことだ」
「しかし、この伝言を届ける時、既に本城は包囲されている可能性がある」
モロー
「俺の神速術なら楽勝です。任せてください」
蓮也
「頼んだぞ、モロー」
蓮也はモローに蓮也の使者の証明としての割符を渡した。
モローの神速術は騎馬よりも速い。そのため、蓮也もモローも少し油断していたかもしれない。
モローが王都に着いた頃、既に王都はスサノオ軍が包囲しつつあった。
王都ロータジアは要塞都市となっており、町ごと大きな城壁に取り囲まれている。先王の時に修復工事が行われ、より強固な要塞と化している。
モロー
「あれがスサノオ軍か」
バッシア
「全員、騎馬だから行軍スピードが速いんすねぇ」
モロー
「誰かが城に到達し、蓮也様の伝言を舞也様に届ければいい」
「バッシア、俺が囮役をやるから、お前が後の者を率いて先に城に入ってくれ」
バッシア
「しかし、兄貴・・・オトリと言っても相手はトンデモねー数でっせ」
モロー
「大丈夫だ。騎馬よりも俺の神速術の方が速い」
「城内に入れたら狼煙を上げてくれ」
バッシア
「わかりやした。死なねーでくだせーね。こんなところで失業したくねーんで」
モロー
「お前たちに給料ださねーといけねーから、こんなところでは死ねねーぜ」
バッシア・スコットはモローの副官であり、モローの次に速い神速術の持ち主である。バッシアに蓮也からもらった割符を渡した。これがあることで城塞の裏門の開門が可能となる。
一方、モローはスサノオらしき人物を確認した。
モロー
(遠目に見てもガタイが違うし、とんでもないオーラをビンビン感じるぜ)
(とは言っても、相手の攻撃が当たらなければいいわけだ)
(伝説の傭兵だか何だかしらねーが、少し試させてもらうぜ)
「神速走行術!」
モローの足からオーラが吹き上げ、モローの移動速度を神速の域に引き上げる。
モローはスサノオの護衛を背後から斬りつける。しかし、流石のスサノオの護衛である。斬りつけられてもすぐ様大勢を立て直し、スサノオをガードしようとする。
スサノオ
「何者だ」
モロー
「お前がスサノオか」
スサノオの護衛がすぐにモローへ連続攻撃を仕掛ける。モローはそれを全て躱す。
スサノオ
「どけ、我が対す」
モローが変則的に構えるが、いつもよりも構えが硬かった。それは、今までにないオーラと圧力を相手から感じていたからである。
スサノオが矛でモローを突く。矛は凄まじいスピードでモローに襲いかかる。
モロー
(速い・・・!)
モローは矛を跳躍して躱す。
スサノオ
「もらったぁ!」
空中に舞い上がるモローを確認し、間髪入れずに、矛を繰り出す。
モロー
(マズい・・・!)
「神速走行、側面噴射!」
モローの足の側面からオーラが迸り、モローは空中で真横へ移動し、スサノオの攻撃を躱す。矛の轟音がモローの横を突き抜けていく。
モロー
(これは当たったら一発で終わるな)
スサノオ
「ほぉ、空中でも移動ができるのか」
モロー
(とりあえず今は時間稼ぎだ)
スサノオが少し深く構える。モローはそれに気づき、反応体勢に入る。
モロー
(構えが変わった、何か来るぞ)
スサノオ
「素戔嗚神伝流奥義・旋風撃!」
モロー
(ヤバイ・・・!)
「神速走行・・・全開!」
モローはスサノオの繰り出す強烈な一撃を躱した。
モロー
「何・・・!」
モローの脇腹から出血が見られる。
モロー
(確かに躱したはず・・・)
(ということは、スサノオの繰り出す矛の風圧でダメージを受けたというのか?)
(・・・このようなことがありえるのだろうか)
(このバケモノを蓮也様と戦わせてはいけない・・・)
モローは蓮也と過去に一騎討ちをしたことがある。相対せば、相手の圧力がわかるし、攻撃を受ければその威力がわかる。それは、蓮也の実力を超えているのではないかと感じた。
すると、遠くの方から狼煙が上がる。
バッシアが城内へ入城した合図である。
モロー
「・・・では、これにて!」
スサノオ
「逃すかぁ!」
スサノオの矛の突きを躱し、すぐにモローは逃げていく。
モロー
(くそ!今度も躱したつもりがダメージを受けたか・・・。とりあえず何とか逃げることができたが、スサノオ恐るべし)
やがて、モローも入城を果たし、蓮也の伝言を兄であり王国元帥の舞也に伝えるのであった。
モロー
(しかし、奴が伝説の傭兵と言われるのは伊達じゃなかったか)
伝説・レジェンドクラスと言われるのは、戦歴が多くあり、人類への貢献度が高く、高い実力を誇った者に与えられる人々から人々へ伝えられる称号である。こうした語り継がれるレジェンドに魔王サトゥルヌスを封印したとされる五行レジェンドと言われる五人の伝説の英雄がいる。何十年も前に活躍した英雄なので、恐らく、この五人は存命ではないとされている。スサノオの場合は遊牧民の侵攻を何十年と渡り防いで来た功労者である。そのため、生きた伝説として唯一存在するレジェンドクラスの英雄なのである。しかし、そのスサノオがなぜアルトドールに力を貸しロータジアを攻めたかは、この時点ではわからなかった。
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