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神秘の章
AI搭載ドローン・テセウスの誕生
しおりを挟む【前回までのストーリー】
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時は2042年、理夢華22歳であった。
理夢華はAI搭載型ドローンに戦国の軍師の認知能力をラーニングさせるため、AIが弾き出したレーティングを基に選出しようとしていた。
戦術レベルは上杉謙信が最高レーティングであるが、戦略レーティングは天下統一を意識するため織田信長以降に高くなり、羽柴秀吉で最高レーティングとなる。そしてAIは鎖国を後の歴史からみるとマイナスと判断し、徳川家康のレーティングは下げている。
その羽柴秀吉の軍師・黒田官兵衛が高レーティングの軍師であることが選出された。そして、更に黒田官兵衛よりも上のレーティングの軍師がいると言う答えをAIは出すのであった。
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奈美
「で、黒田官兵衛より高いレーティングの軍師って誰なの?」
理夢華
「それが竹中半兵衛よ」
奈美
「あ、この人も官兵衛と同じ秀吉の軍師だったわね。秀吉の懐刀と言われていて、官兵衛と合わせて両兵衛とも言われてて」
理夢華
「よく知ってるわね、さすが奈美、教師目指しているだけあるわ」
奈美
「・・・で、竹中半兵衛はなぜ黒田官兵衛よりもレーティングが高いの?」
「確か、半兵衛は早く亡くなっているし、黒田官兵衛よりも活躍は地味な印象よ」
理夢華
「これは黒田官兵衛が高いレーティングを叩き出しているために、相対的に竹中半兵衛も高くなるって仕組みなの」
奈美
「なるほど、“両兵衛”と並び称されている時点でレーティング的にはほぼ同じと見ていいのね」
理夢華
「そうなの」
「そして、黒田官兵衛の認知の歪みを竹中半兵衛が指摘していることから、AIは竹中半兵衛の方が認知バイアスが少ない、という答えを導き出し、竹中半兵衛のレーティングを軍師の中で最高得点としているの」
黒田官兵衛が羽柴秀吉から知行の加増を約束されており、その手紙を残していた。しかし、それを「貴殿のためにならない」と言って半兵衛は破り捨ててしまった。ここに官兵衛が秀吉に警戒される要素が既にあり、この点をAIは官兵衛にマイナスポイントをつけ、逆に半兵衛にプラスポイントをつけたのである。半兵衛には、官兵衛の一部の将来が既に見えていたのかもしれない。
その他ににも、半兵衛は長篠の合戦時に、戦術レーティングの高い武田家の陽動を見抜いているから、そこもポイントが高い。また、斎藤家時代、織田信長の攻撃を退けたことや、主君を戒めるために少数で城を占領したり、三木城の兵糧攻めなど、これらもレーティングを高くする要因となっている。
奈美
「へえー、竹中半兵衛も凄すぎるわ」
理夢華
「若い頃、官兵衛は荒木村重の説得で失敗しているけど、そこには少し自分の才能に奢りがあったのかもね。そして、秀吉に野心を感じさせてしまったこと。AIは、黒田官兵衛のそうした大胆なところは男性ホルモン・テストステロン値が高いからだと見ているわ」
奈美
「社会的に成功している人に多いホルモンね。積極性は出るけど、その抑え役が必要かもね。そっか、それが竹中半兵衛だったってことね」
理夢華
「そうね、晩年の黒田官兵衛は凄かったけど、若い頃はやや前に出るのが強すぎたのかも。それに比べて竹中半兵衛は、マイナスされるところがないの。そこが、レーティングが高い理由よ」
奈美
「プラスが多いよりも、マイナスが少ない、勝つよりも負けないことなのね」
理夢華
「けど、多分、二人は知者同士で通じ合うところはあったと思うわ。このドローンのAIに複数のデータをラーニングさせる場合、お互いの相性は大事よ」
理夢華はこれに加えて、更に「勇敢さ」「直感」のパラメータを入れることを考えている。
「勇敢さ」は大脳辺縁系の情動、「直感」は大脳基底核や脳幹の反射的な働きである。この竹中半兵衛・黒田官兵衛の大脳新皮質的な働きに、もう少し野性味を加え、バランスをとるのである。そして、勇敢度と直感度のレーティングが高く、両兵衛と相性のよい武将を二人挙げた。
理夢華
「立花宗茂と島津義弘よ」
どちらも言わずと知れた猛将・勇将であり名将である。
この二人は因縁がある。立花宗茂からすると、島津義弘は宗茂の父・高橋紹運の命を奪った敵であった。しかし、宗茂は義弘を許したという美談がある。
そして、宗茂はその後、官兵衛の軍門に降っていることから、宗茂と官兵衛の二人の相性はよいとAIは判断している。そうすると、自動的に黒田官兵衛と島津義弘の相性もよい、と判断されるのである。また、この両兵衛には、こうした宗茂や義弘のような、利害では動かない、実直な武将と相性がよいと出ているのである。
奈美
「これで役者は揃ったってわけね。けど、どうやってこの人たちのデータをラーニングしていくの?」
理夢華
「まず、この人たちの業績や書き残したものをデータ化してラーニングするの」
奈美
「なるほどね」
理夢華
「それとDNAの情報よ」
奈美
「え、そんなのわかるの?」
理夢華
「遺骨や遺髪、血判状の血判などからわかるの」
「火葬した場合はわからなくなってしまうんだけど、最近の技術は、それを復元する技術もできてね」※3
奈美
「すごいのねぇ」
理夢華
「そして、そのデータは国が保存してて、日本人で特定のライセンスを有していれば、調べることが可能なの」
「私は、父の会社のライセンスを使って使用してるのよ」
奈美
「へえー、そんなのあるのね」
こうして竹中半兵衛・黒田官兵衛・立花宗茂・島津義弘のテータを、ドローンが搭載しているAIにラーニングさせた。
理夢華
「やっと終わったわ。ここから仮想空間を使って、このドローンの仮想アバターで飛行させ、様々なことを学習させていくの。そして、この四人の武将データを統合したり、相性の悪い部分や不必要なところは削ったりする作業をするのよ」
奈美
「そうなのね。ところで、このコには名前はつけないの?」
理夢華
「あー、考えてなかったわ」
奈美
「ドローンで冒険するから、ヒーローズジャーニー的な名前がいいわね」
理夢華
「じゃ、“テセウス”ね」
奈美
「ギリシャ神話に出てくる英雄ね。確かに、彼も船に乗って旅するし、イメージとしてはぴったりね」
理夢華
「でしょ!」
「そして、ここから数日間は、仮想空間でのシミュレーションよ。その後で、AI搭載ステルスドローン・テセウスの冒険のはじまりよ!」
奈美
「わお、楽しみね!」
【解説】
※火葬した場合はDNA鑑定不可能である
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