生きる事、華の如く

静風

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神秘の章

AIが導き出す軍師のレーティング

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2042年、理夢華22歳の時、南極の氷が溶け、その下からアトランティス遺跡が発見された。その裏付けは、ピリ・レイスの地図の原本も見つかり、それが紀元前に描かれ、そこに描かれている南極大陸に「アトランティス」と記されていたからである。



奈美
「理夢華の部屋ってハイテク機器が結構あって男の子の部屋みたいねw」
理夢華
「あら、そう。女性がハイテク機器使ってもいいじゃないのぉ」
奈美
「そうね、もう、男とか女とか言う時代じゃないし」

理夢華の趣味は武術とハイテク機器の操作という男性的なものであった。その理由は、理夢華の家が武術のある流派を伝えていたのと、理夢華の父はテック関係の会社を経営していたからである。そのため、理夢華は子供の頃から武術とプログラミングが趣味であった。そんな男勝りの理夢華であったが、数年前、彼女の容姿の美しさからモデルにスカウトされ、最近はファッション雑誌のモデルもこなすという忙しい毎日を送っていた。

理夢華
「これがAI搭載の自動運転可能な超小型ステルスドローンよ」
奈美
「へぇー、こんなに小さいの?で、ステルスってことは発見されにくいってことよね」
理夢華
「そうよ。それに太陽光発電もできるから、休息さえすれば半永久的に飛行可能よ」

理夢華も学生ながら父のフラワリングテクノロジー社を手伝っており、様々なハイテク機器を開発している。このドローンも理夢華が作った試作段階のものである。

理夢華
「これで南極大陸のアトランティス遺跡を探るのよ」
奈美
「え~、だ、大丈夫なのぉ?」
理夢華
「ステルス機能がついているから多分大丈夫よ」
「まあ、もし見つかった時は、ごめんなさいで済まないかもしれないから、怖かったら奈美は帰るといいわ」
奈美
「けど、面白そうだから見てるわw」
理夢華
「怖くなったらいつでも帰っていいからね」
奈美
「うん、多分、大丈夫w」
「ところで、AI搭載ってことは、このドローンくん、とても賢いってこと?」
理夢華
「そうね、ある程度のことは認識できるんだけど、賢いって程まではいかないわ」
「だから今から賢くするの」
奈美
「え、どうやって?」
理夢華
「ディープラーニングよ!」
奈美
「ああ、学習させるのね」
理夢華
「そうよ。あるデータを入れて何度もシミュレーションして賢くしていくの」
「例えば、色々なレーダー網を切り抜けたり、安全なルートを予測して移動したりできる認知を形成させるの」
「それと、赤外線センサーやトラップなどは、相手の心理を読んで回避したりね」
奈美
「へぇー」
「で、具体的に何を学習させるの?」
理夢華
「そうね~、戦国時代の軍師なんか面白いかなと思ってw」
奈美
「軍師って戦国大名のコンサルタントみたいなの?」
理夢華
「そうね、古代は占いとか色々とやってたみたいだけど、基本的に戦略・戦術のアドバイザーとして活躍していたみたいね」
「軍事ってのは、かなり広範囲の敵味方の戦力を把握しつつ、それをメタ認知して、しかも相手の心理を読みつつ的確な状況判断をしなければいけないでしょ?それが、このドローンの空間認知能力に応用できると思うの」
奈美
「なるほどね、面白そうだわw」
「で、誰を選ぶのかしら?」

奈美がスマートグラスで取り出して、軍師を検索する。

奈美
「武田信玄の軍師・山本勘助、今川家は太原雪斎、色々といるのねぇ」
理夢華
「そうね、一応、私の今使っているAIアリアドネは軍師のレーティングをつけているの」
奈美
「軍師の優秀さに応じて点数をつけているのね」
理夢華
「点数は一次資料での活躍を高い得点としているの。で、江戸時代の軍記物は点数を低くしてあるわ」
奈美
「資料を点数化してるのね」
理夢華
「そうよ。それとAIは天下という広い範囲を意識し出した織田信長包囲網以降の軍師に高いレーティングポイントをつけているわ」
奈美
「つまり、全国規模を俯瞰するメタ認知能力を必要とするからなのね」
理夢華
「まあ、信長は“天下”というキーワードを全国という意味で使っていたかどうかはわからないけど、彼から羽柴秀吉に移行するところから戦略レベルは格段に上がったとAIは判断しているの」
奈美
「武田信玄や上杉謙信も強かったんでしょ?」
理夢華
「そうね、武田信玄vs上杉謙信、ここが戦術レベルで最も高いとAIは判定しているわ。実際、信玄も謙信も織田軍と戦ってやっつけているしね。けど、それは戦術レベルの話ね」
奈美
「ということは、織田信長の軍師がレーティングが高いのかしら?」
理夢華
「信長は志半ばで倒れいてしまっているから、結局、天下統一した羽柴秀吉を最高レーティングとしているわ」
奈美
「なるほどね、様々な要素はあるけど“天下統一”が最高レーティングというのはシンプルな評価ね。AIらしいわ」
「けど、徳川家康も天下統一したでしょ?」
理夢華
「家康はその後、鎖国をしてしまい、そこがレーティングを下げているの。その後、日本は世界情勢から見ると戦略的に不利になっていく、というのが理由みたい」
奈美
「そう見るのね」
理夢華
「だから羽柴秀吉の軍師である黒田官兵衛のレーティングが高く算出されるの。もちろん、それを裏打ちするだけの理由は他にも色々あるわ」



奈美
「今世の張良なるべし、と評された天才軍師ね。私が生まれる前に、大河ドラマでもやっていたらしいわね」
理夢華
「結構、奈美も男の子並に戦国武将詳しいじゃないのw」
奈美
「私は教員志望なので、歴史の勉強してるから少し詳しいのよw国語か社会の先生になりたいの」
理夢華
「そう、奈美ならいい先生になれるわ」
奈美
「で、黒田官兵衛のレーティングを裏打ちする他の理由ってのは?」
理夢華
「一つは中国の大返し、次に九州遠征、最後に関ヶ原での九州での立ち振る舞いよ」

本能寺で信長が死去した後、すぐ様、

「御運が開かれる機会が参りましたな」

言ったのは官兵衛であった。つまり、秀吉に天下を取れと言ったのである。
この男、とにかく頭の回転が早かったようである。すぐに毛利と和睦し、海上から武具を輸送する手配をし、進軍ルートを決め、一気に引き返す。しかも、その時に、光秀側につかないように「信長は生きている」という虚報を流したのである。
その頃から秀吉は官兵衛の知謀を恐れるようになった。そして、九州遠征でも、官兵衛はこうした高いレベルの戦略で秀吉の天下統一に貢献していく。こうしたことが官兵衛の直接のレーティングを上げているのである。

天下統一後の秀吉は、戦国武将で最高レーティングとなる。その秀吉が家臣に、このような質問をした。

「わしに代わって、次に天下を治めるのは誰だ」

と聞くと徳川家康や前田利家の名前が挙がるが、秀吉は官兵衛を挙げた※。
そして、このように言ったと言う。

「お前達は奴の真の力量を分かっていない。奴に100万石を与えたならば途端に天下を奪ってしまう」

この秀吉の発言が間接的に官兵衛のレーティングを高くする。
こうしたこともあり、九州平定後の官兵衛の石高は12万石と少なく、これは彼の才能を秀吉が恐れたためであるとされる※2。

奈美
「なるほど。つまり、天下統一に対してAIは高いレーティングを秀吉に与えた。その秀吉が官兵衛のレーティングを上げている、ってことなのね」
理夢華
「そうなの。そしてもう一つレーティングを高めているのが、彼が行った関ヶ原の合戦時の九州での戦いね」

関ヶ原の時、黒田官兵衛は九州で挙兵し、鍋島直茂・立花宗茂・加藤清正を加えて4万の軍勢で島津討伐に向かっているが、これがレーティングを上げているというのである。

奈美
「晩年の黒田官兵衛もすごいわね。軍師ではなく大将になっちゃっているけどw」
理夢華
「そして、更に、その上のレーティングの軍師がいるの」
奈美
「え?そうなの?」

AIは天下統一に対し最高レーティングとし、それを成し遂げたのが羽柴秀吉であり、その軍師が黒田官兵衛である。そして、この官兵衛よりも上のレーティングをAIは論理的に導き出している。そのAIが評価する最高レーティングの軍師とは誰なのだろうか。

【解説】
※秀吉が官兵衛を恐れたとする資料は『名将言行録』である。これは江戸時代中期に書かれたものであるため、どこまで本当のことが書かれているかはわからない。
※2官兵衛の勲功に対し少なすぎる、としているのは『黒田家譜』である(理由は、石田三成の讒言である、としている)。江戸時代中期の逸話集である『常山紀談』は、秀吉が官兵衛の才能を恐れたからだとしている。ルイス・フロイスは彼がキリシタンであるからだ、としている。

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