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2話 病院
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「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
タクシーの運転手にお礼を言って病院へと急ぐ。受付で祖父の親族ですというと、どこそこの病室に行って下さいと言われた。そして詳しいお話もする為に医師も行くので少し待っていて欲しいとも。母は直ぐに了承して祖父の待つ病室へと急ぐ。
通路を曲がりエレベーターに乗って、看護師さんに教えられた祖父の病室に辿り着く。
コンコン
「失礼しまーす」
母が小声で声をかけて入っていく。中は個室になっていて、ベッドの上では祖父がチューブや機械に繋がれて横たわっていた。祖父は入院着に着替えさせられていて、その袖から見える腕はガリガリで昔一緒に遊んでもらった時よりもやせ衰えている。
私はその姿を直視出来ず視界の端に入れることしか出来ない。
「おじいちゃん?起きてるかしら?」
「・・・」
母が声をかけるが祖父からの返事はない。母は荷物をベッド近くの机の上に置いた。そして今夜使うであろうものを準備していた。
私はそんな母の様子をずっと見ていた。祖父の状態を見ることから目を反らすために。
コンコンコン
「どうぞー」
「失礼します」
ドアがノックされ母がそれに許可を出す。扉を開けて入ってきたのは二人の人間だった。
一人は年配でそろそろ年の白衣を纏った男性。もう一人はカルテ等を持った女性の看護師だった。
「それではおじいさまの事をお話したいので、別室に来ていただいてもよろしいですか?」
「はい・・・」
「それではこちらです」
年配の医師に連れられて私を母は別室に連れていかれた。そして医師と母と私が椅子に座るなり医師は話始めた。
「それでは簡潔にお話させて頂きます。おじいさまはもう長くはないでしょう」
「そんな!何とかならないんですか!」
「今まで見て来た中でここまで進行が進んだ方が助かった例はありません。もし手術で何とかしようとしてもおじいさまの体力が持たないでしょう。残念ですが・・・」
医師はそう言って顔を臥せる。彼も心苦しいのは分かる。分かる。でも、それでも何とかならないのか。
「手術をすれば助かる可能性があるんですか!?」
母も同じ気持ちだったようで医師に詰め寄る。私も不思議と医師を見る目に力が籠る。
医師は顔を上げて母を見てちらりと私を見た後に一つ呼吸をした。その呼吸が決意だったかのように話始める。
「先ほども言いましたが患者の体力が持ちません。かなりの高齢ですし体力も衰えておられます。もし手術を行う場合、全身麻酔をしたとしてそこから目を覚ますことはないでしょう。ハッキリと言わせて頂きます。助からないと分かっている手術を私にさせないでください。お願いします」
医師は丁寧に優しくしかししっかりと言い切った。そして申し訳ないと頭を下げる。彼は頭を下げ続ける。深く、深く下げている様子に母も私も何も言えなくなる。
「頭を上げてください」
母はそう言った。医師がゆっくりと顔を上げる。その目は正面から真っすぐ母の目を見ていて一切反らす気がなかった。
「分かりました。本当に手術は意味がないのですね?投薬をしても」
「手術に関して先ほども申しあげた通りです。投薬では症状が広がり過ぎていてもはや手遅れです」
「そうですか・・・分かりました。私達に出来ることはありますか?」
「おじいさまと一緒に居てあげてください。そして出来れば声をかけ続けて上げてくだされば、意識を取り戻す事があるかもしれません」
「分かりました。それでは・・・」
母が医師に泊まったりすることなどを聞いている。それに懇切丁寧に答えたていた。
そして私たちは祖父の病室に戻った。
残された医師の部屋。
「何度やっても慣れないな。この瞬間は」
「しかし、どれだけ残酷でも真実を伝えなければ」
「分かっている。分かっているが、命を救うために医師になったのにそれを諦めろと何度説得させられたのか。本当に私はなぜこんな職についてしまったのか・・・」
「・・・」
医師は机に手を置きそれに頭を置いた。看護師は何も言えずにただ沈黙するだけだった。
「ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
タクシーの運転手にお礼を言って病院へと急ぐ。受付で祖父の親族ですというと、どこそこの病室に行って下さいと言われた。そして詳しいお話もする為に医師も行くので少し待っていて欲しいとも。母は直ぐに了承して祖父の待つ病室へと急ぐ。
通路を曲がりエレベーターに乗って、看護師さんに教えられた祖父の病室に辿り着く。
コンコン
「失礼しまーす」
母が小声で声をかけて入っていく。中は個室になっていて、ベッドの上では祖父がチューブや機械に繋がれて横たわっていた。祖父は入院着に着替えさせられていて、その袖から見える腕はガリガリで昔一緒に遊んでもらった時よりもやせ衰えている。
私はその姿を直視出来ず視界の端に入れることしか出来ない。
「おじいちゃん?起きてるかしら?」
「・・・」
母が声をかけるが祖父からの返事はない。母は荷物をベッド近くの机の上に置いた。そして今夜使うであろうものを準備していた。
私はそんな母の様子をずっと見ていた。祖父の状態を見ることから目を反らすために。
コンコンコン
「どうぞー」
「失礼します」
ドアがノックされ母がそれに許可を出す。扉を開けて入ってきたのは二人の人間だった。
一人は年配でそろそろ年の白衣を纏った男性。もう一人はカルテ等を持った女性の看護師だった。
「それではおじいさまの事をお話したいので、別室に来ていただいてもよろしいですか?」
「はい・・・」
「それではこちらです」
年配の医師に連れられて私を母は別室に連れていかれた。そして医師と母と私が椅子に座るなり医師は話始めた。
「それでは簡潔にお話させて頂きます。おじいさまはもう長くはないでしょう」
「そんな!何とかならないんですか!」
「今まで見て来た中でここまで進行が進んだ方が助かった例はありません。もし手術で何とかしようとしてもおじいさまの体力が持たないでしょう。残念ですが・・・」
医師はそう言って顔を臥せる。彼も心苦しいのは分かる。分かる。でも、それでも何とかならないのか。
「手術をすれば助かる可能性があるんですか!?」
母も同じ気持ちだったようで医師に詰め寄る。私も不思議と医師を見る目に力が籠る。
医師は顔を上げて母を見てちらりと私を見た後に一つ呼吸をした。その呼吸が決意だったかのように話始める。
「先ほども言いましたが患者の体力が持ちません。かなりの高齢ですし体力も衰えておられます。もし手術を行う場合、全身麻酔をしたとしてそこから目を覚ますことはないでしょう。ハッキリと言わせて頂きます。助からないと分かっている手術を私にさせないでください。お願いします」
医師は丁寧に優しくしかししっかりと言い切った。そして申し訳ないと頭を下げる。彼は頭を下げ続ける。深く、深く下げている様子に母も私も何も言えなくなる。
「頭を上げてください」
母はそう言った。医師がゆっくりと顔を上げる。その目は正面から真っすぐ母の目を見ていて一切反らす気がなかった。
「分かりました。本当に手術は意味がないのですね?投薬をしても」
「手術に関して先ほども申しあげた通りです。投薬では症状が広がり過ぎていてもはや手遅れです」
「そうですか・・・分かりました。私達に出来ることはありますか?」
「おじいさまと一緒に居てあげてください。そして出来れば声をかけ続けて上げてくだされば、意識を取り戻す事があるかもしれません」
「分かりました。それでは・・・」
母が医師に泊まったりすることなどを聞いている。それに懇切丁寧に答えたていた。
そして私たちは祖父の病室に戻った。
残された医師の部屋。
「何度やっても慣れないな。この瞬間は」
「しかし、どれだけ残酷でも真実を伝えなければ」
「分かっている。分かっているが、命を救うために医師になったのにそれを諦めろと何度説得させられたのか。本当に私はなぜこんな職についてしまったのか・・・」
「・・・」
医師は机に手を置きそれに頭を置いた。看護師は何も言えずにただ沈黙するだけだった。
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