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黄金戦争の章
第一次黄金戦争・伝説の傭兵
しおりを挟むこれはプリンス蓮也が各国に名を知られることになる出来事を語った話である。
黄金帝国と言われるアルトドール帝国は黄金崇拝の国であり、あらゆる鉱石の採掘・加工および蓄積を行うことを特徴としていた。この金属から武器や防具を加工して輸出したり、金銀の富の蓄積を行っていた。
ロータジア王国の北部には金脈・鉱山が多く存在していたことから、アルトドール帝国はその土地を狙っていた。しかし、ロータジアとの兵力差は拮抗しているため、その土地を奪えずにいた(1)。
しかし、ある時、アルトドール帝国は、その鉱山への侵略を開始した。
「黄金を巡る戦い」、「黄金戦争」の幕開けである。
ロータジア王国の首都であるロータジア城塞都市までは2つの砦があり、それらがアルトドール帝国から首都を守っている。しかし、その2つの砦が突破された。
ロータジア王・泰斗(たいと)は、その知らせを受けて狼狽していた。
この時、統帥権を預かる元帥についていたのが第一王子の舞也である。
泰斗
「敵には伝説の傭兵・スサノオがついたと聞く。スサノオ率いる疾風烈火の軍団はこれまで、百戦全焼、戦った国は壊滅的な打撃を受けると言うではないか・・・」
舞也
「父上、大丈夫です。王都ロータジアは先王が修復し更に堅固となっておりますので安心下さい。籠城し守備を徹底していれば問題ありません。相手は補給を考えなくてはいけなくなり、やがては撤退するでしょう」
「それに、まだ蓮也がいます」
泰斗
「そ、そうか・・・」
「で、ゼイソンと蓮也はどうしておる?」
舞也
「ここまでの移動に時間がかかりますが、こちらが守備に徹すればまず蓮也軍が駆けつけるでしょう」
「そして、遠征している三将星もすぐに戻ってくるはずです」
(それにしても、我が国の防御ラインが突破されるのが早すぎる・・・)
伝令
「蓮也様直属の配下でキュリアス・モローと名乗るものが参っております。チェックしたところ、蓮也様の割符と一致しています。いかがいたしましょう」
舞也
「よし、通せ」
しばらくすると、黒装束に黒い鎖帷子を纏った者が通された。
蓮也軍直属の諜報部隊長官キュアリス・モローである。モローの部隊は、平時は諜報活動であるが、戦時は神速の遊撃部隊となる。その中で特に俊敏な配下を選りすぐり、数名の配下と共に敵陣の中を突破してきたようだが、流石の神速部隊も傷を負っている。
舞也
「ご苦労である。内容を述べよ」
モロー
「蓮也様は各砦の軍勢を一つに再編するとのこと。それまで、王都は籠城されたし、と進言しておられます。そのための許可をお願いに参上した次第です」
「我々が調べた情報ですと・・・」
モローはなぜスサノオがアルトドール側についたのか、ロータジア軍の防御ラインが第一砦だけでなく第二砦も突破されたのかを語った。また、スサノオには軍略の天才・ナムチがついていることも述べた。
舞也
「なるほど、そういうわけか」
「スサノオにそれだけの多くの報酬が支払われているのか」
「しかし、スサノオはそれなりの人物とも聞いている。単に報酬に目が眩むような者ではないと思われるが」
モロー
「そこは、我々にもわかりません」
舞也
「しかし、こちらにも蓮也がいる。軍師としてゼイソンも従軍している。そしてこちらは難攻不落の王都ロータジアである。籠城なら簡単には負けはしない。その間に蓮也ならこの窮地を何とかしてくれるはずだ」
ロータジア王国には、三人の優秀な将軍「ロータジア三将星」がいるが、大魔導師ベガは封印魔法の調査中で不在、神弓アルタイルは海賊の反乱の鎮圧へ、神槍デネブも遊牧民の侵攻に備えていた。
舞也
(今、ちょうど三将星が不在だ。このタイミングでの帝国の侵攻。悪い予感がするが、その各地の反乱とアルトドール帝国が関わっているのではないだろうか。いや、それがそうと今わかったとしても意味はない。戦略的に出遅れたこちらが、ここからどう動くかが重要だ)
この舞也の予感は当たっていた。実際、アルトドール帝国がその豊富な財力で各地の豪族たちを買収し、反乱を起こさせていたのである。
舞也
「モローよ、蓮也に伝えよ。蓮也の伝言通り、蓮也が全軍を集結させてスサノオと対峙した時に、我らも同時に打って出る、と」
「各地の軍を動かすには元帥の指令書があった方がいい。これを蓮也に届けてくれ」
モロー
「かしこまりました」
舞也
「部下も傷ついているであろう。応急手当を受け、城から好きなだけポーションを持っていけ」
モロー
「ありがたきご配慮。痛み入ります」
モローは配下を連れて再び、包囲網を突破し、蓮也の下へと戻って行った。
(1)総兵数:双方、兵士数約20000で拮抗している。
(2)アルトドール軍8000のうち、3000がスサノオ傭兵団である。傭兵団は、その数は少ないが、数倍の軍勢を相手にできるとされている超精鋭部隊である。兵士たちは、普段は各国に散らばって各自で生計を立てているが、有事の時にスサノオが指令を出すとすぐに集結する。アルトドール軍20000のうち、精鋭5000をスサノオが引き連れている。
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