都会を抜け出して地方で始めた農業~頻繁に呼びに来てくれる可愛い子はもしかして脈ありなんですか?~

土偶の友

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妄想

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「ああ~、一日の仕事の後のこれが最高なんだよな……」

 風呂の準備も後は湯を入れるだけということにしてあって、消防団の集会場を出た所でスマホからスイッチ一つでポンとつけられる。田舎に住んでいるのに住んでいないかのような気持ちにさせられるのだ。それに田舎といってもネットで買って数日後に届くサービスも存在する。それを使えば欲しいものも手に入れられる。素晴らしい世の中だと思う。

 俺は体をいつものように洗って風呂を出る。そして居間に戻ると彼女はまだアニメを見ていた。

「何時まで見てるんだ? 明日は学校じゃないのか?」
「明日は祝日ですー。今夜はこれを一気見しなくちゃいけないんだから」
「お、それはいいな。と言いたいところだが、俺は明日も早い。途中で離脱させてもらうよ」
「仕方ないなぁ」
「俺も大学生だった時は毎晩の様にやっていたんだがなぁ」
「それって私が何歳のころ?赤ん坊とか?」
「そんな前じゃねえわ」

 そんなことを話しつつアニメを見る。そして遂口が寂しくなった俺は冷蔵庫に向かってビールを開けた。

 プシュ

「あーまた飲んでるー」
「いーだろ。なんだか口寂しくなるんだから」

 俺はそう言いながらちゃぶ台の上に置いてあるするめを取り出し口に放り込む。

 うむ、やはりこうやって味わいながら飲む酒が最高だな。人と話しながら気を使って飲むのは性に合わない。

 その気配を感じたのか彼女が上体を起こして話しかけてくる。

「私にも頂戴よー」
「まだ早いだろー。いいから見とけ、いい所だから」
「もー」

 そう言いながらも彼女は元の姿勢に戻り画面を注視し始めた。

 俺も彼女を見送ると彼女と同じように見始める。


 それから俺達はアニメを見始めてすっかりはまっていた。

「やっぱここいいよなー」
「ほんとだ。ねえちょっと戻していい?」
「ああ、勿論いいぞ」
「ありがとー」

 そう言って彼女はテレビを戻して見返している。俺もこのシーンはかなり好きな為何度見返してもいいと思う。

 俺は時計を見てそろそろかと悟る。

「それじゃあ時間だし俺は寝るよ。お前も遅くならないうちに早く帰れよ」
「はーい(この意気地なし)」
「何か言ったか?」
「何でもないよー。私もそろそろ帰ろっかな」
「一気見はしなくていいのか?」
「んー折角だからゆっくり見ようかな」
「それもまたいいかもな。気を付けて帰れよ」
「隣だから大丈夫だよ」

 彼女はアニメも丁度いい所なので帰っていく。その手にはスマホも握られているので明かりの問題も大丈夫だろう。

 俺は洗面所に行ったりして後は寝るだけにする。そして自室に入って布団に入った。

「今日もいい1日だったな……」

 今日1日の事を思い返す。朝から肉体労働で野菜たちに水をかけたり、土を盛ったり色々やったのだ。そして昼やおやつはお隣さんと一緒にご飯を食った。あの子が毎回呼びに来てくれるので本当に助かる。その後はまた仕事に戻って夜には消防団の活動だ。そして家に帰ったら少女が勝手にいてアニメを見ている。しかもその格好は俺を誘っているかのような格好だが、彼女にそんな気は一切あるようには……。あるようには?

「本当にそうか?」

 少し疑問に浮かぶと物凄く気になってくる。幾らお隣さんと言ってもそれに俺とあの子が見知った仲と言っても流石に無防備過ぎるんじゃないか?彼女が帰る時に持っていたのはスマホだけだったし、彼女が履いていた短パンはどこも膨らんだ様子がなかった。だから警報機とかの道具は持っていないはずだ。

 しかし、しかしだ。もしもそれが警報機を忘れて来たのではなく。持ってこなかったとしたら?そう、本当は俺に襲って欲しかったのだとしたら?そう思うと俺はさっきの場面彼女に対して悪手を打っていたのではないか?

 考えてみればそうだ。いつもいつも誘いに来てくれているが、本当にただの優しさからか?確かのあの子は優しい。それはこの町の99%が賛成するだろう事柄だ。残りの1%はどっちがどっちか選べない赤ちゃんが反対に入れる可能性がある位だからだ。

 そしてそんな子がアニメを見る為だけのわざわざ俺の家に来るか?しかもこんな夜遅くにあんなラフな格好で。しかも最近の女の子はインターネットの発達によってそういった情報にもかなり詳しくなっていると聞く。それであるならばそういう誘い方もあるということをインターネットで調べて俺にアプローチをかけているんじゃないか?どうだねワトソン君。今の私にならどんなミステリーも怖くない。

 ただ、仮にここまで彼女が俺に好意を抱いているとして、俺はどうするべきなんだ?彼女の好意にどうやって対応するのか。それが問題だ。まずは純粋にそれを受け取る可能性。例えば今回のように誘われているような状況になったらの場合だ。俺はそのままテレビと電気を消して彼女に襲い掛かる。きっと彼女はちょっと困惑しながら『優しくしてね』と俺を受け入れてくれるに違いない。そうに決まっている。ただ、相手は高校生だ。一回りまでの差はないとはいえ、それなりの年齢の違いはある。それを相手が誘っているからといって襲っていいものか?それが俺には分からない。

 確かに好意はもたれている……はずだ。だが、法律的な観点から言えばそこまで確か違法行為になってしまうはずだ。いや、条例違反だったか?まぁそんなことは何でもいい。バレなきゃ問題じゃないんだ。俺と彼女の間に立ちはだかる壁としては条例くらいが丁度いい。憲法とか法律を相手にするのは少しハードルが高いからな。

 そして俺がそれだけ若い子に劣情を催せるかと言うことだが、これはいける。そう心の中で叫ぶ何かがいける。お前なら出来ると叫んでいるのだ。ならば俺はその内なる俺の真なる叫びを拒絶することが出来ようか? いや、出来ない。ということでそちらの問題は完全にクリアだろう。

 そこでふと考えてしまうのだ。いきなりそんな関係になってしまっていいのかと。これでもいっぱしのオタクとして、ある程度の恋愛常識は漫画やラノベから色々吸収させてもらってきた。二人で服を見ている時に知り合いの声が聞こえる。そしてつい二人そろって試着室に隠れてしまう。薄布一枚先では知り合いの声が聞こえ、バレるんじゃないか。そんなドキドキ感からお互いの鼓動が聞こえてくる。そんなシーンや一緒に行く夏祭り、普段の農作業服やラフな格好とは違ったちょっと艶のある着物。そんな彼女と屋台を見ながら一緒に歩く。そして人が一杯いるからと俺からつないだ手は彼女も優しく握り返してくれる。そして彼女が石畳につまずいてコケた。俺はそれを何とか抱きとめるが鼻緒が切れてしまっている。流石にそれ以上は歩かせられないと俺は彼女を背負って神社の境内へ。こんなこともあるんだねと楽し気に話しながら進んでいく。そして始まる夏祭りを象徴する花火。多くの人が空を見上げ神社で座っている俺達を見る人は誰もいない。俺達も見ようとするがそこは神社で木々が多くてなかなか見ることが出来なかった。ただ、俺達の座っているところからは木々の隙間から少しだけ見える場所があった。そこを俺と彼女は同時に見つけて覗こうとして、お互いの顔がとっても近くにあることに気付く。そして一瞬ばっと離れるが、何も言わず、どちらからともなく一緒にその隙間から花火を見る。そして帰り道では再び彼女を背負って帰るが、その時の空気はどちらとも喋るでもなく密着するお互いの体温にお互いが緊張感を高めていく。そして俺は遂に口を開く。『家で休んでいく?』

「ああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 自分で想像しておいてあれだが物凄く恥ずかしい! 正直こんな事を想像するとは考えもしなかった。しかもこれだけのストーリーをたった30秒余りで構築しててしまった。自身の才能が恐ろしい。きっと妄想の素晴らしさでならウサイ〇・ボルトにすら勝つことが出来るだろう。

 かと言って今の想像をしてしまった俺には直ぐに襲ってしまうなんて行動はあり得ない。それこそ目の前に松茸が生えているからといってそのまま生で食べてしまうことのように思える。素材の味を生かして食べるには調理が必要なのだ。つまり過程だ。いかにしてその食べるという行為に意味を持たせるのか。それが重要なのだと改めて思い直した。

 では、ではだ。俺はこれから彼女に向かってどうすればいいのか? それを考える必要性も出てくるのではないだろうか。そう、お互いがお互いをそういう関係だと認識する為の儀式といってしまえばいい。どういう状況が素晴らしい? どういった状況なら最高だ? 取りあえずはゆっくりと関係性を深めていくのがいいのではないかと思うのだ。それをする為に俺が取れる最高の行動とはなんであろうか。

 こういう時の告白をするということについてどうすればいいのか?それを少し考えようかと思う。

 まずはいつもと同じようにするのか、それともちょっとだけ接近したりスキンシップを図りながらか?それともどこかに映画でも誘いに行くか? それはありかもしれない。今は丁度見たいアニメ映画はやっている。その映画は確か彼女も見てみたいと言っていた映画だったはずだ。ならば最初にやるべきことは彼女を遊びに誘うこと。そうやって徐々に距離を近づけていくことがいいんじゃないだろうか。よし、そうと決まれば今度の彼女の休みの日に遊びに誘ってみよう。いや、明日は祝日だから休みと言っていた、 明日に会った時に誘うのがいいか? いいな、その方がいい。もし色々プランを詰め込んで失敗した時の事を考えたらもうどうにもならない。というかそもそも彼女に予定があったら無理なのだ。だから今のうちに決めておかねば。

 そうだ、話はそれからだ。それを決めてからでも遅くはない。

「はぁ、流石に眠いな……」

 そのまま俺は眠りについた。
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