幻想神統記ロータジア(パラレルストーリーズ)

静風

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黄金戦争の章

第一次黄金戦争・統合者

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白銀のプリンス蓮也対伝説の傭兵・スサノオの一騎討ち。
両者馬上にて、相右半身となり対峙する。
暗雲立ち込め、風は巻き起こり、大地は震え、二名の闘気がぶつかり合う。

最初の攻撃はスサノオからであった。
八岐の蛇矛の突きが唸りを上げて蓮也の顔面に襲いかかる。
蓮也は首を左右に振り紙一重で避ける。
耳元で聞こえる矛の轟音は、その凄まじい威力を物語っていた。

蓮也
(速い・・・!)



首を軽く振り、紙一重で蓮也は躱す。
その風圧を感じ、これを喰らってはいけないと身体で感じた。

スサノオ
「ほぉ、我が矛を紙一重でかわすとは」
「反射神経はなかなかのようだな、小僧」
蓮也
「反射神経は若い方が有利であろう」
スサノオ
「ならば、これならどうだ」



今度は蓮也の胴体を狙ってスサノオは連続攻撃を繰り出す。
それに対して蓮也は剣でいなす。

スサノオ
「片手剣の使い手か、面白い」
「一応、剣の型も知っているようだな」
「しかし、よけてばかりでは攻撃はできんぞ!」

片手剣は両手剣よりも間合いが広いが、矛は更に遠間から攻撃できるため、矛と剣では、武器の長さから矛の方が有利である。
もちろん近間なら剣が有利となるのであるが、スサノオの攻撃の圧力で間合いを縮めることができない。
それどころか、その攻撃の圧力から蓮也はジリジリと後退する。

蓮也
「ならばこちらの攻撃を見せてやろう」
スサノオ
「この間合いで何ができるというのだ!」

スサノオの攻撃をいなした瞬間、蓮也の左手から炎が迸り、火炎魔法・ファイヤーボールがスサノオを目掛けて飛んでいく。
スサノオは右手を矛から離して、その手でファイヤーボールを振り払う。

スサノオ
「魔法だと?お前は戦士型ではないのか?」
蓮也
「我らロータジアの流れを継承する者は複数のチカラを持つ」
「そのベルーフ(天職)は」
「インテグリスト(統合者)」
スサノオ
「インテグリストだと?」
「古代に存在したが封印されたと聞いているが、その封印されしベルーフをお前が継承しているというのか」
蓮也
「そういうことだ」
スサノオ
「面白い、ならば見せてもらおうではないか、封印されしベルーフのチカラを!」

この時代、人間はある年齢に達すると儀式によってベルーフ、天職が与えられる。
統合者・インテグリストは、人間に与えられた能力の多くを、その鍛錬量によって解放することができるとされる。しかし、そのチカラの解放は、人類の破滅を導く恐れがあることから、古代の神代の時代に封印されたとされている。

スサノオ
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

スサノオの連続攻撃は気合とともに、益々、その速度を上げる。
蓮也はかろうじていなすが、腕への衝撃が蓄積する。

蓮也
(相手の攻撃を受けると、その衝撃でダメージが腕に蓄積する。どうにかしなければ)

たまらず蓮也は手綱をさばき、バックステップで攻撃をかわす。と、同時に蓮也は遠隔魔法にて攻撃。スサノオは片手でそれを弾く。
更にスサノオの連続攻撃は続き、その熾烈さは増していく。すると、一瞬、蓮也の体勢が崩れる。それをスサノオは確認し、強烈な斬撃が蓮也を襲う。

水平に薙ぎ払われた矛に対し、蓮也は剣を縦にして防ごうとする。
十文字に受けたが、凄まじい衝撃が蓮也を襲う。
その衝撃をいなすために、愛馬ユニコーンのケントニスはサイドにステップし対応する。

スサノオ
「馬に助けられたか。しかし、次はそうはいかぬぞ!」

再び、スサノオの連続攻撃により蓮也の体勢が崩される。
今度は縦方向からの斬撃である。今度は衝撃をいなすことはできない。

スサノオ
「何?受け止めただと」

スサノオの攻撃を蓮也は剣を横にし、刀引き側に手を添え、刃側でスサノオの矛を受けている。そして、衝撃は大気中に分散している。

蓮也
「プロテクション・・・!」
スサノオ
「防御魔法も使えるのか」
「我、幾度となく戦場で戦士と戦ったが、このような者は初めてだ」

防御魔法・プロテクションは、精神エネルギーによって空間にバリアを張り、相手の攻撃を空間に分散させるものである。その分散された衝撃波は、遠くで見守る両軍の兵士たちにも伝わっていた。

スクナ
「スサノオ様が気合を解放している姿は久しぶりに見たスクナ」
ナムチ
「そうですね、北方の重装兵団の時以来でしょうか」
スセリ
「そして、相手側の白銀の騎士、剣と複数の魔法を同時に用いることができるとは、先ほどの老騎士も含めて彼らは何者かしら」

そして、それはロータジア陣営にも伝わっていた。

ゼイソン
「何というスサノオの凄まじい攻撃よ。しかし、それを若は自身の持つ全能力を駆使して対応している。いつのまにあそこまで魔法を使いこなせ、自身の兵法に組み入れられたのじゃ」
アルベルト
「両者、互角というところでしょうか?」
ゼイソン
「どうじゃろうか。若の方がやや受けに回っているため、少し呼吸が乱れておる。魔法によって精神エネルギーも多少は消費する。しかし、スサノオはまだまだ余裕のようじゃ」



ゼイソンの言うように、蓮也は少し呼吸が乱れている。

蓮也
(身体よ、もう少し持ってくれ・・・!)
「プロテクション・・・・解除!」

プロテクションを解除するタイミングは蓮也側にあるので、この場合、イニシアチブは蓮也が取ることができる。プロテクションを解除した瞬間、スサノオとの距離を詰め、剣の間合いとなる。

蓮也
「風よ、我に味方せよ!」
「エンチャント・ファイヤー!」
「伊耶那岐神伝流奥義・鳳凰倶利伽羅剣!」
スサノオ
「・・・ぬぅ!」

蓮也の剣は灼熱の炎を纏い、風魔法に乗って飛翔し、その鳳凰の如く威力を増した剣でスサノオの胴体目掛けて水平に斬る。
スサノオは右手で草薙の剣を抜き、蓮也の剣を受ける。
インテグリストが封印ベルーフとなる理由は、複数の力を乗数倍できるからである。
蓮也の場合、火魔法・風魔法・剣技を統合し、そのかけ合わさった威力で相手を攻撃する。その威力に流石のスサノオも受けに回ったのであった。
しかし、これがスサノオの心に火をつけ、彼を本気にさせたのである。


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