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7章 スウォーティーの村

125話 事件のお礼

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今月の中旬に2巻が発売されます!
前巻の時に追加したサブシナリオがあったように、今回も結構書いたので、よろしくお願いします!

ちょっとだけ言うと、サクヤとルビーの夜の森探検。
先生とレイヴァールの街中危機一髪?

に、追加での物語を入れているので、よろしくお願いします!


***************************

「わたし、甘いものを食べに行きたいです!」

 院長の柔和な笑みにわたしは力強く答える。

 彼女は素敵な笑顔のまま、わたしに綺麗な封筒を差し出してきた。

「では、これをどうぞ」
「これは……?」
「その村……スウォーティーの村の一番のお菓子店、パステールの紹介状です。こちらがあれば、無碍むげに扱われることはないでしょう。お使いください」
「わたしはただ食べたくていくだけなのに、そんなのは必要ありませんよ?」

 ウィンに乗ってヴァイス達と一緒に適当に甘いものを食べるだけだ。
 だからそんなすごい紹介状はいらないと思う。

「ですが、これがないと村一番のお店限定ファイナルスペシャルロールロールケーキは食べられないかもしれませんよ? 普通の予約ですと1年は待つことになります」
「1年ですか!?」

 え? この世界でも1年待ちなんてあるんだと驚いていると、彼女は説明してくれる。

「ええ、それは王宮にも献上されたりしているほどの品です。となると当然、貴族も欲していますから、それだけ待つことになるのです。王宮に行って食べることもできると思いますが、そちらの方がいいですか?」
「……紹介状を頂いてもいいですか?」
「ええ、もちろん。楽しんで来てください」

 わたしは王宮にいく面倒と彼女の紹介状を受け取るのを天秤にかけ、素直に好意に甘えることにした。

「ありがとうございます。楽しんできます」
「ええ、ぜひ楽しんできてください。ボルツ」
「ん? なんだ?」

 院長がいきなり話をボルツさんに振る。

 彼はわたしと院長の話をのんびり聞いていたのに、話しかけられたのが分からないようだ。

「あなたは何もしなくてもいいのですか?」
「院長……そうだな。俺ができることと言えば、これを受け取ってくれ」

 ガシャン。

 と重たそうな音がして、机の上に布でできた袋が置かれる。

「あの……これは?」

 わたしはその音でなんとなく何かを想像できた。
 けれど、一応……確認のために、ボルツさんに聞く。
 目を輝かせてかじりつこうとしているヴァイスが、それに近寄らないように抱っこしながら。

「それなりの額のゴルドが入っている。受け取ってくれ」
「そんなことはできませんよ!?」

 なんでいきなり?
 訳が分からずに聞くと、彼はその理由を話してくれる。

「決まってるだろ? 礼だよ、礼」
「礼って……別にわたしは……」
「俺はこれでも裏の顔をやってんだ。助けてもらって、それを何もせずに終わらせるのは示しがつかねぇだろ?」
「それは……」

 面子めんつ……というのがあるんだろうか。

 まぁ……確かに、それを……潰すのは忍びない。

 わたしが少し悩んでいると、ボルツさんがさらに言う。

「もし……それでも貰うことに抵抗があるなら、村に行くんだろ? この孤児院のガキ達の分。少しでいいから菓子を買ってきてくれないか? 余ったのは依頼料として受け取ってくれ」
「そんな……お菓子の代金としても多いですよね?」

 どう考えてもわたし一人では持てるかどうかといった量のお金。
 全部使ってお菓子を買おうとしたら、買い占めをするレベルになってしまうだろう。

 そんなのは他の人にとっても迷惑だろうからできない。

「だから依頼料……だって言っただろう? 別に買ってこなくても問題ないからな。とりあえず受け取ってくれねぇか。この通りだ」

 そう言ってボルツさんは頭を下げる。

「! わかりました! わかったので頭をあげてください!」
「お、そうか。助かるぜ。嬢ちゃん」
「いえ……それではわたしは行きますね」

 これ以上ここにいると何かこれをもっていけと言われるかもしれない。
 ということで、もう行こうと思う。

「それでは、わたしはこれで失礼します。ありがとうございました!」

 わたしはウィンの背の上から振り返ってそういった。

「お待ちください」
「はい?」

 でも、出て行く前に院長に止められる。

「お一人で行くつもりですか?」
「ウィン達が一緒にいるのでいけるかな……と。クロノさん達は城の方で忙しそうにしていましたし、伝言だけ残しておこうかな……と」
「ふむ……ボルツ」
「分かってますよ。俺の部下を10人ほどでいいですかね? 信頼のおける精鋭をお付けしましょう」
「ちょっと待ってくださいよ」

 そんな大所帯で行くなんて絶対になにかあると思われる。

 あんな大金を貰っただけでもありえないのに、流石にそこまでしてもらう訳にはいかない。

「どうした? 数が足らないか?」
「いえ、逆です。わたしにはヴァイス達がいるので、護衛はいりません」
「でも、道案内は……」
「大体でいいので教えてくだされば、道なりにそっていきますから」
「いや、従魔がいると言っても何があるかわからない。信頼していない訳じゃないぞ? だが心配なんだ。少しだけ道案内をつけてくれ」
「10人も道案内はいりませんよ?」

 どんな道案内をするつもりなんだろう?
 10人で道案内……全方位に一人ずつ配置してくれるとかだろうか?
 んなバカな。

 わたしがそんな事を考えていると、後ろから声をかけられる。

「話は聞かせてもらったよ」
「?」

 わたしが後ろを振り向くと、そこには息を切らせた先生がいた。

「え? 先生?」
「久しぶりだねサクヤ君。相変わらず可愛いようでなによりだ。クロノ達から連絡があってね。飛んで来たんだ」
「え……牧場の方は大丈夫なんですか?」
「サクヤ君がアベルを励ましてくれたんだろう? そのお陰で彼はいますごく精力的にやってくれていてね。ぼくもいらないくらいなんだ」
「すごいですね!」
「ありがとう。君のお陰だからね」
「わたしは大したことはしていませんよ」

 アベルさんが頑張っている。
 その言葉を聞けて、とても嬉しい。
 色々と悩んでいたようだったから、それも解決したのだろう。

「というわけで、ぼくがサクヤ君の案内をしてスウォーティーの村に連れていくよ。お二方もいいかな?」

 先生はそう言って、院長とボルツさんに視線を向けた。
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