31 / 38
黄金戦争の章
アルタイルの海賊討伐
しおりを挟むロータジア三将星の独り、迅雷の神弓騎士アルタイル。
彼に射抜けぬ的(まと)はなしと言われる弓の天才騎士であり、人々から「神弓」と言われる。また、その騎馬軍団の機動力の速さは迅雷の如くとされた。
黄金戦争の前、アルタイルは海賊の反乱の鎮圧のため、王命を受け出陣していた。
そこへ、ロータジア王国にアルトドール軍とスサノオが侵攻するという急報を部下のリベルタスから知らされる。
アルタイル
「何?王都が攻撃を受けているだと?デネブ将軍が第一砦を守っているはずだが、あの神槍デネブが敵に敗れたというのか?」
リベルタス
「そのデネブ様も反乱の鎮圧のため遠征しておられ不在とのこと!」
アルタイル
「なんだと?舞也様もいらっしゃる、そして遠くの地だが蓮也様も駆けつけられるはずだが」
「取り敢えず、ここの反乱をすぐに平定する」
(それにしても最強の傭兵・スサノオがアルトドールに味方するとは。これはマズいことになった。とにかく、すぐにここを平定せねば・・・)
海賊たちは街を荒らそうとしていたが、街も自衛団によってかろうじて防衛していた。そのため、海賊集団は街の外に陣を置いていた。そして、アルタイル軍が到着すると、すぐ様襲いかかって来た。
最初の戦闘は両軍、入り乱れ、やや混乱気味に開始されたが、アルタイルの指揮によってアルタイル軍は適正距離と陣形が整い、アルタイル軍が優勢となった。
そのアルタイル軍の強さに海賊軍は陣を数里引いて防御陣を張った。
アルタイル
「全体的な力はこちらの方が上だが、防御陣を張られては、流石に時間が取られる。こうしている間にも、アルトドール軍の侵攻は早まる。どうれば・・・」
アルタイルは少し焦っていたが、気持ちを落ち着け、目を閉じた。
すると師の声が思い出される。
アルタイル
(我が師・研鸞はこうおっしゃった。敵を射るのではない、敵の心を射よ、と)
(・・・師よ、今、その教えの通り、敵の心を射抜いてみせます)
しばらくして、目を開けると、アルタイルは明鏡止水の心境となっていた。
そして、部下のリベルタスを呼び寄せる。
アルタイル
「リベルタス、海賊のリーダーを特定せよ」
リベルタス
「かしこまりました」
海賊集団のリーダーの名が特定された。
名はバンドリー、その位置と容姿が特定された。
アルタイル
「敵に文書を送れ。これは正規の戦いではない故、使者を送る必要はない。矢文で十分だ」
リベルタス
「かしこまりました」
アルタイル
「そして、今から全軍待機」
リベルタス
「待機ですと?相手を急いで壊滅させなくてよいのですか?」
アルタイル
「まあ、見ておれ」
リベルタスは怪訝な顔をしつつ、アルタイルの文書を矢文で送った。
海賊軍に手紙が届く。
バンドリー
「何?矢文だと?読み上げよ!」
その文書に書いてある内容を見てバンドリーは怒る。
バンドリー
「そのような脅しで、この海賊・バンドリー様が恐れるとでも思っているのか」
「陣は退かぬ!」
一方、アルタイル軍では待機が続いていたが、総大将・アルタイルのみが動き出す。
一瞬、兵士から響めきが起こるが、兵士たちは待機を続ける。海賊軍も防御態勢を決め込んでいるため、一切動こうとしない。アルトドール帝国による海賊軍への依頼は、ロータジア軍の数日の足止めでよかったからである。
総大将・アルタイルがアルタイル軍の右翼先頭に立つ。そして、その右翼側か左翼側へと駆け抜ける。
手に持つ弓は、師から受け継いだ雷属性の弓『迅雷鸞(じんらいらん)』である。
アルタイルは胸の中央のエネルギーポイント・中丹田に集中し、弓を強く引く。
鉄の矢には、弓から電気が充電される※。
その電気の迸りは、はたからでも見える程である。
アルタイル
「師を我に力を与えたまえ!」
「一射目、参る!」
「聖中心迅雷射!」
蓄電された雷の矢が一気に放たれる。
そして、電光を散らしながら、敵陣中央へと一直線で突き抜ける。
すると、海賊軍から呻き声が上がる。
海賊軍の大将・バンドリーの声である。
バンドリーの左肩の鎧が粉砕され、肩に矢が突き刺さる。そして、バンドリーは、その矢の雷に感電し、動くことができない。
アルタイル
「手応えあり」
「次、二射目、参る!」
今度は、アルタイルは左翼側から右翼側へと横断し、同じように雷の射撃を行う。すると、今度はバンドリーの右肩の鎧を破壊し、突き刺さる。
アルタイルがバンドリーに送った手紙には、このように書いてあった。
“敵将に次ぐ、速やかに撤退されたし。さもなければ、まず貴軍大将の左肩を射抜く。次に右肩を射抜く。其の後は数刻程、待つ。しかし、それでも撤退せぬようであるならば、最後は心臓を寸分違わず射抜くであろう。もし、撤退するのであれば、我が軍はこれ以上貴軍に手を出すことはないことをここに約束する
ロータジア軍射撃部隊長・アルタイル”
その内容をバンドリーは思い出し、恐れ慄いた。そして、自身の心臓が射抜かれることを理解した。
以前、彼は神弓・アルタイルの神業の噂は聞いていたが、それが噂ではなく現実であることを身を以て知ったのである。
バンドリー
(噂には聞いていたが、これほどまでに正確に矢を射る者がいるとは・・・)
(俺は神というものは信じぬ性分だが、これは神業としか言いようがない・・・)
バンドリーは全身、痺れて動けないため、その痺れが解けるまで、少し時間がかかったが、しばらくすると撤退することにした。そして、アルタイルは、約束通り、追撃はせず、その撤退を見届けた。
部下のリベルタスを街の防衛隊として残し、アルタイル自身はロータジア城へと向かうのであった。
師の教えを思い出し、敵の心を射たアルタイルは、大幅に時間を短縮し、アルトドール軍の戦略の一部を崩すのである。
このように、第一次黄金戦争の裏舞台には、迅雷の神弓・アルタイルの活躍があった。
※コストの関係で、矢は通常、シャフトは木製であり、矢尻のみ鉄である。アルタイルの迅雷射は迅雷をエンチャントするが、鉄は熱に強く伝導率が高い。
0
お読みいただきありがとうございました。お気に入り登録して応援いただけると嬉しいです☆
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる