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6章 王都ファラミシア

117話 ボルツ

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 わたしは慌てて鑑定をする。

《名前》 ボルツ
《種族》 人間
《年齢》 48才
《レベル》 94
《状態》 健康
《体力》 1833
《魔力》 149
《力》 901
《器用さ》 247
《素早さ》 473
《スキル》 棒術 根性 威圧 気配察知
《称号》 ファラミシアの裏の顔 子煩悩

 すごく強い……という思いと共に、子煩悩という文字は見なかったことにする。
 今はすごくやばい相手なんだ、子供を大事にしているのかな? とか考えちゃきっとダメだと思う。

「クロノさん! リオンさん! 気を付けてください!」

 そして、それよりも、以前見たクロノさんのステータスよりも強い。
 
「リオン! 任せた!」
「分かった! 〈土の礫〉」

 リオンさんが魔法を放つけれど、ボルツさん? はその大きな図体に似合わない速さで全てを躱す。
 そして、まずは狙ってきたリオンさんとでも思ったのか、こん棒で氷の壁を殴りつけた。

 ドゴオオン!!!

 氷の壁が一瞬で破壊され、氷の破片が飛んでくる。
 でも、それはウィンが魔法を使ってくれたことによって全て弾かれた。

 もしかしたら、このまま戦闘になるかもしれない。
 リオンさんで勝てるのか怪しいし、かといってウィンが戦うのは……。

「あん? なんでガキや獣がこんなところに……」

 彼はそう言いつつ、わたし達に視線を向ける。
 そして、そのまま院長さんを見ると、動きを止めた。

「え……あの……どう……して……ここに?」
「ボルツ。久しぶりですね? あなたに会いに来たら襲われるとは思ってもいませんでした」
「いや、それは……あんたのことは話してるわけないだろ? 俺にも部下に対するメンツってもんが」
「ほう……昔、寂しいと泣きついてきた駄々っ子がよく……」
「だあああああ! ちょっと待ってくれ! 院長先生! 今その話はやめてくれ!」
「ならさっさと他の部下達を止めなさい」
「うっす!」

 ボルツさんはそう言うと、走ってクロノさん達の方に行き、戦闘を止めた。

 それからしばらくして戦闘は停止し、わたし達は彼らのアジト? の中に招待された。


 アジトは普通に暗い居酒屋……という感じの場所を通り抜けて、奥まった部屋に入っていく。
 そこには高級なソファや机等が置かれていて、人をもてなす時はここを使うことが分かる場所だった。
 暗いだけで隅々まで掃除が行き届いていて、チリ一つ落ちていない。

 ボルツさんはソファに座り、対面にクロノさんとリオンさんが座る。
 わたしはウィンの上のままで、隣には院長が立ってわたしに話しかけていた。

「さ、てん……サクヤちゃん! 私の言っていたことは嘘ではなかったでしょう?」
「あ、はい。ありがとうございます」

 まさか本当に裏の顔役に言うことを聞かせられるなんて……。
 ちょっとを通り越してかなり驚いた。

 というか、ボルツさんが院長さんの言うことを聞いたこともそれはそれで驚いた。
 ちょっとそんなすごい院長を鑑定した方がいいのかな……。

「さて、それでお前達はなんの用事があってきたんだ? こっちは今は忙しいんだ。手短にしろ」

 鑑定しようと思っていたら、ボルツさんが話しかけてきた。
 なので、それは後にしようと思う。

 これに答えるのはクロノさんだ。

「昨日、後ろにいるサクヤが怪しいやつらの会話を聞いたらしい。なんでも、今回のことの原因になっているかもしれない。だから、そいつらを探すのを手伝ってほしい」
「は! 怪しいやつなんてそこら中にいるだろうよ。なんなら俺だってお前さん方から比べたら怪しいぜ?」
「おれ達はただの冒険者だ。そこまででもない」
「分からないと思ってんのか? 2番目と3番目がよ」
「!?」

 ボルツさんの言葉にクロノさんとリオンさんが驚く。
 これは2人が第2、3王子であることを知っているのだろう。

「まさかバレているとはな……」
「情報がなけりゃ裏では死ぬだけだ。その程度は当然知っている」
「それでは……さっき話した奴の心当たりはないか?」
「……いや、今回の騒動は俺達も探っているが、見つかっていない」
「本当に?」
「ああ、第一、さっき言った怪しい奴なんてここにはごまんといる。そいつら全部の素性を把握なんてできる訳ねぇだろ」

 彼の言っていることも分かる。
 ここに来るまでに色々な人がいた。
 浮浪者と呼ばれる人や孤児、他にも色々な理由がある人がいるのだろう。
 それを全部把握するなど不可能だ。

 でも、だからこそ、提供できる話があれば分かるきっかけになったりしないだろうか?

「あの……その人達がいた家を知っています。なので、そこから辿っていくことはできませんか?」
「嬢ちゃん……なんで小さい子がこんな所に来てるんだ? 院長の所の新しい子か? にしては綺麗すぎる気がするが……」
「いえ、わたしは……その……さすらいの孤児? みたいなものです」
「さすらいの孤児……? そんな孤児いるのか……?」

 ボルツさんが不思議そうな目でわたしを見つめる。
 さっきまでの恐ろしい雰囲気とは違って、結構優しい……心配してくれている目な気がする。

 それを、院長がさえぎった。

「ボルツ、その話は今はいいのです。彼女が教えろと言っていることを全て包み隠さずに言いなさい」
「院長……流石に……まぁ、とりあえず、どこの家だ?」

 わたしは聞かれた通りの家を彼に伝える。

 それを聞いた彼は少し考え込む。

「そこは……いや……でもそんなはずは……」
「何か知っているんですか?」
「そこは……いや、行った方が早いか」

 彼はそう言うや否や、立ち上がった。
 そして、クロノさんを見つめて問いかける。

「俺がその家と関係ある場所に案内する。それで文句はないな?」
「ああ、それでいい」
「そして、そこにいる奴らを捕らえて、もし今回の主犯なら罪を追及するということで間違いないか?」
「間違いない」
「そうか、では行くぞ」

 彼は何か意味深なように行って歩き出した。

 わたし達もついていく。
 しかし……。

「院長、アンタはダメだ」
「いいではないですか……すみっこで大人しくしておきますから」
「ダメだ。わがままは言うな」

 ということで、院長だけは居残り組になった。
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