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6章 王都ファラミシア
109話 可愛いがより可愛くなる
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6章の起点を間違えてしまったので、修正しました。
物語上特に変わることはありませんが、続きで書いていくと分けるの難しいです……orz
追記、前話108話の投稿を忘れていまして、投稿しました。
楽しみにしてくださっていた方々にご迷惑をおかけして申し訳ありません……。
再追記、実は投稿していたことが発覚しまして……。
ただ、投稿した場所が全然おかしい場所になっていただけでした。
修正をしたので、よろしくお願いいたします。
次の投稿はやはり11日に行うと思います。
*************
わたし達は暖かい気温の王都を歩く。
貴族や商人がいるような裕福な場所だからか、あんまり人はいない。
そのお陰もあって、ウィン達に向けられる好奇の目線は少ない気がする。
安心して進めるのはいい点かもしれない。
わたしはクロノさんにこれからの予定を聞く。
「次はどこに行くんですか?」
「決めていない!」
「兄さん……そんな自信満々に言わなくても……」
「しかし、サクヤが行きたいところに行くべきだろう? だからこれから先は決めていないんだ」
クロノさんがそう言って周囲を見回す。
わたしもつられて視線を向けると、武器屋、服屋、本屋、薬屋等々、色々な店が立ち並んでいた。
クロノさんの視線は、武器屋でビタッと止まっている。
「武器が気になるんですか?」
「いや、そんなことはないぞ? サクヤはどこか気になる店はあるか? 服屋なんてどうだ? サクヤに似合う物があるかもしれない」
「……」
なんだか露骨に話をそらされた気がするけど……。
「でも、確かに服とかアクセサリーは気になっています!」
「なら行こうか」
別に派手につける様な気持ちとかはないけれど、どんなのがあるとかは気にならないこともない。
ということで、わたし達はお店に入っていく。
わたし達が店の中に入ると、そこは異世界の高級服飾店なのだろう。
店先には色々な服がディスプレイされていたけれど、日本にあったオーダーをメインとする店に近いだろうか。
店内で話をしている人も貴族のように豪華なドレスを着ている人ばかりで、高級感あふれるお店だ。
「あの……わたしにはちょっと場違いな感じでは……」
正直今すぐにでも出て行きたい気持ちで一杯になる。
ドレスはどれも高級で、髪留めやブローチ等のアクセサリーですらいくらするのか。
あ、でもあのブローチ可愛いかも。
肉球のマークをしたブローチで、ヴァイスやウィン、ルビーの肉球を思わせる。
「ウビャゥ!」
「キュイ!」
「暴れないで」
ヴァイスとルビーはテンションが上がっているのか、ウィンの上でうずうずしていた。
服やアクセサリーを汚したり、壊してしまったりしたら……と思うと怖い。
だからヴァイスとルビーが暴れて壊さないように抱き抱えておく。
まぁ、毛などはウィンが魔法で服につかないようにしてくれているから問題はないんだけど……。
わたしは誰にともなく呟く。
「うん。やっぱりわたしには場違いな気がします」
すると、クロノさんがわたしの言葉に首を横に振った。
「そんなことはない。サクヤに似合う服ならいくらでもあるからな。採寸してもらうか?」
「え? い、いえ。わたしにはそんな服はいりませんよ」
量販店の服を買っていたわたしには過ぎたものだと思う。
でも、クロノさんは違った事を気にしていた。
「なに? いや……確かにすぐに成長してしまったら着れなくなってしまうか……」
「そういうわけではないんですが……」
クロノさんから怪しい気配を感じる。
「そうか? サクヤは何を着せても似合うだろう。この店には貴族の有名な子女も来る。店員に見繕ってもらおうか」
「…………」
「サクヤはどんな服が好みだ? ここもバルフォア商会の系列だから手広くやっていて、何でも揃うぞ?」
「…………」
クロノさんがずっと話続けるので、どうしようと思っていると、ウィンがクロノさんに近付く。
ああ、流石ウィン、わたしの気持ちを汲んでクロノさんを止めてくれるのだろう。
「ウィン様?」
「……(こくり)」
ウィンはクロノさんに大きく頷くと、そのままわたしをクロノさんに差し出すようにして来た。
『ちょっとウィン!?』
『どうした。サクヤ』
『わたし、別にそんなに着たい物とかないんだけど!?』
『いいではないか。この際色々と可愛い服を着てみるべきだろう』
『いや、わたしはそんなにいいから……』
高級な服に抵抗感があるのもそうだが、体は子供でも精神年齢は大人である。
子供用の服を着るのは未だに抵抗感があるのだ。
最初から着ていた服はもう諦めたのだけど……。
『少しくらいいいではないか。可愛さが100から110に上がるのだぞ?』
『いや……大丈夫。てかあがるの確定なんだ』
『すでに十分かわいいからな。服など誤差だが、それでも上がるのなら俺が見たいのだ。奴に任せてみようではないか』
なんでこんなに積極的なんだ……。
でも、ウィンがここまで言うのは珍しい。
ならそれに付き合うのもたまにはいいのか……な?
『分かったけど、笑わないでね?』
『そんなことはしない』
ウィンの言質も取れたことなので、わたしはクロノさんに向きなおる。
「クロノさん。それでは……色々と見せて頂いてもよろしいですか?」
「! ああ! 最高の服を見つけてやろう!」
「……はい」
わたしはヴァイスとルビーをリオンさんにお願いして、色々な服を着替え続けた。
途中から何着着たのか分からなくなり、どれがよかったのか分からなかったほどだ。
ただ地球とは違った服を着れて、結構楽しかった。
でも、わたしは何も買わなかった。
店を出る前に、クロノさんにはとても不思議そうな顔をされてしまった。
「サクヤ、本当によかったのか?」
「はい。わたしはこの服が好きなので」
昼にあれだけいい所でご飯を食べさせてもらったり、気を使ってもらったのに、またしても買ってもらうというのは違うような気がした。
試着だけさせてもらったお店には申し訳ないけれど。
そうして、店を出たところで、クロノさんがわたしにすっと肉球の模様をしたブローチを差し出してくる。
「これは……」
「これがほしかったのだろう? おれとリオンからのプレゼントだ。受け取ってくれ」
「そんな! わたしは別に……」
「入ってからこれを見ていたのは知っている。それに、服を見せている最中も時々見ていただろう?」
「それは……」
見られていたのか……と少し顔が熱くなった。
「おれもサクヤに似合うと思う。受け取ってくれ」
「……はい。ありがとうございます」
「ああ」
わたしはクロノさんからブローチを受け取り、それを付けた。
「可愛いぞ」
「ありがとうございます」
ちょっと子供っぽいかもしれないけれど、大事な従魔達みたいに、肉球の物を持ってみたかったのだ。
『サクヤ。お揃いだな』
『ウィン……』
ウィンは片手を上げて、肉球をチラリと見せてくれる。
『それに、楽しんでくれたようで俺も嬉しいぞ。俺のことを気にしていたようだったからな』
『気付いてたの?』
わたしがウィンを多くの人に受け入れてほしいと思っている。
でも、人の考えを変えられるという物でもない。
だからせめてウィン達が変な目で見られないような場所だけに行こうと思っていたのだけど、気付かれてしまっていたらしい。
『当然だ。俺は他の者にどう思われようと関係ない。だから、サクヤも行きたい所に行くぞ』
『ウィン……ありがとう』
『こちらこそ心配してくれて嬉しく思う。これからもよろしくな』
『うん。これからもよろしく』
ウィンは鼻でツンツンとつついてきて、わたしはそれを受け止める。
それから、わたし達は王都を更に巡る。
物語上特に変わることはありませんが、続きで書いていくと分けるの難しいです……orz
追記、前話108話の投稿を忘れていまして、投稿しました。
楽しみにしてくださっていた方々にご迷惑をおかけして申し訳ありません……。
再追記、実は投稿していたことが発覚しまして……。
ただ、投稿した場所が全然おかしい場所になっていただけでした。
修正をしたので、よろしくお願いいたします。
次の投稿はやはり11日に行うと思います。
*************
わたし達は暖かい気温の王都を歩く。
貴族や商人がいるような裕福な場所だからか、あんまり人はいない。
そのお陰もあって、ウィン達に向けられる好奇の目線は少ない気がする。
安心して進めるのはいい点かもしれない。
わたしはクロノさんにこれからの予定を聞く。
「次はどこに行くんですか?」
「決めていない!」
「兄さん……そんな自信満々に言わなくても……」
「しかし、サクヤが行きたいところに行くべきだろう? だからこれから先は決めていないんだ」
クロノさんがそう言って周囲を見回す。
わたしもつられて視線を向けると、武器屋、服屋、本屋、薬屋等々、色々な店が立ち並んでいた。
クロノさんの視線は、武器屋でビタッと止まっている。
「武器が気になるんですか?」
「いや、そんなことはないぞ? サクヤはどこか気になる店はあるか? 服屋なんてどうだ? サクヤに似合う物があるかもしれない」
「……」
なんだか露骨に話をそらされた気がするけど……。
「でも、確かに服とかアクセサリーは気になっています!」
「なら行こうか」
別に派手につける様な気持ちとかはないけれど、どんなのがあるとかは気にならないこともない。
ということで、わたし達はお店に入っていく。
わたし達が店の中に入ると、そこは異世界の高級服飾店なのだろう。
店先には色々な服がディスプレイされていたけれど、日本にあったオーダーをメインとする店に近いだろうか。
店内で話をしている人も貴族のように豪華なドレスを着ている人ばかりで、高級感あふれるお店だ。
「あの……わたしにはちょっと場違いな感じでは……」
正直今すぐにでも出て行きたい気持ちで一杯になる。
ドレスはどれも高級で、髪留めやブローチ等のアクセサリーですらいくらするのか。
あ、でもあのブローチ可愛いかも。
肉球のマークをしたブローチで、ヴァイスやウィン、ルビーの肉球を思わせる。
「ウビャゥ!」
「キュイ!」
「暴れないで」
ヴァイスとルビーはテンションが上がっているのか、ウィンの上でうずうずしていた。
服やアクセサリーを汚したり、壊してしまったりしたら……と思うと怖い。
だからヴァイスとルビーが暴れて壊さないように抱き抱えておく。
まぁ、毛などはウィンが魔法で服につかないようにしてくれているから問題はないんだけど……。
わたしは誰にともなく呟く。
「うん。やっぱりわたしには場違いな気がします」
すると、クロノさんがわたしの言葉に首を横に振った。
「そんなことはない。サクヤに似合う服ならいくらでもあるからな。採寸してもらうか?」
「え? い、いえ。わたしにはそんな服はいりませんよ」
量販店の服を買っていたわたしには過ぎたものだと思う。
でも、クロノさんは違った事を気にしていた。
「なに? いや……確かにすぐに成長してしまったら着れなくなってしまうか……」
「そういうわけではないんですが……」
クロノさんから怪しい気配を感じる。
「そうか? サクヤは何を着せても似合うだろう。この店には貴族の有名な子女も来る。店員に見繕ってもらおうか」
「…………」
「サクヤはどんな服が好みだ? ここもバルフォア商会の系列だから手広くやっていて、何でも揃うぞ?」
「…………」
クロノさんがずっと話続けるので、どうしようと思っていると、ウィンがクロノさんに近付く。
ああ、流石ウィン、わたしの気持ちを汲んでクロノさんを止めてくれるのだろう。
「ウィン様?」
「……(こくり)」
ウィンはクロノさんに大きく頷くと、そのままわたしをクロノさんに差し出すようにして来た。
『ちょっとウィン!?』
『どうした。サクヤ』
『わたし、別にそんなに着たい物とかないんだけど!?』
『いいではないか。この際色々と可愛い服を着てみるべきだろう』
『いや、わたしはそんなにいいから……』
高級な服に抵抗感があるのもそうだが、体は子供でも精神年齢は大人である。
子供用の服を着るのは未だに抵抗感があるのだ。
最初から着ていた服はもう諦めたのだけど……。
『少しくらいいいではないか。可愛さが100から110に上がるのだぞ?』
『いや……大丈夫。てかあがるの確定なんだ』
『すでに十分かわいいからな。服など誤差だが、それでも上がるのなら俺が見たいのだ。奴に任せてみようではないか』
なんでこんなに積極的なんだ……。
でも、ウィンがここまで言うのは珍しい。
ならそれに付き合うのもたまにはいいのか……な?
『分かったけど、笑わないでね?』
『そんなことはしない』
ウィンの言質も取れたことなので、わたしはクロノさんに向きなおる。
「クロノさん。それでは……色々と見せて頂いてもよろしいですか?」
「! ああ! 最高の服を見つけてやろう!」
「……はい」
わたしはヴァイスとルビーをリオンさんにお願いして、色々な服を着替え続けた。
途中から何着着たのか分からなくなり、どれがよかったのか分からなかったほどだ。
ただ地球とは違った服を着れて、結構楽しかった。
でも、わたしは何も買わなかった。
店を出る前に、クロノさんにはとても不思議そうな顔をされてしまった。
「サクヤ、本当によかったのか?」
「はい。わたしはこの服が好きなので」
昼にあれだけいい所でご飯を食べさせてもらったり、気を使ってもらったのに、またしても買ってもらうというのは違うような気がした。
試着だけさせてもらったお店には申し訳ないけれど。
そうして、店を出たところで、クロノさんがわたしにすっと肉球の模様をしたブローチを差し出してくる。
「これは……」
「これがほしかったのだろう? おれとリオンからのプレゼントだ。受け取ってくれ」
「そんな! わたしは別に……」
「入ってからこれを見ていたのは知っている。それに、服を見せている最中も時々見ていただろう?」
「それは……」
見られていたのか……と少し顔が熱くなった。
「おれもサクヤに似合うと思う。受け取ってくれ」
「……はい。ありがとうございます」
「ああ」
わたしはクロノさんからブローチを受け取り、それを付けた。
「可愛いぞ」
「ありがとうございます」
ちょっと子供っぽいかもしれないけれど、大事な従魔達みたいに、肉球の物を持ってみたかったのだ。
『サクヤ。お揃いだな』
『ウィン……』
ウィンは片手を上げて、肉球をチラリと見せてくれる。
『それに、楽しんでくれたようで俺も嬉しいぞ。俺のことを気にしていたようだったからな』
『気付いてたの?』
わたしがウィンを多くの人に受け入れてほしいと思っている。
でも、人の考えを変えられるという物でもない。
だからせめてウィン達が変な目で見られないような場所だけに行こうと思っていたのだけど、気付かれてしまっていたらしい。
『当然だ。俺は他の者にどう思われようと関係ない。だから、サクヤも行きたい所に行くぞ』
『ウィン……ありがとう』
『こちらこそ心配してくれて嬉しく思う。これからもよろしくな』
『うん。これからもよろしく』
ウィンは鼻でツンツンとつついてきて、わたしはそれを受け止める。
それから、わたし達は王都を更に巡る。
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