「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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3章

77話 どこへ行こうというのかね?

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「はああああああああああああああああ!!!」

 何かの薬品を飲み干したロードが吠える。
 彼の周囲には真っ赤な何かが浮かんでいた。
 しかも、いつの間にか新しい腕が生えている。

「あれは……? いや、見ているだけではいけないか。【水流切断アクアセーバー】」

 僕はスキルを使って攻撃する。
 相手が強くなるのを待っている様な律儀な人間ではないからだ。

「ふっ」

 ロードは軽く笑うと、スッと一歩だけ横に動く。

 僕のスキルは奴のほほをかすめるようにして通り抜けていった。

「僕の動きを読んだ……?」

 それほどに彼は最小限の動きだった。
 不思議に思い注視すると、彼の左目が緑色に輝いている。

「あれは……?」
「来ないのかね? こちらから行くぞ?」

 ダン!

 彼は水が周囲を満たしていることも関係ないとばかりに地面を強く蹴って僕に向かってきた。

 その速度は先ほどよりも少し遅い。

「……? 【水流切断アクアセーバー】」

 それでも向かって来ることに変わりはない。
 迎え撃つだけだ。
 多角的に攻撃をして、奴の注意を逸らす。
 そして、着地点に【闇の牢獄ダークプリズン】を置いてしまえばこちらの勝利は確定する。

 しかし、その僕の予想は完全に外れる事となった。

「【糸の円舞曲スレッド・ワルツ】」
「嘘……」

 彼はあの忌々しいローバーのスキルを使って来たのだ。
 糸を体に絡め、自由自在に移動をして僕のスキルをかわして迫ってくる。

「く! 【闇の牢獄ダークプリズン】」

 僕の前にかなり拡がる様にしてスキルで防波堤を作る。
 でも、これも少しの時間稼ぎが出来る程度だろう。
 今のうちに左横から移動して時間を稼がないと。

 奴はきっと僕のスキルを上から超えてくる。
 そう予想していたのだけれど。

「どこに行こうというのかね?」
「ロード……」

 僕の目の前には豪華な服を着て、僕を見下した目で見てくるロードがいた。

 目の前に立ち、ゆっくりと剣に手をかける。

「それでは、さらばだ」
「【闇の牢獄ダークプリズン!」

 目の前にスキルを張って何とか危機一髪彼の剣を回避する。

「逃がさんよ」
「くっ!」

 さっきから僕の動きを全て読まれているようにすら感じる。

 そう思っていると、彼が口を開きながら追いかけて来た。

「気付いているのだろう? 俺は今未来を見通す事が出来る。だから君の動きも分かる。次は右に行くのだろう?」
「なんで!?」

 僕の動きが完全に読まれている。

「そこだな」

 シュパッ!

 奴の剣が僕の触手を切り裂く。
 右手の触手2本が切り飛ばされていった。

 僕は逃げることは無駄だと考えて後ろを振り向く。

 彼はニコリと笑いながら僕に話しかける。
 目は緑色ではなくなっていた。

「それは丁度いい。俺と戦ってさっさと死んでくれ。あの女戦士も他の奴らでは荷が重いからな。俺が消してやらねばならぬ」

 彼はそう言いながら両手を横に拡げる。

「【糸の円舞曲スレッド・ワルツ】!」

 彼の両手からこれでもかと言うほどの糸が放出され、僕に向かって来る。

 このスキルは!

「【触手強化テンタクルフェイズ】」

 僕は強化した左2本の触手で迫りくる糸の波を千切り飛ばした。

「中々やるじゃないか。でも、俺はこのスキルの使い方も知っている。【糸は束なり力となるスレッド・ストレングス】!」
「その技まで!?」

 驚く僕を余所に、彼は自身の体の中に糸を何千と入れ、豪華だった服は穴だらけになり、今にも弾けそうな見た目になっていた。
 そして、彼は……更にスキルを発動する。

「【糸装甲スレッドーアーマー】!」

 体に入った糸とは別の糸が新たに現れ、彼の体に巻きついて行く。

 でも、ただ見守っていた訳ではない。

「【水流切断アクアセーバー】!」

 シュパッ!

 奴を切り刻まんと放ったスキルは、虚しくも彼の前で消え去ってしまう。

「【破壊の衝撃よデストロイ・ショック】。無駄だよ。俺のこの姿の前では誰も立つことは叶わん」

 スキルが他とも重複で使う事も出来る。
 そんな奴には一体どうしたらいいんだ。
 絶望するしかない。

 彼は僕の表情が嬉しいのか、笑顔で話しかけてくる。

「そうだ! そのまま絶望し、さっさと死んでゆけ! 俺に勝てる者など……そんな者など誰もおらんのだ!」

 剣を振りかぶり、僕に向かって振り下ろす。

「【残すは瓦礫のみロード・デストロイ】!」

 その速度は僕が今までみたこともないほどの速度。
 ローバーは元々絡めてで戦って来る相手だったけれど、このロードは違う。

 元々のパワーもスピードも桁違いに高いのだ。
 そんな彼が糸で強化したら。
 ローバーの比ではないくらいの速度に達する。

「ッ!!!」

 僕はこのままでは死ぬ。
 そう錯覚した時に、体の主導権が奪われた。

 体が一瞬にして小さくなり、いきなりスキルを発動した。

「【次元の門ディメンジョンゲート】」

 小さくなった体でそのままゲートを通り、上空100mの所に放り出される。
 それと同時にスキルは解除され、体の主導権も戻ってきた。

「今のは……」
『油断するな。我の力を使っているのだ。あの程度の相手に負ける等決して許さぬ』
「クラーケン?」
『なんだ』
「その……ありがとう」
『……よい。それよりも、あ奴は人の中では強いが、それでも今は力に頼った使い方しか出来ておらぬ。友人の助言を思い出し、注意深く観察すれば容易に崩せよう。ではな』
「え? もう行っちゃうの?」
『……』

 クラーケンはそれだけ言うと何も言わなくなってしまった。
 でも、これは僕がやらなければならないこと。

 ただ、危険な時には助けてくれて感謝してもしたりない。
 助言ももらったし、僕が出来ることをやって勝つ。

「【次元の門ディメンジョンゲート】」

 覚悟を決めて奴の背後から少しの所に戻った。

「はぁはぁ……これで……消し飛んだか……。はぁはぁ、俺に歯向かう等……愚かな行為よ」

 後ろから見るロードの姿はかなりつかれた様子で、肩で息をしている。
 
 もしかして、奴の今の状態はかなり辛いのではないだろうか?
 出なければ、ゆっくりと後ろから刻んで行くだけで済んだかもしれないのに、正面から戦う事を喜んでいる様にも感じた。
 少し距離を置いただけで相手の状態が手に取るように感じられる。

 その段階になって、少し前に、アルセラに言われた事を唐突に思いだした。

『剣士は基本的には自分の得意な型がある。そして、それにハメて攻撃をし続けていれば、相手はずっとその中に居続けて後はその状況を維持し続けるだけでいい』
『対処法は相手が危機を覚えるような行動をするか、思い切って距離をとってみる』

 アルセラはこの様に言っていたことを思いだす。
 少し前にロードの本を読んだと言うことを話していたのに、それを簡単に忘れてしまっているなんて……。
 でも、これできっと僕も戦える。

「さぁ、今度はこっちの反撃と行こうか」
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